SDGsに関心のあるZ世代の集う居場所を。 きれいなものだけで回るまちをつくる。

連載 | 「自分らしく生きる」を選ぶローカルプレイヤーの働き方とは | 51 SDGsに関心のあるZ世代の集う居場所を。 きれいなものだけで回るまちをつくる。

2022.10.11

社会課題やSDGsに関心があるZ世代が集うプラットフォームを運営する齋藤さん。活動のきっかけは、ビーチクリーンに参加する中で、Z世代の参加者だけが極端に少ないことに危機感を抱いたこと。齋藤さんが目指す社会とは。お話を伺いました。

齋藤 克希
さいとう かつき|一般社団法人サスティナブル推進協会NAMIMATI代表理事
日本外国語専門学校卒業後、高級アパレルブランドに就職。社会課題への関心から退職し、2020年に任意団体NAMIMATIを立ち上げ。2022年6月に、一般社団法人サスティナブル推進協会NAMIMATIへと名称を変え、代表理事に就任。

仕事は「つまらない」もの

神奈川県川崎市に生まれ、幼稚園に入る前に湘南に引っ越しました。外で遊んでばかりの子どもで、特に海で遊ぶのは大好きでしたね。父と海沿いをサイクリングしたり、サーフィンを教えてもらったり、一緒に釣りをしたりしました。

身体を動かすことが好きで、小学校では野球、中学校ではバスケットボールに打ち込みました。野球では全国準優勝を経験しましたが、勝つことが嬉しかったわけではありませんでした。練習の中で生まれるチームワークや、一緒に成し遂げることに面白みを感じていたんです。負けて悔しいという感情もそこまでなく、身体を動かすことやチームプレーが楽しかったんです。

高校では、もっと友達と遊びたいと思い、アルバイトを始めました。飲食店や薬局、結婚式、イベントなどたくさんのアルバイトを経験しましたね。

卒業後は、外国語の専門学校に進みました。海外ドラマや洋画にハマっていたんです。さまざまな人種、価値観の人たちが混じり合い、人種のサラダボウルと言われるニューヨークに憧れ、とりあえず英語を勉強しようと外国語専門学校に進学しました。

専門学校には電車で片道2時間かけて通いました。朝の電車の中は、どこかネガティブな空気が流れていて。周りのサラリーマンから「仕事に行きたくない」というオーラを感じました。自分も卒業したらこんな大人になるんだろうな、でも働かなければいけないんだなと未来に対して諦めを抱きました。就職活動では高級アパレルブランドの内定をもらいましたが、仕事のイメージは変わらず、働きたくないなと感じていましたね。

笑顔でいきいきと働く姿に感銘

卒業間際、はじめての海外旅行でニューヨークに行きました。あるレストランに入ると、そこはブロードウェイの舞台を目指している俳優たちが働くレストランでした。料理を提供するときにウェイターさんたちがいきなり歌い出したり踊り出したりするような場所でした。

そこで働いている人たちは、みんな笑顔でキラキラ輝いていたんです。まだブロードウェイの夢をかなえたわけでもないのに、志を持って働いていて。仕事はネガティブなものだと思い込んでいた僕は、こんな素敵な働き方があるのだと心を打たれました。

そこで改めて周りを見てみると、僕のような黄色人種もいれば、黒人もいて、ゲイのカップルもいて、その人たちすべてが笑顔だったんです。その様子を見て、衝撃を受けました。こんな素敵な笑顔溢れる空間を日本でもつくりたいと感じました。

社会活動にZ世代だけがいない

その後、就職してから、自分の理想の空間をつくるためにどうすればいいか調べるようになりました。すると、ダイバーシティやSDGsというキーワードに辿り着きました。今、社会には環境問題をはじめ、あらゆる人の抱えるさまざまな課題があって、それに対していろんな取り組みが行われていることを知ったんです。SDGsの「誰ひとり取り残さない」という原則にも共感しました。社会課題解決に関わる仕事をすることで、笑顔溢れる社会に貢献したいと思うようになりました。

ただ、単に社会課題といっても何をすれば良いか分かりません。とりあえず子どもの頃に参加していたビーチクリーンなどのボランティアに参加してみることにしました。

そこで気づいたのは、僕たちZ世代が抜けていること。おじいちゃんおばあちゃんや子連れのパパママはいるけれど、Z世代の若者は、どのボランティアに参加しても僕一人でした。

これは大きな課題だと感じました。これから社会の大きな歯車を担っていく世代が社会課題に参加していないのです。ただ、関心がゼロというわけでもありません。学校のカリキュラムにも含まれているし、僕のような関心のある人もいるかもと思ったからです。むしろ、高齢者世代や子連ればかりのボランティアに参加しづらさを抱えているのではないかと感じました。

そこで、SNSでゴミ拾いの活動を発信し始めました。ゴミ拾いは、どこかダサいイメージがあります。そこで、コーヒーの麻袋やビールのモルト袋など、スタイリッシュでカッコいい袋に変更しました。すると反響も少しずつ得られるようになりました。

そうやって活動をしていくうちに、社会課題の解決を仕事にしたい思いは強まっていきました。勤めているアパレルブランドが、サステナビリティとは真逆の道のように感じたことも悩みの一つでした。数年後には、結婚して子どもが生まれて、自由に動けないかもしれない。それならば、今こそチャレンジすべきではと思い、アパレルブランドを退職。社会活動に専念することにしました。

とはいえ、なんのビジョンもありません。とりあえず、私含め4人の地元の友人そしてSNSでつながった仲間たちとビーチクリーンイベントを開催しようと、軽い気持ちで仲間を募りました。すると、初回にもかかわらず、60人も集まったんです。しかもイベントに足を運んでくれた人の中には、「運営側として一緒に活動したいです」と表明してくれる人もいて。その声をもとに、任意団体NAMIMATI(なみまち)を立ち上げました。

SNSを通じて、活動が広がる

NAMIMATIは、特定の社会問題にフォーカスするのではなく、社会課題に関心があるZ世代が集うプラットフォームとして運営をスタートしました。社会課題に関心がある若者が、さまざまな課題を可視化できて、かつ貢献できる場所をつくりたいと思ったからです。

手段として用いるのは、SNS。今までと同じようなボランティアの形式では若い世代は集まりません。コーヒーの麻袋やビールのモルト袋を使ったビーチクリーンをはじめ、「SNSで写真をあげたい」と思えるようなイベントを開催しました。

SNSのつながりはどんどん広がり、湘南以外にも、関東、関西、東海、シアトルに支部が発足。社会課題に関心のあるZ世代の居場所がどんどん広がっていきました。

そのほかに企業や行政、NPO法人とのつながりもできました。自分から行政の窓口を訪問したり、企業の問い合わせに連絡することはしませんでした。自分たちがその企業や行政を利用するような関係性ではなく、対等なパートナーとしての関係性を築きたかったからです。

とはいえ、何の行動もしなかったわけではありません。有識者が集まる場所に自ら足を運び、出会った方々に僕たちの思いを伝えました。そこで心から共感してくださり、僕たちと何かやってみたいと思ってくれた人たちと、パートナーとして協業の道を探りました。

僕自身も、どんなに大きな会社だろうと、志が違うと思えば、断りましたね。そうやって関係性を構築する中で、海洋プラスチックを使ったアクセサリーづくりや、サステナビリティに関する社員研修、視覚障害者の子どもの発信事業など、さまざまなプロジェクトが生まれていきました。

一方で、つながりが増えていく中で、ある課題に気づきました。学生団体や学生主導のNPO法人の多くが学生期間で活動を終了してしまう予定だったのです。就職とともに時間が取れなくなる、専業として活動するには資金が足りない、後継者が見つからないなどの理由がありました。

せっかく良い活動をしているのにもかかわらず、ここで終わってしまうのはもったいない。NAMIMATIはZ世代の個人が活躍できる場としてさまざまな団体と関わりながら運営してきましたが、今後は個人に参加の場を提供するだけでなく、Z世代の団体が輝き、存続し続けるための場所づくりにも貢献するべきだと考えるようになりました。

そこで、同じ悩みを持つ団体が一堂に会して、自分たちの活動を紹介するイベントを開催。当日は30以上の団体が集まり、150名以上が集まりました。

とはいえ、発表する場を設けるだけでは未来につながりません。これまででできたつながりから、企業、行政、NPOの3つのセクターの見識者を集め、これからの未来のためのアドバイスをもらう機会を設けました。お互いが刺激を与え合えるイベントが開催できたと思います。

世代やセクターをつなぐ歯車に

2022年8月、NAMIMATIは任意団体から一般社団法人サステナブル推進協会NAMIMATIに進化し、僕は代業理事を務めています。

活動のキーとなるのは、今も変わらずSNS。Z世代にとって、レストランやカフェを調べるのもSNSが基盤となっており、慈善活動においてもSNSでの発信がきっかけになりうると考えています。その予想は的中し、SNSで発信したくなるしくみをつくることで、どんどんZ世代の輪が広がり、団体設立から2年あまりで約200名のメンバーが集まるプラットフォームとなりました。

大事にしているのは、一人一人が動ける場所をつくること。僕はそんなに頭が良いタイプではないので、とにかく動いて、感じて、そこで得た体験を伝えてきました。でもそれはすごく大事なことだと思うんです。教科書や本を通して脳みそで得た知識は、相手の脳みそしか揺らすことはできません。でも自分が体験して悔しかったことや面白かったことなど心で感じたことは、相手の心を動かすことができると思います。そのため、単なる情報発信メディアをつくるのではなく、あくまで場所やイベントづくりを大事に、Z世代の個人が輝くプラットフォームとして活動を広げていきました。

一方で、Z世代だけをターゲットすることに限界を感じるようになりました。Z世代は大きなムーブメントを起こせるけれども、コアな決定権や権力、何より資金を持っているのは、もっと上の世代だからです。SDGsの目標を達成するには、世代間の協力はもちろん、企業・行政・NPO法人の連携が不可欠であり、NAMIMATIはそれらをつなぐ歯車、つまり第4のセクターとなるべきではないかと考えるようになりました。

そこで今後は、Z世代の個人だけでなく、様々な団体が輝き、存続し続けるためのプラットフォームとして活躍していきたいと考えています。イベントも企画中で、そのときには1000人規模の参加者を集め、企業・行政・NPOを巻き込んで新しいムーブメントを起こしたいです。

ただ、僕たち自身にも課題があります。僕は今、マリンスポーツの一種であるSUPの講師をして生活費を稼ぎつつ、NAMIMATIの代表理事を務めています。運営にはほかに2人コミットしており、正直なところ、資金繰りは厳しい状態です。このままでは、多くの学生主導の団体が終わってしまったように、NAMIMATIとして大きなムーブメントを起こせないことはおろか、活動自体を続けられず、夢半ばに終わってしまう可能性も否めません。プラットフォームとして機能し続けるためにも、ビジネスをつくり、持続可能な運営をすることにもフォーカスしていきたいですね。

ビジネスの構想としては、小さなまちづくりを考えています。人間が第一にお金と時間を使うのは衣食住であり、この部分をサステナビリティな形に変換することができれば、非常に大きな影響力があります。ここをビジネス化することで、きれいなお金だけで経済が回るしくみができると思うんです。誰も傷つけない、何も汚さない、そんなまちをつくっていきたいですね。

この連載記事は、自分らしく生きたい人へ向けた人生経験のシェアリングサービス「another life.」からのコンテンツ提供でお届けしています。※このインタビューはanother life.にて、2022年8月11日に公開されたものです。

インタビュー・ライティング:林 春花