「えっ、そこまでするの?」と驚くかもしれません。長野県・蓼科の静かな渓谷に佇む、創業100年目前の老舗宿『蓼科 親湯温泉』。これまでに一度もクマの被害はないにもかかわらず、露天風呂に電気柵を張り巡らせ、玄関の自動ドアを手動に改造するという、異例の決断を下しました。
「被害がないからこそ備える」老舗宿の異例の決断
2025年、今年の漢字にも選ばれるほど世間を騒がせた「熊」。 『蓼科 親湯温泉』では、これまでクマの目撃情報すらありませんでしたが、連日の報道に不安を感じる宿泊客の声を重く受け止めました。

「ニホンカモシカを見てクマと勘違いし、恐怖を感じてしまうお客様もいらっしゃいます」 そう語るのは、代表取締役の柳澤幸輝氏。 豊かな自然を誇る宿だからこそ、お客様に「根拠のない安心」ではなく「目に見える安全」を提供するため、露天風呂エリア全体を囲む電気柵の設置を完了させました。

自動ドアが危険!?ハイテクを捨てて「アナログ」へ回帰
驚くべき対策は電気柵だけではありません。 同宿はエントランスの「自動ドア」を、あえて「手動」に切り替える工事を行いました。

スーパーなどの自動ドアをクマが通り抜けて侵入したというニュースを受け、万が一の事態を想定。「本来便利な機能が危険を呼ぶ可能性がある」と判断し、安全面を最優先して利便性をあえて捨てたのです。テクノロジー全盛の今、究極のアナログ回帰ともいえるこの施策は、ゲストと社員を死守する強い意志の表れです。
100周年に向けて。「安全」への執念はコロナ禍・トコジラミ対策から
実はこの宿、これまでも“先手の安全対策”で業界の注目を集めてきました。 2020年には独自の「衛生消毒プログラム」をいち早く導入し、最近では東日本の宿泊施設で初めてトコジラミ予防装置「Valpas」を全店に配備。
「出没してからでは遅い。起きていないからこそ、未然に防ぐことがおもてなしの基本」。2026年に100周年を迎える名門宿が、伝統を守りながらも進化し続ける理由。それは、蓼科の大自然の中で「心からリラックスできる時間」を何よりも大切にしているからに他なりません。


















