目次
これはぼくが20代のときのこと。
東京から深夜、S県の山あいにあるJ池に向かった。明け方にこのJ池について、そのいちばんの広場になるアスファルトの駐車場にクルマを停めた。
長時間の運転をしていた疲れもあり、J池の風景を眺めたり、撮影をひとしきりした後に駐車場に戻り、午後、クルマからマットを出して仮眠をしていた。
長時間の運転をしていた疲れもあり、J池の風景を眺めたり、撮影をひとしきりした後に駐車場に戻り、午後、クルマからマットを出して仮眠をしていた。
しばらくの健やかな睡眠のあと、異変に気づいた。
夏のヒグラシの鳴き声のもと、ぼくの体に金縛りが走ったのだ。動かない体を意識しながら、眼は開いている。
その硬直した時間、駐車場のはじにある廃バスから男女が現れ、音もなく歩いて、ぼくの頭のうしろからぼくをながめていた。
女の人は赤いワンピース。男の人はベージュのスーツ。
ただ、ふたりとも首がない。それなのに、なんとなく悲しそうにぼくのほうを見ているのだ。
しばらくの後、またふたりは廃バスに戻っていった。
夏の真昼の、不思議な体験だった。
夏のヒグラシの鳴き声のもと、ぼくの体に金縛りが走ったのだ。動かない体を意識しながら、眼は開いている。
その硬直した時間、駐車場のはじにある廃バスから男女が現れ、音もなく歩いて、ぼくの頭のうしろからぼくをながめていた。
女の人は赤いワンピース。男の人はベージュのスーツ。
ただ、ふたりとも首がない。それなのに、なんとなく悲しそうにぼくのほうを見ているのだ。
しばらくの後、またふたりは廃バスに戻っていった。
夏の真昼の、不思議な体験だった。