目次
これはぼくが大学生のときだ。
ある夏に、霊峰と名高い中日本の山を山岳系サークルのみんなと縦走した。
主峰に登頂し、下山をする霧のかかった稜線で起きたことだ。
ぼくは突然、疲れてもいないのに足を踏み外して、笹の藪の中を2メートルほど転落した。そこには「〇〇さんと〇〇さん、ここに眠る」という20年近く前に遭難した若い男女のカップルを弔う写真の古いタイルがあった。ふたりとも、素敵な笑顔だった。
主峰に登頂し、下山をする霧のかかった稜線で起きたことだ。
ぼくは突然、疲れてもいないのに足を踏み外して、笹の藪の中を2メートルほど転落した。そこには「〇〇さんと〇〇さん、ここに眠る」という20年近く前に遭難した若い男女のカップルを弔う写真の古いタイルがあった。ふたりとも、素敵な笑顔だった。
下流のキャンプ場にテントを張り、夕方に釣りに出かけたところ、ヒグラシの音とともに、誰か人間ふたりが背後からほくを見つめている気配が大きくなり、震えて動けなくなった。
ふたりの笑顔のタイルを思い出しながら、背中からの視線の雰囲気を感じていた。
ふたりの笑顔のタイルを思い出しながら、背中からの視線の雰囲気を感じていた。