1992年、大学4年生の春。残るはゼミの履修のみだった僕は、2つの雑誌の編集部のアルバイト募集の告知を見つけ、履歴書を書いてポストに入れて送った。
ひとつは山岳関連の出版社が発行するアウトドアの雑誌、もうひとつは小学生や中学生などに特化した学習系の出版社が発行する子どもたちに向けた釣り雑誌だった。
部屋の電話が鳴ったのは、その2日後。受話器を取ると山岳関連のアウトドア雑誌の編集長がこう話した。
「君、おもしろいね。よかったら一度編集部に遊びにおいでよ」
ぼくが送った履歴書は、あふれんばかりのスウェーデンの釣具メーカーのアブ社のリールへの愛の話と、デビッド・ボウイがいかにイカしているかを小さな文字でみっちりと書き綴ったものだった。
(もしかしたら続く)