沖縄県の学生有志で結成されたボランティア団体「学生ボランティアゆがふ」。6月初旬、県内のショッピングモール、イオンモール沖縄ライカムで新型コロナウイルスで困窮する世帯を支援するために食料の寄付を募るフードドライブを行なった。「MUGムグフードプロジェクト」と題したこのフードドライブによって結果的に2日間で1500個もの食料の寄付が集まった。今回イベントを終えた学生たちに話を聞いた。
きっかけは自分たちにも何か出来ないかという想い
プロジェクト名でもある「MUG(ムグ)」とは、“M=まーさん、U=うちなー、G=ごはん”の頭文字を取ってつけられた。フードドライブのイベントは今回で2回目。所属する学生メンバーは沖縄県内の球陽、読谷、那覇国際、嘉手納などの高校生らで構成されており、2日間で約50名の学生ボランティアが集まった。
企画に携わったメンバーの平川栄玄さんと崎浜空音さんは、海外への留学経験などから「沖縄へ戻り、コロナ禍での様々な現状を目の当たりにして、自分たちに何が出来るのかを考えました。自分たちが行動しないと何も変わらないという気持ちがずっと心にあって。このプロジェクトが動き出してからは、社会福祉協議会やイオンモールさんなど様々な方々の協力もあって実現に至りました。」
今回集まった食料は、社会福祉協議会を介して企業や個人から寄付された食料を困窮世帯などへ無償提供するNPO法人フードバンクセカンドハーベスト沖縄へ預けられ、必要としている世帯へ届けられる。
学生に本音は?
学生インタビュー 平川栄玄さん(18)、崎浜空音さん(17)
ソトコト(以下:ソ)
「学生ボランティアゆがふ」の発足のきっかけや活動内容について教えてください。
平川・崎浜(以下:ゆがふ)
私たちの主要メンバーは元々、沖縄県の留学事業で人材育成派遣というものがあり、そこのプログラムに参加していました。新型コロナウイルスの影響で早期帰国を余儀なくされてしまったため沖縄へ戻ってきた際、何か出来ることはないかと探している時に、友人が那覇でフードドライブを企画していると言う話を聞き、私たちは中部地方で開催できないかと考え有志を募りました。その際に、「ゆがふ」という団体ができ、元々他にも活動をしたいと思っていた仲間たちと一緒に『学生ボランティア』ということで始めました。
『ゆがふ』とは、
“ゆ”いまーるの風を
“が”くせいの手で
“ふ”かせよう
をスローガンに、また、うちなーぐちで「幸せを繁栄させる」という意味。
沖縄で全ての人がゆいまーるで、助け合いたいという意味を込めて付けました。
そして今回ゆがふとしては初めてとなる県内の大型ショッピングモール、イオンモール沖縄ライカムさんでフードドライブを行い、またメンバーが通う各学校でも同じようにフードドライブと募金を行いました。まだ始めたばかりでこれから様々なボランティアが出来たらと思っております。
ソ:今回のフードドライブ企画のきっかけや、実際にやってみて感じた事を教えてください。
ゆがふ:日頃からボランティア情報にはアンテナを張っていて、人助けや人のためになるような活動を通して現状を知る事、学べる事に価値を感じていました。そんな時に今回のコロナウイルスが発生。その影響で収入が無くなり、地元沖縄の人たちが食糧難に陥っている事をメディアを通して知りました。以前から貧困率が全国でも高いことで知られていましたが、今回の感染症拡大によってその問題がより浮き彫りになり、更に支援が必要だと考えました。そこで何か出来ることはないかと考えていた時に友人のSNSで「MUGムグフードプロジェクト」を開催するためのボランティアを募っている事を知り、プロジェクトに参加しました。その時にサポートとして参加していた方の紹介でイオンモール沖縄ライカムと北中城村社会福祉協議会へ繋いでもらって開催を実現する事が出来ました。
結果的に1500食というたくさんの寄付を頂きましたが、それだけでなく実際に食料を必要としている方から直接「食品を受け取りたい」と問い合わせがあったので正直ビックリしました。食糧難に陥っている人のために開催したプロジェクトも、実際に必要としている人を目の前にすると、どうやって食品を配布するかまでは頭になかったために呆然とする事しかできませんでした。この事により本当に支援を必要としている方に「いつ、どこで、どんな支援が受けられるか」という情報が行き渡っていないという課題も見えたので、今後は支援を必要としている方への情報発信に繋げたいと考えています。
自ら出来ることを探し、行動すること
ソ:「食品ロス」の問題を身近に感じたことはありますか。また、食品ロスを減らすために今後どういった事が必要だと考えますか。
ゆがふ:小学生の時に学校の給食で毎日必ず残飯が出ることを知って、当時は「残飯」という形で食品ロスを認識したと思います。今は
目に見える形で認識することはありませんが、友達のバイト先やコンビニ、スーパーなどで売れ残りや廃棄される食品について聞くことが多くあります。本来食べることが出来たはずの食品を集め、素早く配布する構造があれば今までのお菓子や缶詰などに合わせて、生鮮食品などの廃棄も確実に減ると考えます。しかし、これは沖縄県だけでなく、全国、全世界の問題です。制度や仕組みを作る事も食品ロスを無くすことに繋がりますが、その前に一人ひとりが購入した食品を無駄なく使い切る意識を持つ事が何よりもこの問題を解決する事につながると考えています。
ソ:今後の活動について、どんなことに挑戦したいですか。
ゆがふ:今後は様々な場所でボランティアの輪を広げていき、学生同士の繋がりも深めていきたいです。今回の企画も様々な学校や年代の方が集まり親交を深める事が出来たので、ボランティア以外のたくさんのことも学ぶ事が出来ました。またメンバーそれぞれが「ゆがふ」の枠を超えて、自分から出来ることを見つけて行動していく『主体性』を大切に、他のボランティア団体との交流を深め、協力しながら私たちにできることを見つけていきたいです。一人ひとりが周りに目を向け、自分が出来ることを考えて行動していくことで真の『ゆいまーる』へと繋がり、私たちの団体名でもある『ゆがふ』=平和で素敵な沖縄になると思います。たとえ誰も見ていなくても、一人ひとりが行動し、そしてそれを周りに声掛けながら『小さなことの積み重ね』を大切にしていきたいと思います。
プロフィール
学生ボランティア団体ゆがふ
沖縄県内の学生有志で集まったボランティア団体。現在は県内各施設でフードドライブのボランティアを中心に活動。2020年6月に「MUGムグフードプロジェクト」を立ち上げ、県内ショッピングモールでフードドライブを行う。中・高・大学生の仲間を募集中!