ソーシャルでエシカルな関心をもつ人を惹きつける、街の中に広がる学びの場「ソーシャル系大学」。今回は、東京都国分寺市で始まった、まちをフィールドに学びと活動をつなげる連続講座『こくぶんじカレッジ』を取り上げる。新型コロナウイルスの流行のなかで進められた2020年度の協働事業。感染症対策をとりながらのワークショップも参考になる、プロジェクト案の発表会「こくぶんじ・スパイス」の様子を報告したい。
新しい取り組みがあって初めて、多様なコミュニケーションが可能になる。
『こくぶんじカレッジ』、通称「こくカレ」は、「まちがじぶんごとになる」をテーマに、国分寺のまちを楽しむ活動を始めたい人、地域とつながる事業やお店の新しい形を考えたい人、まちをもっと元気にしたい人が集まる、学びと活動の連続講座である。2020年度は9月から翌年2月まで合計7回の講義やワークが開催された。
「こくカレ」は、まちの人と出会いたいと考えていた『国分寺市まちづくり部まちづくり推進課』と、コミュニティビジネスを支援するNPO法人『マイスタイル』による協働事業として2019年に始まった。通勤に便利なJR中央線沿いの駅を中心に市街地が広がる国分寺市は、現在もベッドタウンとして栄え、また、市民活動も活発な地域として知られている。
まちづくり推進課も、これまで都市計画などの説明会や懇談会を開いてきたが、行政と市民が一緒に始めるアイデアやアクションにはつながらなかった。そこで、まちづくりのコミュニケーションを発展させる方法として、「こくカレ」が企画された。有料講座にもかかわらず、2019年度には38名が、2020年度は46名の受講生が集まったという。
2021年1月の発表会「こくぶんじ・スパイス」では、11のプロジェクトが発表された。土や草から絵の具をつくり、みんなで絵を描く親子のアートプログラム、国分寺のディープスポットを訪れるサークル活動、音楽の力でまちを元気にするフェスの計画、古民家や空き家を活用した市民大学の構想、民家の車庫を利用して地元野菜を販売する出張マルシェなど、アイデアに満ちたプログラムが提案された。コロナ禍だからこそ意味をもつ企画も多く、「こくカレ」の校長・中村秀雄さんも「地元のため、他者のために、ギフトになっているものばかり」と高く評価していた。
発表会の方法も印象的だった。この日は各チームの代表者のみが会場に集まり、ほかのメンバーはZoomから、また一般市民はYouTubeから参加した。すでにまちのなかで活動を始めている頼もしい2019年度修了の1期生もZoomでつながり、プロジェクトの発表ごとに的確で愛のあるコメントを寄せていた。
配信を担当するスタッフの努力のおかげでトラブルなく会場とZoomからの参加者、YouTubeの視聴者が同じ時間を共有した。さらに、翌週開催された展示会では、発表会の録画が常時放映されるなど、一度で終わらない仕組みとなっていた。
テラスのある広い会場と透明アクリル板を活用した対面でのワーク、そしてオンラインでの飲み会。このようにすれば、限られた回数であっても、発表会もワークも親睦会も行えるという見本になっていた。「こくカレ」の実践は、国分寺市のような地域性をもつ場所であっても、新しい取り組みがあって初めて、まちづくりのアクターを増やす多様なコミュニケーションが可能になるということを教えてくれている。
こくぶんじカレッジ
東京都国分寺市まちづくり部まちづくり推進課/NPO法人『マイスタイル』
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