麻生 翼さんが選ぶ、SDGsと地球環境に触れる本5冊
当時のアメリカは鉄道などの登場で生活の質は向上しましたが、一方で、生活のためにはお金が必要になり、人々は働き始め、お金を稼ぐための時間が増えていきます。しかし、それは本当に豊かな暮らしなのか? 確かに昔は、快適さや利便性の点では生活の質が低かったかもしれませんが、それでも人々は自然とともに生き、自然の恵みを享受する生き方をしてきました。それを捨ててまで、都市型の生き方に迎合する必要があるのか? この疑問に応えるべく、ソローは森という大自然の中で簡素に暮らし、そこから得たものを私たちに伝えてくれています。
『森にかよう道』は私自身、若い頃に読んで大変感銘を受けた一冊で、大学教授で哲学者の内山節さんが、「森と人がつながりながら生きていくことの意義」について説いています。山村で一年の大半を過ごす内山さんが全国各地の森を巡り、そこで得た具体的な例を交えながら、わかりやすく平易な言葉で伝えています。
森林をめぐる問題といえば自然保護が目立ちがちですが、内山さんは自分の足で訪ね歩いた山村の内実を踏まえながら、森と共に生きる人々の営みの大切さも説いています。私が住む北海道・下川町も町面積の9割を森林が占め、森と人が共生した地域社会を模索していますが、木材を循環型資源としてどう活用し、供給していくかは、これからも大きな課題です。そのような中で、各地の森や山里に足を運んだ経験から醸成された内山さんの提言は、傾聴に値するものだと思っています。
木や森の生態に興味がある人にお薦めなのが、清和研二さんの『樹は語る』です。私も春先になると、毎年この本を読みます。樹木の生態を樹種ごとに紹介しながら、木や森が有する奥深さや美しさに触れる一方で、科学的な視点からもそのすばらしさを捉えていて、楽しく読めます。
『虔十公園林』は、地球環境とSDGsをテーマに森を語るなら、宮沢賢治は外せないなと思い選びました。小学校3〜4年生のお子さんでも気軽に読めるので、一緒に森林に触れる機会があれば、ぜひ読んでもらいたい一冊ですね。