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サスティナビリティ

NPO法人『森の生活』代表理事|麻生 翼さんが選ぶSDGsと地球環境に触れる本5冊

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森を活かしたまちづくりを進めるNPO法人『森の生活』代表理事・事務局長の麻生翼さん。森が豊かな北海道・下川町を拠点に活動する麻生さんの視点から、森と人との関係や、森と調和したライフスタイルを見直したいときに必要な在り方とは何か? その示唆に富む5冊を選んでくれました。

麻生 翼さんが選ぶ、SDGsと地球環境に触れる本5冊

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(左上から時計回りに)1.『ウォールデン 森の生活』/2.『森にかよう道 ─知床から屋久島まで』/3.『樹は語る ─芽生え・熊棚・空飛ぶ果実』/4.『虔十公園林』/5.『絶望の林業』 
 持続可能な社会に向けて、私たちの在り方を根本から見直すときに参考になるのが、19世紀のアメリカの作家、ヘンリー・D・ソローの生き方や考え方です。森の中に丸太小屋を建て、そこでの2年2か月の自給自足の日々をまとめた『ウォールデン 森の生活』は、人間にとって真の豊かさとは何かを、現代を生きる私たちに対して問いかけているような気がします。

 当時のアメリカは鉄道などの登場で生活の質は向上しましたが、一方で、生活のためにはお金が必要になり、人々は働き始め、お金を稼ぐための時間が増えていきます。しかし、それは本当に豊かな暮らしなのか? 確かに昔は、快適さや利便性の点では生活の質が低かったかもしれませんが、それでも人々は自然とともに生き、自然の恵みを享受する生き方をしてきました。それを捨ててまで、都市型の生き方に迎合する必要があるのか? この疑問に応えるべく、ソローは森という大自然の中で簡素に暮らし、そこから得たものを私たちに伝えてくれています。

『森にかよう道』は私自身、若い頃に読んで大変感銘を受けた一冊で、大学教授で哲学者の内山節さんが、「森と人がつながりながら生きていくことの意義」について説いています。山村で一年の大半を過ごす内山さんが全国各地の森を巡り、そこで得た具体的な例を交えながら、わかりやすく平易な言葉で伝えています。

 森林をめぐる問題といえば自然保護が目立ちがちですが、内山さんは自分の足で訪ね歩いた山村の内実を踏まえながら、森と共に生きる人々の営みの大切さも説いています。私が住む北海道・下川町も町面積の9割を森林が占め、森と人が共生した地域社会を模索していますが、木材を循環型資源としてどう活用し、供給していくかは、これからも大きな課題です。そのような中で、各地の森や山里に足を運んだ経験から醸成された内山さんの提言は、傾聴に値するものだと思っています。

 木や森の生態に興味がある人にお薦めなのが、清和研二さんの『樹は語る』です。私も春先になると、毎年この本を読みます。樹木の生態を樹種ごとに紹介しながら、木や森が有する奥深さや美しさに触れる一方で、科学的な視点からもそのすばらしさを捉えていて、楽しく読めます。

『虔十公園林』は、地球環境とSDGsをテーマに森を語るなら、宮沢賢治は外せないなと思い選びました。小学校3〜4年生のお子さんでも気軽に読めるので、一緒に森林に触れる機会があれば、ぜひ読んでもらいたい一冊ですね。

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麻生 翼(あそう・つばさ)●NPO法人『森の生活』代表理事。愛知県出身。大学時代に訪れた北海道の農山村に惹かれ、会社勤務を経て北海道で『森の生活』に参画。北海道・下川町の森林資源を活用し、森と人をつなぐさまざまな活動に取り組んでいる。
photographs by Yuichi Maruya text by Kentaro Matsui
記事は雑誌ソトコト2021年9月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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