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特集 | かっこいい農業 これからの日本らしい農業のあり方 !

NPO法人『くまの木 里の暮らし』事務局長|加納麻紀子さんが選ぶ、「農度」を高める本5冊

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農業に抱いていたイメージが払拭された経験をし、それを伝える側になった加納麻紀子さん。農山村に滞在するグリーンツーリズムについて、もっと知りたい人におすすめの本を選んでもらった。農山村の美しさ、優しさ、厳しさなどを感じさせる5冊。

NPO法人『くまの木 里の暮らし』事務局長|加納麻紀子さんが選ぶ、「農度」を高める本5冊

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(左上から時計回りに)2.『惣一じいちゃんの知っているかい? 農業のこと』/1.『雨ニモマケズ Rain Won’t』/3.『農村の幸せ、都会の幸せ ─家族・食・暮らし』/4.『農業で子どもの心を耕す』/5.『ぼくは農家になった』 
 神奈川県出身の私は、いわゆる“まちの子”だったので、農業のことを全然知りませんでした。仕事でたまたま「田んぼの学校」というプロジェクトの担当になり、正直なところ半ばいやいや農の分野に関わるようになったのです。

 でも、現場に足を運び、魅せられてしまいました。都会とは違う田舎の濃厚さに感動し「こんなにおもしろかったんだ! これを伝えたい」と、のめりこんでいきました。

 自然、風景、文化、農業に関わる人や生き物も続いてほしい。そのために自分の立場でできることはなんだろうと考えて、「つなぎ役」をやれたらと思いました。農村に滞在してもらって、できれば繰り返し来ていただき、「農」を紹介する活動を行うのが一番かなと。グリーンツーリズムの専門団体ではありませんが、現在は大学の実習や小学校の修学旅行などで栃木県・塩谷町に来る人たちのコーディネートをしています。「ね、おもしろいでしょう?」と紹介し、同じように感じる仲間が増えていったら楽しいなと思っています。

 塩谷町に来てから読んだのが、詩とともに里山の風景が描かれている『雨ニモマケズ Rain Won’t』です。有名な宮沢賢治の「雨ニモマケズ」は、「節制と自己犠牲という信条を綴った詩だよね」という程度の印象でしたが、実際に自分が農村に身を置いて生活するようになり、この美しい絵とともに読むと、「ああ、この詩は里山の農とともにあった生活から生まれた哲学なんだな」と深く感じさせられました。

『惣一じいちゃんの知っているかい?農業のこと』の著者である山下惣一さんは、中学を卒業後、農業を継ぎ、農業で生計を立てながら、農業をテーマにした小説やルポルタージュを執筆してきました。その内容には、土を耕し、作物を育てて生きてきた人特有のたくましさがあります。前職でお会いしたことがあるのですが、世界の農業や農村の現場をたくさん知っていて、見識も深いのに、いつも語り口は軽やか。農に根差した鋭い思索にハッとさせられることばかりでした。この本は親子はもちろん、農業をあまり知らない大人にもおすすめです。

 今は、農業一本で生活していくのはなかなか難しい時代です。私は就農者だけではなく、自分のように農業まわりの仕事がもっと増えてもいいと考えています。グリーンツーリズムを通して農山村の生活を理解し、農業を守っていく意識のある人が増えていったらいいですよね。

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かのう・まきこ●NPO法人『くまの木 里の暮らし』事務局長。大学卒業後、都内で農村地域における環境教育活動の普及・推進に携わった後、2010年に栃木県・塩谷町へ移住。元・小学校の校舎を活用した「宿泊型体験交流施設」を運営している。
photographs by Yuichi Maruya text by Yoshino Kokubo
記事は雑誌ソトコト2022年1月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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