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SDGsを実現するために欠かせない姿勢|インターナショナル教育とSDGs 第6回

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持続可能、そして世界で活躍できる子どもを育てる教育を考える連載「インターナショナル教育とSDGs」、第6回目は「SDGsを実現するために欠かせない姿勢」になります。

この夏休み、弊校ローラス・インターナショナルスクール・オブ・サイエンス(以下、ローラス)では「火星移住」をテーマとしたサマースクールを実施し、ロケットやローバー(探査車)作りから、宇宙でも生存できると言われるクマムシ探し、人工培養肉や昆虫食作りまで、様々なアクティビティが行なわれています。また毎週、テーマに関連するゲストをお呼びし、専門的なお話を伺っています。その中で、NASA(アメリカ航空宇宙局)の小野雅裕博士のお話に、SDGsを実現していくために必要不可欠だと感じた部分がありましたので、今回ご紹介させて頂きます。
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小野先生は、NASAジェット推進研究所の技術者で、これまで開発に携わられた火星ローバーや探査ロボットのことなど、サイエンス的、テクノロジー的にとても興味深いお話をしてくださいましたが、それに加えて、宇宙開発を行なっていく上で大切な姿勢についても熱く語られていました。

それは、宇宙開発を地球人が行なっていく上で、他の天体(今回の場合は火星)に赴く際、「植民地支配者(colonists)」の姿勢で向かうのか、それとも「探検者(explorer)」の姿勢で向かうのかというものでした。各者の特徴としては、「植民地支配者」は、「火星を、自分たち地球人のものとして手に入れようとする傲慢な(arrogant)姿勢」で宇宙開発に臨むのに対し、「探検者」は、「火星は、あくまで火星に存在する物(微生物や非生物であっても)に属しており、地球人はそこに学びにいくという謙虚な(humble)姿勢」で臨むということでした。(下写真参照)

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そして、地球の歴史の中では、北南米の先住民やオーストラリアのフクロオオカミなど、これまで多くの植民地の人々や生き物が植民地支配者により殺され、環境が破壊された例が示されました。また、人間を完全に滅菌することは不可能なので、地球人が新しい天体にいくということは、それだけで地球からの生き物を持ち込むことになってしまう為、常に慎重で謙虚な(humble)姿勢が求められるということも仰っていました。

宇宙開発の中で、例えば、火星の地球化:テラフォーミング(terraforming)や植民地化(colonization)という言葉が出てきたり、火星を温めるため、固体となって存在している二酸化炭素(ドライアイス)を溶かして、温暖化を引き起こそうといった考えを耳にしたりします。これらは、地球上の環境問題さえ解決できないでいるにも関わらず、人間(地球人)が、現地の自然をコントロールできると考える少々思い上がった傲慢な(arrogant)姿勢のようにもみえます。地球で人間が引き起こしてきた問題を、また他の星や月で繰り返してはならないのは自明かと思います。

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今回、ヨーロッパ人が植民地として手に入れた地であるアメリカに住みながら、宇宙開発に第一線で携わっていらっしゃる小野先生から、このような示唆に富んだお話を頂いたのはとても印象的でした。私もカナダで自然環境を敬い大切にしている先住民の村で過ごしていた際、よく「自然に対して常にhumble(謙虚)であれ」と言われていたのを思い出しました。

そして、今回、宇宙開発をテーマとしたイベントを通して、持続可能な開発を実現するには、生物、非生物を問わず、人間を取り巻く環境の構成員一つ一つに対し、謙虚な(humble)姿勢で接していくのを決して忘れてはならず、いくら科学技術が発達したとしても、このような心構えや姿勢がなければ、SDGsは達成できないのではないかと改めて思惟させられました。

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ローラスインターナショナルスクール・オブ・サイエンス
サイエンス顧問:村上正剛さん

オーストラリア、マレーシア(ボルネオ島)にて環境教育に従事。東北大学、北海道大学の他、カナダやオーストラリアの大学(院)にて、人と自然との関わりや科学技術コミュニケーション等について研究。現在も引き続き京都大学にて研究中。

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