わかったようでわからないSDGs。それって本当にSDGsとつながっているの? と疑問に思う一方で、こんなところにまでSDGsが浸透しているのか! と感心したりの繰り返し。そんなSDGsとの距離を縮めるために、SDGs改めジーズという愛称でおもしろがりながら、日々の生活の中で見聞きしたジーズなアレコレをつぶやいたりつっこんだりぼやいたり。
#6 捨てっぱなしの人生にピリオド。そしてわたしは旅に出た。
レモンやオレンジなどの柑橘類の皮を砂糖漬けにしたものがピール。オランジェットはピールをチョコレートでコーティングしたもの。オレンジやレモンを筆頭に、甘夏、はっさく、ぽんかん、伊予柑、晩柑など、日本ならではの柑橘類のピールやオランジェットも見かけるようになった。
ある日、お菓子教室を主宰している先生お手製の夏みかんピールをいただいた。これが、いつも食べているものとはひと味違ったなんともいえない美味しさだった。
また食べたい……。そう強く願ったところで、自家製ということはどこかに売っているわけじゃないのだから買うこともできない。つまり、もう二度と味わえない幻のピールというわけ。
ピールにもいろんな製法があって、先生のレシピは独特で手作業の極みを絵に描いたような、というよりなかなか根気のいる力仕事で、聞いただけで気が遠くなる作業工程なんだけど、わたしは幻のピールと再会すべく、一度もつくったことがないのに無謀にもピールづくりの旅に出ることにした。
しかし、結論からいうと失敗の連続で理想形にはほど遠く、惨敗に終わることになる。
幻は、やはり幻のままのピールということか…。一度や二度で簡単にできるものではないと思い知り、早くもピールづくりの旅を続ける気力は失せてしまったのだけど、短い旅の途中で気づいたことがある。今さらだけど、これって“ジーズ”なのでは、と。
わたしは今まで柑橘類の果肉を食べては皮を捨て、ジュースを絞っては皮を捨て、とにかく皮を捨てっぱなしの人生を送ってきた。ピールやオランジェットが好きで、それが皮でできていると知っていながら、柑橘類の皮にこれっぽっちも敬意を払っていなかった。
ピールは買うもの。ついさっきまでそう思っていたし、そう決めつけていた。
もちろん、買うことは悪いことではないし、簡単につくれないからこそ商品としての価値と美味しさ、贅沢さも同時に味わうことができるわけだ。
ここで考えてみる。自家製とお店で買うピールやオランジェットに共通しているのは皮を捨てずに利用しているってこと。
皮だってゴミにしないで、食材として活かす。それも美味しく活かす。なんて素敵な柑橘類の“皮ジーズ!” 家庭レベルで考えたら、あまりにもちっぽけなことだけど、プチジーズだってジーズにはちがいない。皮をゴミ化しない、させないジーズなアクション!
そう思った瞬間、幻のピールに出会うために、わたしは再びピールづくりの旅に出るのかもしれない。旅じゃないんだけどね、そもそも。
手仕事、アート、茶の湯、お酒と器など、趣味と暮らしにまつわることを感興の赴くままに。ソトコトNEWSでは「これってSDGsかな?」と思うことを”ジーズな日常”と称して筆を走らせています。ときどき脱線しがちですが、”Please don’t bother”。東京在住。青森県生まれ。