電車やバスといった都市交通事業、住宅や商業施設を運営する不動産事業、そして「阪神タイガース」、「宝塚歌劇」といったエンタテインメント事業など、多種多様なグループ会社をもつ阪急阪神ホールディングス株式会社。実は、グループ全体で社会貢献活動「阪急阪神 未来のゆめ•まちプロジェクト」に取り組んでいます。人事総務室のサステナビリティ推進部で、社会貢献担当をしている課長の平野里美さんにお話をお聞きしました。
まちを支える「地域環境づくり」と「次世代の育成」に力を入れる
平野里美さん(以下、平野) 当グループは100年以上の長きにわたり、阪急阪神沿線を中心とした地域社会に育まれ、地域の皆様と信頼関係を築いてきました。これまでの感謝をこめてお客様へ恩返しがしたいですし、私たちも地域社会の一員として未来に向けてともに歩んでいこうと、社会貢献に特化したプロジェクトを2009年に始めました。阪急阪神沿線を中心に、私たち一人ひとりが関わる地域において、「未来にわたり住みたいまち」をつくることを目指しています。
平野 重点領域として、力を入れている分野が二つあります。それが「地域環境づくり」と「次世代の育成」です。まちを支える要素として、場としての「地域環境」と活動主体である「人」に焦点をあてています。
環境と言うとエコにまつわる活動だけかと思われるかもしれませんが、地域コミュニティ形成にも目を向けており、「地域環境づくり」では、地域コミュニティが安全・安心かつ文化的で環境に配慮しながら発展する、持続可能なまちづくりに取り組んでいます。「次世代の育成」では、未来の地域社会を担う人材である子どもたちが、夢をもって健やかに成長する機会を創出しています。
グループ内で協働した小学生向けの体験学習プログラム
平野 「協働」を大事にしながら、次の三本柱で活動しています。一つ目が「企業での協働」です。当グループには都市交通事業をはじめ、不動産事業、エンタテインメント事業、旅行事業などを担う会社が100社ほどありますので、各社の事業特性やノウハウ、ネットワークを活用して、年間約100件の社会貢献活動をしています。
その一つとして、小学生向けの体験学習プログラム「阪急阪神 ゆめ•まちチャレンジ隊」があります。実際の職場に招待してグループ会社の仕事を学んでもらったり、職業体験をしてもらったりと、夏休みの宿題のお手伝いにもなるような取り組みです。2010年から毎年夏の恒例プログラムとして無料で行っています。
ソトコト 本格的な内容ですね。さまざまなグループ会社をもっているからこその取り組みだと感じます。子どもたちは「いろいろな仕事があるんだ」と実感できますね。
平野 2020年だけはコロナ禍で実施を見合わせましたが、毎回10倍くらいの応募倍率で、今年は1万人以上の方からのご希望があるなど、おかげさまで人気のプログラムとなっています。さまざまな職場で働く大人たちに出会えるという点も注目していただいている理由かもしれません。2010〜2022年度で約19,000名の小学生をご招待しました。(編集部注:2023年の応募は終了しています)
市民団体への助成金だけでなく、その先の未来に向けた関係づくりを大切に
平野 「地域社会との協働」です。グループ従業員の募金をもとに、会社が同額を上乗せして、地域社会を支える市民団体を助成する「阪急阪神 未来のゆめ•まち基金」を運営しています。これまでに14回開催し、183団体へ計1億906万円を助成しました。この半額が従業員からの募金ということです。また、お金をお渡しするのはあくまで入り口であって、市民団体との関係性をしっかりつくっていくことを重視しています。
その一つとして、2017年から沿線の市民団体やグループ会社などとの協働で、社会課題やソーシャルな活動を知る機会を提供する「阪急阪神 ゆめ•まちソーシャルラボ」も行っています。
従業員が日常での1アクションで、子どもたちの未来を応援
ソトコト おもしろい取り組みですね。
平野 ありがとうございます。「従業員を巻き込んでいくためには、日常のなかで社会貢献活動に参加できることが大事なのではないか」と担当内で議論した末に生まれたものです。赤と青の2種類のICタグを用意し、それを取ったら食事代とともに寄付金が給料から差し引かれる仕組みになっています。
ソトコト それはすばらしいですね! 日常での一アクションとして、気軽に参加できますね。
平野 2019年には、「阪急阪神 未来のゆめ•まちプロジェクト」の10周年の特別企画として、沿線を走る「SDGsトレイン未来のゆめ•まち号」の運行も始めました。当初は1年限定のつもりだったのですが、お客様や自治体の皆様はじめ社内外から高い評価をいただき、現時点では2025年の大阪・関西万博までの運行を予定しています。
まちは一人ひとりの想いが集まることで、よりよい未来をつくれる
平野 子どもたちが夢を描けるような試みに評価をいただいたり、「知ることで共感の輪が大きく広がっていく」「自分の住んでいる地域を好きになれる」といったご意見を数多くいただいています。私自身は、「阪急阪神 ゆめ•まちチャレンジ隊」などでお子様が目を輝かせながら生き生きしている姿を見ると「やってよかった」と思いますし、未来ある子どもたちの人生の一ページに、当社の取り組みが何か少しでもお役に立てればと願っています。
ソトコト どのような未来像を描いていらっしゃいますか。
平野 まちは、そこに住む一人ひとりの想いが集まることでよりよい未来をつくれるのだと思います。住む人がまちに愛着をもって暮らせたら素敵ですし、子どもたちも「このまちを大切にしたい」と感じてくれたらいいですね。今後もさまざまな人たちとのつながりを大切にしながら、まちづくりに寄与していきたいです。
ソトコト グループの強みやグループ会社の特性を掛け合わせて、すばらしい取り組みをされていると感じました。本日はありがとうございました。
『阪急阪神ホールディングス』人事総務室 サステナビリティ推進部 社会貢献担当 課長
2002年、『阪急電鉄』に入社。人事、秘書、広報業務などを経て2011年より『阪急阪神ホールディングス』グループの社会貢献活動「阪急阪神 未来のゆめ・まちプロジェクト」を担当。