2022年に、25年続く自社の看板商品であるデニム「503」をリニューアルしたEDWIN。そのEDWINが今年10月、新たなSDGsに向けた取り組みとして株式会社 明治と共同開発した「カカオのデニム」を発売。『ソトコト』での縁を通じて生まれた「カカオのデニム」について、EDWINのブランディング&マーケティング推進部長である高嶋大輔さんにお話をうかがいました。
「ソトコトSDGsアワード」で意気投合
ソトコト 今年10月に発売されたEDWINと株式会社 明治(以下、明治)のコラボアイテム「カカオのデニム」。どちらもかつて「ソトコトSDGsアワード」を受賞された企業で、その2社のコラボということで驚かされました。まず、今回のコラボの出発点を教えていただけますか。
髙嶋大輔さん(以下、髙嶋) 出会いはまさに2022年の「ソトコトSDGsアワード」でした。そこで明治さんと知り合って、一緒に何かできないかという話になりました。明治さんはカカオハスクという、チョコレートをつくる過程で取り除かれるカカオ豆の種皮をアップサイクルする取り組みを始めており、そのカカオハスクを使ったデニムを作れないかと考えました。
ソトコト SDGsなデニムづくりとカカオハスクのアップサイクルという、双方の関心分野が重なったかたちですが、大きな企業どうしの協業はスモールスタートが難しいとも聞きます。
髙嶋 今回は、とにかく実現させるというお互いの目的が一致しており、現場ベースで主導できたこともあり、フットワーク軽く動くことができました。
明治さんはカカオハスクを使った衣料の開発に既に取り組んでおり、未使用資源のアップサイクル化に取り組まれているCurelaboさんと、カカオハスクでの糸づくりを始めていました。そこでできた糸をデニムにできないかという形で商品化を進めていきました。
ソトコト 通常、デニムの生地は綿でつくられますが、同じ植物であるとはいえ、カカオハスクを簡単にデニムに転用できるものなのでしょうか。
髙嶋 今回は和紙にカカオハスクの粉末をブレンドした糸をつくり、これを生地の緯糸(よこいと)にしています。和紙を使うことで通常のデニムよりもシャイニーな光沢が出て、ドライな肌触りで穿き心地も軽くなるんですよ。
カカオハスクを使った糸づくりに関しては明治さんとCurelaboさんが進められていましたが、デニムに織る際には我々も参画しサンプルを何度か修正し……ということを繰り返しました。そのおかげで、いい生地ができたと感じています。
「カカオのデニム」、ユーザーからの反響は
ソトコト 今回のコラボ、デニム好きの方でもEDWINさんと明治さんの関係性を知らないと意外に思われたのではないでしょうか。発売してみての反響などはいかがでしたか。
髙嶋 「カカオのデニム」は現在、原宿と京都のコンセプトショップで取り扱っているんですが、ここにはインバウンドのお客さんも多く来店されていて、総じて「おもしろい!」という声をたくさんいただいています。デニム好きのお客様はこだわりの強い方もいらっしゃって、今回のような異素材を使ったものへの反応はどうなるかなと気になっていた部分もあるのですが、発売してみると評判はとてもいいですね。女性の方からのリアクションも良かったです。
EDWINではデニムにまだ興味のない方にも興味を持ってもらえるようにさまざまなコラボなどをしていますが、その時もあまりイロモノにならないように意識しています。あくまで普段使いできるものがベースで、そこにワンポイントのような形でコラボアイテムの特徴を出すようにしています。今回の明治さんとの取り組みでもその意識が良かったのかなと。
ソトコト 確かにセルビッジがチョコレートカラーであったり、フラッシャーが明治さんのチョコレートを思わせるデザインになっているなど、遊び心があって楽しいアイテムだなと感じました。
髙嶋 ジーンズとチョコレート、全く違う分野のものが組み合わさったインパクトは話題性十分ですよね。コンセプトとして、衣料と食品という異業種であっても共存できるし、どこかで不要となるものが別の場所で活用される、そういったモデルケースを打ち出したい気持ちがありました。そのコンセプトをお客様にも感じていただけたのかなと思っています。
つくる側だけでなく、買う側の意識の変化も。世の中の潮流と今後の展望
ソトコト EDWINさんは2年前の「503」シリーズの全面リニューアルをはじめ、今回の「カカオのデニム」づくりなど、SDGsを意識したものづくりを続けられています。つくる側から見て、私たち消費者の意識などで、変わってきたなと感じられる点はありますか。
髙嶋 大量生産、大量消費の時代からは確実に変化してきていると感じています。良いもの、自分の好きなもの、なじむものを使おう。手元にあるものを大切にし、手放すときも捨てずになるべく再利用する、そういう意識が根付いてきているなと思います。デニムは何年も穿き続けられるもので、使うほどにエイジングによって味わいが出てくるので、自然と愛着が湧いてきます。愛着が湧いたデニムを長く穿き続けていただくために、EDWINではリペアサービスも行っていますが、問い合わせが日々増えてきています。
また、穿かなくなったデニムの回収を受け付けているのですが、回収される本数はここ数年で大きく増えてきています。穿かなくなったものでも、捨ててなくしてしまうのではなく、もう一度大きな流れのなかに還元してあげるような気持ちを持ってもらえているのかなと。
ソトコト これまでSDGsというのは、つくる側、売る側が主導しているようなイメージもありました。ですが、今ではそこにユーザーの方も同じ目線を持って購入や消費をするようになってきていると感じられるわけですね。それを受けて、EDWINさんで「カカオのデニム」のほかに、何か新たに取り組まれていることなどはあるのでしょうか。
髙嶋 自社工場から排出された「裁断くず」の再活用として「CO:REプロジェクト」だけでなく、日本エムテクス株式会社様を通じて左官材(壁などに使う塗料)へのアップサイクルも行っています。「NURU DENIM」と言って、さまざまなところでご活用いただいています。
ソトコト 「NURU DENIM」、ソトコトで取り上げさせていただいたことがあります。意外なところでこれも繋がっているものですね。
では最後になりますが、今回の「カカオのデニム」づくりを通して、あらためてEDWINのものづくりへのスタンスや今後の展望をお話しいただけますか。
髙嶋 メーカー、ブランドとして、長く穿ける高品質のジーンズをつくり続けることはもちろんですが、今回の「カカオのデニム」のように、世の中のさまざまな課題に対してジーンズを通じて解決策を提案していきたいと思います。
ソトコト ありがとうございました。
髙嶋 大輔(たかしま だいすけ)
1999年、株式会社エドウインに入社。広報課に所属し、プレス業務や広告・販促の企画デザインを担当。
現在は、ブランディング&マーケティング推進部長。