やりたかったことやれていますか? 仕事や家事に追われ、時間がないなと感じたときこそ実践してほしい「アーティストデート」です。暮らしの中であとちょっとだけ幸福を感じる時間のつくり方を、今回は「推し活」を切り口にしてご紹介していこうと思います。
アーティストデートとは?
自分の中の内なるこども(アーティストチャイルド)と一緒に遠足をして、心がわくわくする経験をすることで、自分自身の新たな創造性に触れ、本当にやりたいことを見つける機会を与えてくれる活動を「アーティストデート」といいます。
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ルールは至ってシンプル。一週間に一度、ひとりで行うこと。一度決めた計画の予定はなるべくずらさずに、行ってみたい、やってみたいと思ったことをなるべくお金ではなく時間をかけて実行するのがポイントです。たとえば手紙を書いてみる、パズルを解くなど家でもできることや、帰り道を変えてみる、新しくオープンしたカフェへ行く、新作映画を見に行くなど普段と少しだけ違うことを心の赴くままに実践するのみです。
アーティストデートは人生に潤いをあたえる
大人になるにつれて封じ込められた欲求と向き合い、自分の中のこどもを喜ばせてあげることで、日々消費されていくやる気や創造力を回復させてくれます。仕事で使える画期的なアイデアがひらめいたり、わくわくする生き方の芽が出てくることも。
「帰り道を変えるだけでもこんなお店があったんだ」と自分自身への新たな情報となり、経験値になります。アーティストデートはいつもと同じ日常を俯瞰してみることで、インスピレーションが湧いたり自己表現力も鍛えられたりします。また、リフレッシュやリラックス効果も期待できます。
わかりやすい例だと、最近よく耳にする「推し活」などは、数あるアーティストデートのなかのひとつと考えていいでしょう。
というわけで、“推しの羊”に会いに行ってきた
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驚かれたらすみません。2月末に産まれた双子の子羊に会いに、横浜市青葉区にあるこどもの国へ行ってきました。推し活というとアイドルやアニメキャラクターが思い浮かばれると思うんですが、私は特に“もふもふした生き物に”対して全身が締め付けられるような、恋をしている感覚に陥ります。初夏を感じ始めたGWに『子羊に会いたい』を叶えることにしました。双子の子羊の名前はアルトとタント。
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「なんだこりゃ?」と突っ込みたくなるような名前がつけられた動物たちの紹介ボードを見るのも楽しみのひとつ。テンポの良い双子の名前は軽自動車好きの人が命名したのかな、と妄想にふけます。その後も園内をぶらついていると昔よく遊んだおもちゃが売店で陳列されていたり、自分が思う”カワイイ”を追求することで、乾いた心が潤ったのがわかりました。
推し活で “愛情ホルモン“ が増える
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ふわふわのタオルやもふもふしたものを触ったときに多幸感を感じるのは、愛情ホルモン「オキシトシン」が関係しているんだとか。ペットや人との交流で自然とオキシトシンが分泌され、ストレスも軽減。幸せのスパイラルが生まれます。スキンシップのほかにも栄養や運動からも増やせるオキシトシン活動を略して「オキ活」と言います。羊に会いに行くという推し活はオキ活でもあったと知り、心と脳の栄養剤過多ではないか!? と頭をよぎるも、この類のオーバードーズは全く問題なさそうです。
多様化する令和の推し。ご近所の元気印にも注目
今は3人に1人は推しがいると言われている時代。新語・流行語大賞に“推し活”がノミネートされ、現代ではアーティストに限らず、ペットや文房具、漫画など幅広く「自分の特にすきなもの」を指す言葉となっています。ある友人は、「旦那が推しだ。」と言い、ある人は「ペットのために働くようなもんだ」と言います。熱量をそそげる対象って案外身近にいる(ある)ものなんですね。
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「今日も元気だな、よし!」
みたいな確認作業。今日は不漁だったと聞いて、魚買っちゃう。これも推し活でしょうか。おかえりなさい、自分。アーティストデートは自分らしさを取り戻すルーティン
アーティストデートを続けていると、「誰でもやりたいことは叶えられる」という一種の万能感が得られます。やりたいことリストを構想していると、同時に計画性も培われるような気がします。そして、その中で推し活を選び、すきなモノやすきなコトに対して自分の時間を投資することで、日常生活のモチベーションになるメリットばかりなのは確かです。自分の中のこどもと遠足をすることで本来の自分にかえり、有限な時間をもっと大切にしようと考えるアクションにもなります。
おかえりなさい、自分。アーティストデートが実践できたら、今日は何を食べよう、何を着ようなどの毎日の小さな選択から、転職や引っ越しなどの大きな決断まで、日々欠かさず行われている意思決定に迷いがなくなり、自信にもつながります。少し脱線してしまった自分の道に再び戻って、気持ちを新たに歩き出せそうです。
写真・文:松谷有紗