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「使われない消火器」を変える。誰もが迷わず火を消せる社会へ―次世代消火具「KECELUN」の挑戦

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能登半島地震や大阪での火災をきっかけに誕生した「KECELUN」。重さわずか500g、安全ピンを抜くだけで子供や年配者でも扱える次世代消火具だ。消火剤の残留が少なく美術館や画廊でも導入が進む一方、警備会社やスポーツチームとの連携も構想中。「自分の身は自分で守る」自主防災の文化を日本に根付かせる挑戦を追う。

――けせるんを立ち上げた経緯を教えてください。

児玉:当社は、「KECELUN(けせるん)」という次世代型の消火具を中心に販売・展開する事業を行っています。2025年10月に設立したばかりの会社ですが、起業の大きなきっかけとなったのは、能登半島地震における火災や、その後に起きた大阪での火災です。どちらの事例においても、「現場に消火器があっても、なかなか初期段階で使われていない」という現実を知り、強い危機感を覚えました。既存の消火器だけに頼る初期消火の難しさや限界を痛感したのです。こうした実態を変え、誰もが迷わず安全に使える手段を広めることで日本の防災や初期消火のあり方を変えたいと考え、起業を決意しました。
そもそも国内に限ると、消火は必ずしも馴染みのある活動ではありません。多くの人が消火器すら使いこなせないのではないでしょうか。
さらに、自宅に消火器を設置するものの、その多くがキッチンなどの火を扱う場所に限られます。しかし火災の原因は多様化し、最近ではモバイルバッテリーが発火して火災を招くケースも多々聞くようになりました。火気の有無を問わず、至る所に火災のリスクは潜んでいます。このような中、もし消火器のない部屋で火災が発生したら…。マンションの共有部まで消火器を取りに行き、安全ピンを外して消火するようでは手遅れになりかねません。こうした状況を変えるべく、立ち上げたのがけせるんです。

――消火器はマンションの共有部や飲食店、工場などのさまざまな場所に設置されています。しかし初期消火には向かないとのこと。消火器ならではの特性を改めて教えてください。

児玉:多くの人は消火器について、「重い」や「怖い」といったイメージを持っているのではないでしょうか。そのため、いざという非常時には、「現場まで重くて持ち運べない」や「消火器を使って安全に消火する自信がない」と考え、消火器を使わない人も少なくありません。さらに消火器を使って消火すると、消火剤の泡や粉末で対象物が汚れかねません。もしPCなどの精密機器や調理場で消火器を使って消火すれば、それらはほぼ使えなくなってしまうでしょう。消火後の後始末や復旧に多大な時間とコストがかかることも、消火器ならではの特性です。もちろん消火器の消火剤は人体への有害性も懸念されています。
メンテナンスが手間なことも消火器の課題です。消火器は一般的に定期的な点検が必要です。しかし、多くの家庭では定期的な点検をせず、ただ置き続けているだけなのが実状です。こうした使いにくさと維持や消火後の手間が、消火器自体の存在を日常から遠ざけ、消火器で初期消火できない状況を招いていると考えます。

――こうした消火器ならではの問題を解決するのが、御社が提案する「KECELUN」ですね。

児玉:はい。「KECELUN」は、一言で言うと「誰でも即座に安全に使える」初期消火のための最適解です。重さはわずか500gでコンパクトなことから持ち運びに優れるほか、安全ピンを抜く力さえあれば、子供や年配の方でも簡単に消火活動を始められます。消火器と違って圧力容器でないため、メンテナンス不足などによる爆発の心配もありません。
消火の方法も消火器とは異なります。「KECELUN」はナノ粒子の消火スモークを放出し、化学反応によって燃焼の連鎖を断ち切ります。カリウム化合物をガスとして放出することで、火災を瞬時に鎮圧します。泡や粉末で火を包み込む消火器とは仕組み自体が異なります。この仕組みにより、消火後の2次被害を劇的に抑えられるのが特徴です。「KECELUN」の消火剤は消火後にほとんど残留しません。そのため、PCなどの精密機器に消火剤を吹きかけても、消火後に消火剤を拭き取るだけで精密機器はまた使えるようになります。
そして「KECELUN」は消火器の代替として使用することを想定していません。あくまで迅速な初期消火を支援するためのツールです。「KECELUN」で消火しきれなかったり、確実に鎮火させたりするためには「KECELUN」と消火器を併用して消火するのが望ましい利用法です。

――家庭で使えるほか、どんな場所や用途での利用を想定していますか。

児玉:例えば工場の場合、消火器を広いエリアに数台設置するのが一般的です。しかし、小型で軽量な「KECELUN」なら、工場内で作業する従業員一人ひとりに携行させることが可能です。火災による被害を最小化するための手段として、さらに消火器より速く消火活動を始められるツールとして「KECELUN」は有効です。
海外では郵便物を配送する車両に「KECELUN」を搭載し、顧客から預かる大切な郵便物が焼失しないようにしている事例もあります。
国内に目を向けると、「消火後の跡が残らない」といった「KECELUN」の特性を評価する場所で使われ始めています。それが、美術館や画廊です。唯一無二の美術作品を多数抱える美術館などでは、消火器を使うと貴重な作品を傷つけかねません。高価な美術作品が修復不能な状態になりかねません。「KECELUN」を使えば、消火後に残るのはごく微細な粒子の跡だけで、それらを拭き取れば貴重な美術作品を元の状態に戻せます。美術作品を倉庫に多数保管する画廊の方から、「KECELUNのようなものをずっと探していた」と高い評価もいただいています。消火器の設置が難しかったり、消火器で消火しにくかったりする場所を中心に、「KECELUN」の導入は進んでいます。

――今後はどんな用途での利用を見込んでいますか。

児玉:警備会社との事業連携も視野に入れます。具体的には、警備員が腰ベルトなどにKECELUNを1本装着する使い方を想定します。火災発生時には、現場に急行した警備員自身が初期消火を始められるのがメリットです。モバイルバッテリーの発火リスクを抱える飛行機や新幹線などの交通機関にも「KECELUN」の価値を提案しています。
ユニークな試みとして、スポーツチームとのコラボレーションも準備中です。具体的にはサッカーチームのロゴをプリントした「KECELUN」をサポーター向けの公式グッズとして展開することを構想しています。こうしたグッズを揃えることで、ファンはチームの社会貢献の姿勢を評価するはずです。ファンの防災意識も次第に高まるのではと考えます。そのほか、防災意識の高さを訴求したい企業のノベルティとして「KECELUN」を使っていただくことも想定します。多くの人が「KECELUN」に触れる機会を増やし、防災や防火、消火への関心を高められればと思います。

――今後の事業計画や目標、予定などあれば教えてください。

児玉:初期消火の選択肢をより多くの場面で提供できるよう、取り扱う製品ラインナップの拡充を進めており、「KESTICK(ケスティック)」という新たな製品も販売を開始しました。
これは無人消火ツールで、分電盤や電源タップのタコ足配線などに取り付け、火災を感知した際には消火剤を自動噴射します。
火災の多くは夜間や外出中など、人のいない場所や時間帯に発生します。特に埃が溜まったコンセントからの発火や、分電盤内のショートといった無人火災を防ぐのは難しいのが実状です。こうした火災の被害を最小化できるのが「KESTICK」です。「KESTICK」を使えば、
人が気付くかどうかに関係なく、火災を鎮火できます。BtoCかBtoBかを問わず、需要のある場所を見極めて、必要な場所に「KECELUN」や「KESTICK」といった適切なツールが広く導入されるよう取り組む予定です。

――日本人は自ら消火するという意識が低いと思います。「KECELUN」を普及させるためには、人の意識を変える取り組みが不可欠です。「KECELUN」という次世代消火具を認知、拡大させるための取り組みがあれば教えてください。

児玉:消火のための道具を届けることだけが当社の役割ではありません。「自分の身は自分で守る」という自主防災の意識を日本に広めることこそが当社の役割であり、使命だと考えます。
そのためには、これまでの防災の枠にとらわれないチャネルにアプローチすることが必要です。潜在的に自主防災をニーズととらえる顧客を開拓し、新たな市場から防災や防火への意識を広く訴求できればと考えます。防災への関心の薄い若い世代にはSNSや動画マーケティングを駆使し、「消火具を備えるのはスマートでカッコいい」というイメージを訴求する予定です。

――「消火」へのニーズは、日本だけではなく海外でも普遍的にあると思います。日本での実績を足掛かりに、今後は世界進出も考えているのでしょうか。

児玉:はい、もちろんです。日本は世界の中でも消防に関する法律が厳密で細かく整備されている国の1つです。日本で「KECELUN」の価値が認められるのはハードルが高いといえますが、逆にいえば、日本で実績を作れば世界で一気に普及できるのではと考えます。まずは日本で「1部屋に1本」という文化を根付かせ、日本で盤石の信頼を築きたいと思います。その後はアジアをはじめとする海外市場に打って出る考えです。さらに、これからの防災のあるべき姿を行政に提言し、自治体を通して初期防火の意識向上や「KECELUN」の導入を働きかけていく予定です。

――日本の防災意識を変える御社の取り組みは、社会的に大きな意義があります。社会貢献という点でどんな取り組みを考えていますか。どんなビジョンを持っていますか。

児玉:今後は事業の売上の一部を被災地へ寄付する取り組みも実施していく予定です。
一人ひとりの防災への取り組みが、被災地の復興支援にもつながる。
「被災地を支援したい」というユーザーの皆さまの想いを、私たちが寄付という形でつないでいければと考えています。
また、保育園や学校などで「KECELUN」の実演訓練を行い、子どもたち自身が火災に遭遇した際に、正しく初期消火に取り組める知識や経験を身につけられるような活動も、継続していきたいと考えています。
商品を販売するだけではなく、「備えること」「知ること」「守ること」が当たり前になる、新しい防災のカルチャーをつくっていくことも、けせるんの大切な使命だと考えています。
一人ひとりの防災意識が高まることで、家庭や地域の防災力が高まり、やがては国全体の防災意識の向上、そして国土強靭化にもつながっていくと考えています。
「KECELUN」は小さなツールにすぎませんが、この1本が家庭に安全をもたらし、大きな悲劇を起こさない社会を実現します。「KECELUN」という種を全国に届け、日本はもとより世界に防災や防火といった大輪の花を咲かせることが、当社の果たすべき社会的責任です。こうした思いを形に変えられるのは当社だけにしかできないと考えます。

株式会社けせるん

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