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仕事・働き方

連載 | NEXTスーパー公務員

葉山町 堤崎輝人

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目次

ゴミ収集を行政サービスの最前線に!

 "9時・17時""安定""お役所仕事"と、なんとなくネガティブなイメージを持たれがちな公務員という仕事。けれども、ひとりひとりを見ていくと、みんなの幸せのために本気で頑張っている人たちがいる。そんな人たちにスポットライトを当てることで、公務員が地域で果たしている役割について知っていただく機会にしたい。そして、そんな活動がいろんな地域で展開できたらいいな。そんな思いで、これから全国各地の自治体で活躍する若手の公務員の方々を、その取り組みとともに紹介していきます。

 記念すべき第1回で取り上げるのは、神奈川県・葉山町のクリーンセンターで働く、清掃職員の堤崎輝人さん。地元の高校を卒業後、18歳の頃から清掃職員として働き続けて22年目のベテランです。そんな堤崎さんらが取り組んでいるのは、クリーンセンター改革。実は、葉山町は4年前から始めたゴミの戸別収集をきっかけに、クリーンセンターの役割が大きく変わってきているんです。その結果、町で一番信頼できる行政サービスとして、第3位の自衛隊と第2位の警察を差し置いて、第1位にクリーンセンターが挙がるほど、住民からの信頼を得るようになっています。いったい何が起こっているのか、若手職員たちのリーダー格・堤崎さんを先頭に進む、新たな取り組みについて紹介します。

戸別収集をていねいに行うことで、住民との間に信頼関係が生まれた。

 そもそも、葉山町でクリーンセンターの改革が始まったのは、山梨崇仁町長が戸別収集を公約として打ち出したことがきっかけ。共有のゴミステーションからではなく、1万4000世帯余りの全戸を訪ねて収集する戸別収集は、4年前の2014年6月から始まりました。その具体的な収集方法を現場で練り上げた、職員の一人が堤崎さんです。堤崎さんは、ほかの自治体でゴミ収集の業務を民間にアウトソーシングしていく動きが広がっていく中で危機感を感じ、これまでのルーティンワークでただゴミを回収するだけの日々に疑問を持っていました。そこで戸別収集の導入をチャンスと捉え、住民にていねいに応対する仕組みの導入や、収集の効率化など、積極的に新たな取り組みにチャレンジしていきました。

高台にあるクリーンセンター。改革前までは、課題の多い部署だった。
高台にあるクリーンセンター。改革前までは、課題の多い部署だった。

 導入当初は、住民からクレームの嵐。分別が十分でないごみを収集しないままにして、怒りの電話をいただくことも多かったと言います。しかし、クレームに対しても、電話での説明で済ませるのではなく、実際に訪問してなぜ収集できなかったのかを説明することで、理解を得ていったと言います。そうした一つひとつのていねいなコミュニケーションを図っていったことなどから、住民に自分が出しているゴミへの責任感が生まれ、ゴミの量が戸別収集の導入前と比べて20パーセント削減されたということです。

頼れる同僚たち。左から、堤崎さん、内田自栄所長、小山拓さん、仲田聖也さん。
頼れる同僚たち。左から、堤崎さん、内田自栄所長、小山拓さん、仲田聖也さん。

 そして、効果はそれ以上に。毎日のように収集で顔を合わせることになったこと、そして、元気に挨拶するように心掛けていったことから、住民の方との間にコミュニケーションが生まれてきたんです。「お疲れ様」の声や、「これでも飲みなさい」と差し入れまで勧められることも。毎日のように決まった時間に来てくれることから、たった1、2分のために、今では待ってくれている高齢者がいたり、子供たちがパッカー車(収集車のこと)に向かって手を振ってくれるようにもなったと言います。

堤崎さんの乗るパッカー車。子どもたちにも大人気で、よく手を振られるという。
堤崎さんの乗るパッカー車。子どもたちにも大人気で、よく手を振られるという。

 こうして信頼が蓄積されていったことから、ゴミの相談だけでなく、日常生活のさまざまな相談も持ちかけられるようになってきています。期待されることで、職員のモチベーションも上がり、さらなる改善を図るという、好循環が生まれつつあります。

それぞれの家の前にあるゴミ箱からゴミを収集していく。動きもキビキビとしている。
それぞれの家の前にあるゴミ箱からゴミを収集していく。動きもキビキビとしている。

収集業務を超えた役割を担い、変革を続ける公務員のに。

 そうした中、クリーンセンターが行政の最前線としてもっとできることはないか。町長のかけ声のもと、堤崎さんをはじめとした職員たちが知恵を絞っているのが、クリーンセンターの今後について。「やりたいことはいっぱいある!」と目を輝かせながら、現場の感覚をもとに新たな施策を生み出し始めています。

パッカー車の中には、地元の保育園の園児たちが描いた絵を貼り付けたものも。
パッカー車の中には、地元の保育園の園児たちが描いた絵を貼り付けたものも。

 実際、自分の担当エリアの住民とは毎日のように顔を合わせているので、「最近、ゴミが出てないな」などと、異変に気づくことも多いと言います。それならば、福祉課と連携して、超高齢化社会に向き合うための、高齢者の"見守り部隊"になれるのではないか。あるいは、せっかく地域をくまなく移動しているのなら、警察と連携して、振り込め詐欺予防の声かけができるのではないか。町の広報として、災害や選挙などの広報も行えるのではないか。住民との信頼関係を生かして、もっと地域の困りごとの相談に向き合えるのではないか。クリーンセンターの本来の役割を超えて、新しい組織に脱皮しつつあります。

住民から直接ゴミを渡されることも。積極的にコミュニケーションを取っている。
住民から直接ゴミを渡されることも。積極的にコミュニケーションを取っている。

 こうして考えると、毎日町内を巡回している清掃職員の方々には、無限の可能性があるのではないかと思います。堤崎さんらクリーンセンターの職員たちからは、言われた仕事をただやるだけではなく、住民のためにという公務員の原点に立ち返って自分の仕事を考える、そうした強い信念を感じました。それはもはや、清掃職員という枠組みを超えて行政の最前線で住民の方々と接し、変革を続ける、公務員の鑑とも言える存在です。世の中では、費用対効果が重視され、ゴミ収集の民間委託が進んでいますが、葉山町のような発想の転換も選択肢の一つではないでしょうか。そういう意味では、堤崎さん一人だけでなく、この葉山町のクリーンセンターで働く職員全員を、変革に挑み続けるNEXTスーパー公務員として紹介したいと思います。人知れず頑張っている皆さんの街の清掃職員の方にも、ぜひ目を向けていただければ幸いです。

\首長は見た/
改革を続けていく、公務員のあるべき姿に。

葉山町 山梨崇仁 町長

 堤崎さんをはじめとして、クリーンセンターの職員の方々は、自分たちで議論を深めて、今の戸別収集の仕組みを作り上げてくれました。行政の最前線の職員として、住民の方々からも評価され、モチベーションも高い。今はごみ収集をするクリーンセンターから脱皮した、町の“サービスセンター”として、住民に近い利点を生かし、他の部署とも連携しながら、新たな付加価値づくりにチャレンジしようと話しています。そして、これからもしっかりと改革を続ける、公務員のあるべき姿を体現していってもらいたい。これは、役場全体の意識改革のきっかけにもなると思うし、ひいては日本中の公務員の皆さんのモデルになってくれたらありがたいなと思っています。

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