温泉上がりといえば、腰に手を当ててグイッと飲む、
あの瓶牛乳がセットという方も少なくはないと思います。
川越市伊佐沼近くにある温泉へ行った夜のことです。
店内にはガラスで中身が見える自販機が置いてあります。
この春、3月末で終了した「明治の瓶牛乳」が、そこにひっそりと佇んでいました。
最後の瓶牛乳は残り6本。

迷わず1本を手に取った、その直後。
まるで時代のスイッチが切り替わるかのように、自販機の中の商品は紙容器へと変わっていました。
あの小さなガラス瓶が、ひとつの時代の終わりを告げる最後の証人だったように思えます。
夜桜が静かに揺れるなか、私はその一本の瓶牛乳を手に、ひとり歩き出しました。
瓶の冷たさと重みが、なぜかやけに愛おしく感じられて。
春の終わり、桜の下で飲む最後の瓶牛乳。
きっと、こうして少しずつ、知らないうちに「懐かしいもの」は姿を消していくのでしょう。
でも今夜だけは、そのひと口ごとに、ちゃんと「ありがとう」を言えた気がします。