発酵食作家の園山真希絵さんが2023年3月末、帯広に本社を構える昭和22年創業の『ヤマイチ日向醗酵食品 株式会社』の事業継承に伴い、『株式会社 河村食材』の後谷紘輝さんと共に代表取締役社長に就任しました。同社の歴史と想いに共感し、今回の良縁が結ばれたと言います。料理研究家・発酵食作家として長く取り組みを続ける園山さんの“食”にかける想いとは何か。今後の展望も含めて取材しました。
園山さんとヤマイチ日向発酵食品株式会社の理念が共鳴、事業承継の良縁へ
その会社は、ヤマイチ日向発酵食品株式会社。
ヤマイチ日向発酵食品株式会社(以下、日向社)は昭和22年に創業。北海道・十勝地方の恵まれた気候風土、豊富な水と広大な地から産出される「音更大袖振大豆(おとふけおおそでふりだいず)」を使った麹(こうじ)の製造業から始まり、70年余りにわたって納豆や豆腐、油揚げといった大豆食品を販売していました。
しかし、2020年に創業者の日向金太郎氏から数えて3代目の日向将仁氏が逝去。帯広の本社社屋は解体され、あとは音更の工場を残すのみとなっていましたが、ここで日向社と園山さんとの偶然の出会いが生まれます。日向社の歩んできた歴史と「古来から我々の食生活に深く関わる大豆を通じ、明日の食文化を守りたい」という理念、創業ご一家の人柄に触れた園山さんは事業承継を決意。人々が豊かで安心して生活できる環境づくりを行っている『有限会社 戸田商事』が日向社の発行済株式を100%取得し、園山さんは「株式会社 河村食品」の後谷紘輝氏とともに同社の代表取締役に就任しました。
園山真希絵さんからのメッセージ
今より30キロ太っていたり、肌がボロボロだった思春期時代の私をプラスに変えてくれたのが「大豆食品」でした。豆腐・納豆・厚揚げ・油揚げ・おからなどを好んで食べるようになってから信じられないほど体質も変わり、自然と体重も減っていきました。
これはもう「大豆食品」に恩返しするのが私の使命だと感じ、大学卒業後、一般企業を経て、食の世界に飛び込んで、約23年。「人を良くする」と書く“食”をテーマに、「大豆食品」を中心に、世の中に必要なものを見出しながら、世の中に美しい意味を取り戻すべく、日々、食と向き合い、今に至ります。
そんな中で、帯広の日向社さんのお話をうかがい「これは偶然でなく、必然のご縁だ」と思い、引き受けたというのが、今回の経緯です。さらに、日向社の創業家の皆様や、働いてらっしゃる方々の温かさに心打たれました。
私は、好きなことをしながら、人の役に立つことが、何よりの喜びであり、且つ、「大豆食品」はもちろん、お世話になっている方々への恩返しだと思ってます。
地方創生と食業界のヒーローに。食への取り組みを続ける園山さんの展望
また、こうした発酵食品の可能性だけでなく、フードロスの問題にも園山さんは視野を広げています。たとえば、大豆から豆腐をつくる際に出る「おから」。年に数10万トンが廃棄されているおからを活用する手段なども、これから考えていきたいとしています。ゆくゆくは地方創生にもつながる、食の業界問題を解決するヒーローのような存在になれればと、今後の展望を語ってくれました。
1978年1月5日生まれ。島根県出雲市出身。高校卒業時に「食」に目覚め、肥満・ニキビ・アトピーを克服。70kg近くあった体重を、1年間で、食べながら約30㎏のダイエットに成功。2006年より約15年、紹介制飲食店『恵比寿 園山(そのやま)』経営者として店舗に立ち続ける。2022年7月に“人間もより良く発酵”をテーマに掲げた『発酵フーズ株式会社』を設立。数ヶ月後『カフェ・カンパニー株式会社』CHOに就任。数々の試練や苦悩の経験をバネにし、“人を良くする”と書く“食”を通して、良縁を結び、世の中に美しい意味と笑顔をもたらすことを生き甲斐としている。
『発酵フーズ株式会社』公式サイトはこちら