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サスティナビリティ

特集 | 第2回「ソトコトSDGsアワード2022」

未来を希望に―コロナ禍を経て見えた新しい地域貢献のかたち。ファンケルが取り組む神奈川SDGs講座

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化粧品やサプリメントなどを展開する株式会社ファンケルが、地元・神奈川の子どもたちを対象に開講している「ファンケル 神奈川SDGs講座」。地元メディアや企業ともコラボレーションして、すでにたくさんの子どもたちに向けてサスティナブルな未来についての授業を行なっています。地元の小・中・高生に向けてファンケルがSDGsを伝える講座を開くねらいとは何か。同社の広告戦略部の岩本浩昭さんにお話をうかがいました。

目次

新しいかたちでの地域貢献を考えて生まれた「ファンケル 神奈川SDGs講座」

ソトコト ファンケルは「ファンケル 神奈川SDGs講座 ~未来を希望に~」と題して、小学生・中学生・高校生を対象にした取り組みを行なっています。化粧品や健康食品を手がけるファンケルが“なぜSDGs講座を”、“どうして子どもたちに向けて”やっているのか。プロジェクト発足の経緯やそのねらいについてお話をうかがいたいと思います。

岩本 浩昭さん(以下、岩本) ファンケル 神奈川SDGs講座が発足したきっかけは、2020年からの新型ウイルスの感染拡大を受けて、新しい地域貢献のあり方を考えたことがきっかけです。ファンケルは神奈川県の企業として、横浜マラソンなどのスポーツイベントを通じて地域を応援してきました。しかし、コロナ禍になってそういったイベントが中止・縮小傾向にあるなかで、何か新しい別の取り組みを通じて地元に貢献できることはないかと模索しているなかで生まれました。

SDGsは2030年まで取り組みとして設定されていますが、このときに成人、あるいは新社会人となっているのが今の小学生から高校生くらいまでの子どもたちです。2030年のゴールを迎えたときに社会を支える存在となる子どもたちに、今貢献できることは何か、と考えて、SDGs講座というかたちが見えてきたんです。

ソトコト コロナ禍を受けての新しい社会貢献と、2030年以降、社会の中心となる今の子どもたちにできることを融合させた結果ということですね。このSDGs講座では具体的にどのようなプログラムが実施されているのか、具体例を交えてお話しいただけますか。

岩本 講座は単発講座・長期講座・夏休み講座の3つで構成されています。長期講座の例を挙げると、ファンケルで100%植物由来のパッケージを使った限定商品を展開するタイミングがあり、それに合わせてSDGsをテーマに、横浜市立東高校サステイナブル研究部の生徒たちと一緒にパッケージデザインを考える講座を行ないました。講座はSDGsについて考えるだけではなく、生徒さんたちのSDGsに対する想いをデザイン化し、デザインを通じてどのように消費者にメッセージを伝えればいいのか、製造・販売する側とそれを使う側、それぞれの立場を一緒に考えるプログラムとなりました。さらに、高校生が自分の言葉で自らSDGsの大切さを伝える情報発信まで考えて実行しました。話し合いの結果、自分たちの力では限界があるから、メディアの力を借りて広く想いを伝えようとなり、テレビや新聞社など多くのメディアに対して想いを伝えてニュースとしても取り上げられました。

上記は昨年の取り組みで、今年はパッケージデザインの共同開発と、メディアを通じた情報発信に加え、使用済みの化粧品の容器を回収するためのアイディアも考えています。ファンケルの店舗で行なわれているサスティナブルな取り組みを子どもたちに伝えてディスカッションを行ない、アイディアをまとめました。

単発講座では、横浜だけでなく福岡の高校生を対象に、食品ロスや栄養課題に関する授業を行ないました。ほかにもプラスチックごみの削減などの環境をテーマにした講座を開講しています。

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地元メディアや企業・団体を巻き込んで、子どもたちに質の高い学びの時間を提供する

ソトコト 講座の内容、非常に実践的なものだと感じますが、プログラムづくりもファンケルの内部で行なっているのでしょうか。

岩本 そうですね。元々“自分たちでできることは自分たちの手でやる”というのがファンケルの社風なので、SDGs講座の内容についても自社で作っています。講座を実施するごとに検証を行なって常に内容のブラッシュアップを図っています。

ただ、全部を自分たちだけで完結してしまうと広がりがなくなってしまいますので、第三者を交えた取り組みにしています。

たとえば、地元テレビ局に、講座の開催校を探すお手伝いをしてもらうとともに、高校生たちの取り組みや講座の様子を番組で放映してもらったり、年12回の単発講座では、そのうちの4回をこの取り組みに賛同してくれた地元企業とコラボレーションをして、外部の講師を招いて講座を実施しています。

ソトコト SDGs講座の発端に地域貢献があるとうかがいましたが、地元のどういった企業が参加されているのでしょうか。

岩本 たとえば2021年12月の講座では京浜急行電鉄株式会社さんに講師として登壇いただき、「京急グループのSDGs達成につながる取り組み」をテーマに、再生可能エネルギーを活用した鉄道の運行やビーチクリーン運動、地域交通の課題解消に向けたサービス提供など、実際の取り組みをご紹介いただきました。また、地元プロバスケットボールチームの川崎ブレイブサンダースさんに、プロスポーツチームが取り組むSDGsについての講座を開催したこともあります。

ソトコト お話を聞いていると、単発講座・長期講座・夏休み講座で相当数の講座が開かれていると思いますが、これまでにどれくらいの子どもたちがこの講座に参加されているのでしょうか。

岩本 2021年度はトータルで約2,250名の児童の皆さんに参加いただきました。2022年度はまだ途中ですが、最終的には5,000名くらいの方に参加いただける予定です。

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子どもたちの成長・変化を見られることがうれしい。「ファンケル 神奈川SDGs講座」の手ごたえ

ソトコト 取り組みを始められて以来、多くの児童が受講されているファンケル 神奈川SDGs講座ですが、これまでやってきての手ごたえについてお話しいただけますか。

岩本 生徒さんから寄せられるフィードバックで一番うれしいのは「今日から自分にできることを探して活動します」と言ってもらえることですね。ご家族にもシェアしてもらえることも多く、SDGsに興味を持ってもらえるきっかけ作りができているかなと感じます。

また、SDGsとは直接関係はしないのですが、昨年度9回に渡って行なった長期講座を通じて生徒さんの成長が見られて、これも講座をやってよかったと思える瞬間です。第1回目の講座でグループディスカッションをしてもらったときにはなかなか発言できなかった生徒さんが、回を重ねるごとにどんどん自分の意見を言うようになっていたり、ディスカッションの司会進行役の生徒さんの進行が上手くなっていくなど、生徒さんの変化を見られたときにも手ごたえを感じますね。

これは小学生向けに行なった夏休み講座のことですが、参加してくれたある小学生の保護者からこんなメールが届きました。講座を受けたあと、お子様が今の学校に転校する前に3年間使っていたきれいな状態のランドセルを寄付すると言ってくれたそうなんです。小学校に入学したときに祖父母さんと一緒に買いに行った思い出のランドセルだったそうですが、使わなくなったものを社会に還元するというサスティナビリティをしっかりと理解してくださったんだなと思ったこともあります。

ソトコト 子どもたちは、教わったことをすぐに吸収して行動に移してくれますよね。

岩本 また、講座を開く学校を探す際に、「うちの子の学校でどうですか?」と地元の学校にお子さんが通っているファンケルの従業員から声があがることもあります。これも、活動をちゃんと認知してもらえているんだなと、うれしく思います。

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横浜市の小・中学校をすべて回る気概で。「ファンケル 神奈川SDGs講座」の拡大はいずれファンケルの利益にもつながる

ソトコト では、最後にファンケル 神奈川SDGs講座の今後の展望などをお話しいただけますか。

岩本 今後は、より多くの講座を開催していくために講師となる人材を育成していきます。講師の育成は、社内のSDGs人材の育成にもつながり、会社のSDGs推進にも寄与すると考えています。また、講師を務める従業員だけでなく管理職にも現場に来てもらって会社全体でSDGsへの取り組みを強化していきたいと考えています。幸い、社内でもこの取り組みは注目してもらえており、「もっとやっていこう」と背中を押されている状態です。今いる講師では開催回数が限られてしまい、まだまだ人を育てている段階でもあるため“うれしい悲鳴”といった状況でもあるのですが(笑)。

当面の目標としては、小学校・中学校での講座開催を増やしていきたいと考えています。横浜市内だけでも公立の小・中学校は400校以上あるようなのですが、これらをすべて回るくらいの気概でいたいですね。そして、最終的にはもっと気軽にSDGsについて話せる社会づくりに貢献できればと思います。

また、高校生向けの講座は、神奈川県を中心に引き続き開催しつつ、福岡で実施したような他県での単発講座も増やしていきたいです。ただ、地方での開催となると距離と移動時間という問題があります。オンラインでの講座も社内にスタジオがあるので可能なのですが、そうするとどうしても一方通行な内容になってしまいがちです。なるべく対面での講座を、とは思っているので、地方に活動を広げる際にはうまい落としどころを見つけたいですね。

そして、これらの講座を開くことは、地域社会や子供たちのためというのが第一ではありますが、同時に私たちにとっても、たとえば社内のSDGs人材を育成できることであったり、若いうちからファンケルという企業を知ってもらえることで、未来の新しいお客様の獲得につながるかもしれないといった、利益のあるアクションだと考えています。

ソトコト 本日は、ありがとうございました。

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岩本 浩昭(いわもと ひろあき)

株式会社ファンケル 
広告宣伝本部 広告戦略部 企業広告グループ 課長
2007年入社。コールセンター、化粧品の販売管理や販売企画、通信販売の営業部門、広報などを経て現職に。

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