地域の庭を継承して育む、「コーポラティブハウス」。
先ごろ私たちが設計して、東京都大田区に完成した『チドリテラス』の場合では、この土地には、その邸宅の持ち主から土地を譲り受ける条件が「大切にしてきた庭を継承してくれる計画ならば……」ということだったので、建築の外形を雁行状に連続させ、なるべく多くの樹木を残しながら立体的な庭を持つ計画とし、組合員を募集するときにも「庭と共生する集合住宅」というテーマを掲げた。当然ながら、集まった組合員は庭に対しての共感が大きかったので、設計中にも邸宅の庭の生態系を学ぶワークショップを複数回開催し、一緒に学びつつ設計を進めていくこととなった。やむを得ず切ってしまう樹木も、中庭や屋上庭園に若木として植えていったので、元々の庭が立体的に広がったような有機的な環境になっていくはずである。
正直なところ、コーポラティブハウスの設計は、合議しながら進めていくのでかなり煩雑で手間がかかる。しかし、その土地の価値を慎重に全員で考え、試行錯誤を繰り返し建設していくプロセスは、手間を惜しまずやる価値のあるものだった。どんな住まいに住みたいかという一人一人の想いを都市の形に変換していくことで、時代を超えて愛されるサスティナブルな集合住宅ができるのではないかと感じる。
ふじわら・てっぺい●建築家。1975年横浜生まれ。2009年より『フジワラテッペイアーキテクツラボ一級建築士事務所』主宰。2010年より『一般社団法人ドリフターズインターナショナル』理事。建築、地域計画、まちづくり、展覧会空間デザイン、芸術祭空間デザインと領域を越境していくプロジェクトを多数手がける。2012年より横浜国立大学大学院Y-GSA准教授。受賞に横浜文化賞 文化・芸術奨励賞など。
photographs by MASAO NISHIKAWA
記事は雑誌ソトコト2022年11月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。
住所:東京都大田区
施工年: 2022年