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場づくり・コミュニティ

写真家の原点を知る写真集

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 藤岡亜弥の2冊組みの写真集『アヤ子 江古田気分』『my life as a dog』が9月に出版された。大学時代に暮らしていた東京都練馬区江古田の下宿先が舞台だ。藤岡といえば、今までさまざまな地で生活をしながら、作品を発表してきた。日本大学芸術学部写真学科を卒業後、就職して2年弱働くも、思い立って台湾へ向かい、暮らし始める。しばらくして帰国したあと、次はヨーロッパ放浪の旅へ。この時の作品が写真賞を受賞し、ファースト写真集『さよならを教えて』が出版された。その後、文化庁派遣海外留学生としてニューヨークへ渡り、5年間滞在。帰国後は故郷の広島に戻り、「ヒロシマ」をテーマにした写真集『川はゆく』を発表。「木村伊兵衛写真賞」、「伊奈信男賞」、「林忠彦賞」を受賞する快挙となった。

 ここまで書けば、見知らぬ風景を求めて貪欲に生きる写真家のようにも聞こえるが、あくまで藤岡が大切にしているのは、それぞれの場所で“生活をすること”だ。生きるために撮るのではなく、暮らしながら、その生活を切りとっている。

 改めて冒頭の写真集に戻ろう。大家のおばあちゃんが1階に住む、昭和の古いアパート。花瓶に挿さった枯れかけの花。キッチンにあるつくりかけのサンドウィッチ。藤岡が下宿していた当時の写真に、その頃の生活について綴ったエッセイも添えられている。珍しいものが写っているわけではない。だけど、フィクションのようにも感じられる写真を眺めているうちに、作者の人生に次第に引き込まれていくのだ。現在は広島県東広島市の小さな村で地域の人たちと関わりながら暮らしている藤岡。出すたびに評価されてきた写真家の原点を堪能したい。

写真集『アヤ子 江古田気分』『my life as a dog』

 (49562)

藤岡亜弥著・刊
text by Nahoko Ando
記事は雑誌ソトコト2021年11月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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