もし、働く場所、住む場所を「お試し」できるとしたら、あなたはどんな場所で暮らしや仕事をしてみたいですか?これまでは働く場所=住む場所という考え方が一般的でしたが、リモートワークの普及に伴い、平日都会・週末ローカルのようなライフスタイル、2地域居住や都市部から地方への移住も増えています。「どんな場所で生きることが自分にとって心地よいか」等身大の価値観で、自分の暮らしや人生を見つめ直す人が増えているといえるかもしれません。そんな中、地方での仕事と暮らしを気軽にお試しできるユニークなプログラムが長野県で始まっています。
長野を気軽にお試しできる、3つのサポート
「いつかはローカルへの移住も考えたいけれど、いきなりはちょっと不安」
「在宅ワークばかりだから、どうせなら自然豊かなローカルで働いてみたい」
そんな思いを持ったIT関連の事業を行う人材を対象に、長野での仕事や暮らしを最大6ヶ月間、「お試し体験」できるプログラム「おためしナガノ」が長野県の主催で始まります。プログラム期間中は、長野県での仕事や暮らしを満喫しても、都会との2拠点ライフに挑戦してもOKという柔軟な内容で、5月20日(木)まで参加者を募集中。
長野県でのお試し移住・お試しワークをサポートするために県は3つの支援を実施。
①資金サポート(補助金)、②相談・つながりサポート、③移住・オフィス開設サポートまでフルサポートしてくれるという内容で、移住人気県、長野の本気を感じるプログラムになっています。
特に注目なのが、資金面のサポート。仕事をする上で欠かせない長野県内のオフィス(コワーキングスペース)利用料や引越し代・2地域居住などにかかる交通費、長野県での暮らしに必要となる家具・家電・自動車のレンタル料まで補助してくれます。
東京から長野に移住した筆者としても、引っ越しや生活拠点を整えるための初期費用が意外とかかるため、こういった支援は嬉しいと感じます。
また、お金の支援はもちろん、つながりの支援も行っていきたいと語るのは、事業を担当する長野県庁の細井さん。
「長野県に来て仕事をするだけでなく、参加した人相互の交流機会もつくっていきたいと思っています。そういった繋がりから、これまでにない出会いが得られたり、新しいプロジェクトや事業が生まれるきっかけになれば嬉しいですね」
参加者の約3分の2が移住・2地域居住を継続
他の自治体でも例を見ないユニークなプログラムということもあり、毎年応募者が絶えず、事業は今年で7年目を迎えます。特に昨年、2020年はコロナ禍の影響で、前年度の約3倍にあたる、99組もの応募が。
「働く場所にとらわれなくなってきたこともあり、首都圏や中京圏との2地域居住も可能な長野県に注目が集まったのでは」と細井さんは指摘します。
プログラム満足度も高く、これまでにおためしナガノを利用した68組のうち、約3分の2が長野県に拠点を移したり、2地域居住をしています。中には自宅を新築し、長野県にどっぷりと定着した方もいるそうです。
そういった社会的なニーズの高まりも踏まえ、県は今年から募集枠を12組から、20組に拡大。より多くの人が「お試し」にチャレンジできるプログラムになりました。
先日開かれたオンライン募集説明会には、首都圏や関西など全国から50名を超える参加があり、今年も募集数を大きく上回る応募が予想されているそう。
対象となるのは、IT関連事業者の法人または個人。ITといっても広い職種を想定しており、これまでにはプログラマー、エンジニア、デザイナー、ITを生かしたクリエイターなど、様々な人材が参加。
参加者の中には、「スノーリゾート」である長野の特徴を生かして、スキーでの滑走記録ができるアプリを作っているアプリ開発者も。長野県で仕事をするからこそ生まれてくる事業アイデアがあるかもしれません。
お試しエリアは県内全域、21市町村
おためしナガノのプログラムを通じて、暮らしや仕事を体験できる地域は長野県の全域、21市町村。
北エリアは新幹線が発着して首都圏との交通利便性が高い長野市や、栗菓子や観光まちづくりの町として人気の小布施町などが受け入れ先に。
長野県の下部に位置する南エリアは、宿場町の雰囲気が色濃く残る木曽町や、森林産業の創出に精力的に取り組む伊那市、商店街を中心に新しいまちづくりの動きが芽生えている辰野町など、多様な自治体が受け入れ先になっています。
長野県は南北に長く、地域ごとに気候も、文化も住民の人柄も異なるため、お試しを通じて自分の肌に合った地域を探せる点も、おためしナガノならではの魅力といえるでしょう。
長野県が推進する、信州ITバレー構想
なぜ長野県はここまで手厚いサポートをしてくれるのでしょうか。
背景には、県が推進する「信州ITバレー構想」があります。IT人材の育成や企業集積、そこから創出されるイノベーションを目的としたこの構想。2017年に474ヵ所であったIT事業所数を2025年までに700ヵ所にまで増やそうと様々な施策を打ち立てています。
おためしナガノ以外にも、県内にICT産業の事業所を新設する企業に対して、最大で3億円まで助成を行うという、全国トップの助成率を誇る、長野県 ICT 産業立地助成金を用意するなど積極的です。
おためしナガノなどを通じて、長野県に関わりを持ってくれるIT・クリエイティブ人材が長野県の他産業とも連携して、新たな事業が生まれる、そんな未来もありえるかもしれません。
おためしナガノの募集は5月20日(木)まで。詳細は下記サイトを参考にしてみてください。
(文・北埜航太)