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多様性

すぐそばにいる動物たちの営み。

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 カメラのついた三脚を抱えるツキノワグマが、ストロボに照らされ浮き彫りになった姿。これは本物なのか、着ぐるみなのか?本物だとしたら、こんな写真を撮る写真家がいるのだろうか。
 自然と人間をテーマに、自然界の報道写真家として数々の写真集、写真展にて発表し続けている長野県在住の写真家・宮崎学氏。半世紀近くにわたる活動の軌跡をたどる写真展『宮崎学 イマドキの野生動物』が『東京都写真美術館』にて開催される。宮崎は1978年に開催した初個展で、赤外線センサー付きのロボットカメラを動物たちの通り道に設置して撮影した『けもの道』を発表し、一躍注目を浴びた。2006年に撮影された、まるでツキノワグマがカメラで遊んでいるような姿が写し出された写真は、動物が三脚に触れると別の無人カメラのシャッターが切れる仕掛けにより生み出された、決定的瞬間をとらえた一枚だ。
 日々、SNSで流れてくる犬や猫のペット写真や、遠く離れた国の野生動物の映像を見慣れている私たちにとって、宮崎が写す動物は見たことのない姿ばかり。その写真は、自然豊かな森の奥で暮らす動物だけではなく、人家のそば、遊歩道、川辺や道路など、生活空間のすぐそばを行き来し、えさを求め、暮らしている動物たちも捉えられている。ときに美しく、ときにユニークで、ときに大胆不敵。見ていると次第に、どこか自分たち人間の姿を重ねてしまう写真も。一枚の写真としての迫力と共に、こんなところでこんな風に暮らしていたのかと、いままで知らなかった動物たちの営みを教えてくれる宮崎の写真。今回の展覧会ではどんな驚きが得られるか、楽しみだ。

『宮崎学 イマドキの野生動物』

『東京都写真美術館』にて8月24日(火)~10月31日(日)まで開催。※事前予約を推奨
text by Nahoko Ando
記事は雑誌ソトコト2021年9月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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