仕出し弁当の宅配・デリバリーを手がける『くるめし弁当』。ロケ弁に始まり、企業イベントへのケータリングサービス、コロナ禍においては売り上げ低迷に悩む個人経営のお弁当屋さんとのネットワークを構築するなど、時代のニーズに合わせたお弁当のデリバリーサービスを展開しています。この『くるめし弁当』が11月より、発酵クリエーターで料理研究家の園山真希絵さんとコラボしたメニューの提供を始めます。今回のコラボの経緯や両者の食についての視点などについて、『ソトコト』が取材しました。
「食」に対する姿勢が共鳴して生まれたコラボレーション。
今回、お話をうかがったのは園山さんと、『株式会社くるめし』代表取締役である石川聡さん。
兼ねてより「人もより良く発酵」をテーマに、大豆を加工する際に廃棄される「おから」などを活用した料理を考案し、環境にも身体にも優しい料理をつくり続けてきた園山さん。『くるめし弁当』も、仕入れや配送の方法を工夫し、フードロスの削減や環境負荷の低減に取り組んできました。今回、両者の食についての理念が共鳴し、このコラボレーションが生まれたとのことです。
石川さんは、「『くるめし弁当』では、コロナ禍の前から1回あたりの注文をお弁当30個などまとめて受けることで、細かく何度も配送することがないため、配送にかかるガソリンなどの資源・コストの消費を抑えるようにしてきました。また、注文内容もお届けの前日までに確定させて当日注文がなくし、お弁当屋さんが仕入れを行う際のフードロスを削減するように努めています」と言います。
コロナ禍でデリバリーサービスの需要は拡大しましたが『くるめし弁当』では主に法人の顧客へのサービスに特化することで上記のような資源やコスト、フードロスの削減がでてきているのだそうです。
また、それに加えて『くるめし弁当』の事業は、ただ環境に配慮するだけでありません。石川さんはこう言います。「配達機能を持たないお弁当屋さんや飲食店さんに対しては、配送のネットワークを構築するお手伝いもさせてもらっています。ただ店頭で販売して地元の方に食べてもらうだけでなくデリバリーもやってみたいけれど、その体制が整っていないというお弁当屋さんに代わって、注文を受けたり、デリバリーのスタッフを手配したりといったことも業務の一つです」
食べる人においしいお弁当を届けるだけでなく、その届け方や、また、つくり手に対してもより良い環境をつくれるようなシステムの開発を意識しているのだそうです。
そんな『くるめし弁当』と今回コラボする園山さん。自らも飲食店を経営している園山さんは、ご自身の料理がお弁当になることについてこう語ります。
「5年ほど前から、お店の常連さんやフードデリバリーの会社から、宅配弁当を出してほしいというお話をいただいていました。今回、オリジナルのブレンド米など、『地球と人に優しい』メニューを提供する準備が整ったことで『くるめし弁当』さんのメニューに加えていただくことにしました。この機会を一つの縁として、私のお弁当を食べてくださった方たちとも縁をつないでいければと思います」
『くるめし弁当』に加わるお弁当は、東京の「醗酵食作家 そのやま」と、大阪の「そのやました」の2店舗のもの。ただ食べるだけではなく、その日をより良く過ごせるように開運の願いが込められているほか、園山さんからのメッセージも付属しているのだそうです。
より良く、そして新しい体験を届けたい。お弁当をめぐる2人の想い。
園山さんは「醗酵食には味噌、みりん、お酒、漬物など、さまざまなローカル食材を使用したものがあります。全国には、まだ知られていない発酵食があるので、それを発掘していきたいですね。ただ、発酵食がいいものだということを形式ばって伝えるのではなく、あくまでおいしさ、楽しさ、美しさなどと合わせて広めていきたいです。今回の『くるめし』さんとのコラボがその一歩になればと思います」と、発酵クリエーターとしての展望を語ってくれました。
石川さんにも同じように今後の展望を聞いてみると、「『くるめし弁当』では『お客様の体験がどう変わるのか』をテーマにサービスの開発にあたっています。お弁当を食べるという行為一つを取っても、そのなかにはさまざまな体験を楽しんでもらえると思います。今後もそういったサービスをつくっていきたいと思っていて、“法人×食”の分野で働く人の食の探し方や楽しみ方の体験を変えるような事業を拡げていければと考えています」とのことでした。
発酵を通じて人もより良く、をテーマに掲げる園山さんと、サービスを通じて新しい体験を届けたいという石川さんの『くるめし』。二つの想いが寄り添って生まれた今回のお弁当、きっと、ただのご飯一食以上の体験ができることでしょう。