人を熱狂させる品評会の鳥たち。
ルーク・スティーヴンソンの写真集『AN INCOMPLETE DICTIONARY OF SHOW BIRDS VOL.2』が発売された。イギリス出身の作者が15年前から撮影を続けているショーバード(品評会に出る鳥)を写した写真集の第2弾だ。過去作に加えて未発表の115羽を掲載し、よく知られている鳥から珍しい鳥まで計175羽の鳥が登場する。作者が本作を撮り始めたきっかけは、セキセイインコを撮影してみたいという思いつきからだ。ショーバードを飼育しているコレクターのもとへ通うようになると、すぐに素晴らしい鳥たちの魅力にとりつかれていった。
本写真集の魅力は、なんといっても色とりどり、姿かたちの異なる鳥たちの愛らしさだろう。赤やオレンジ色のカナリアやコーラルピンクのお腹に黒と白の羽をまとったウソ、赤いくちばしにオレンジ色の頬と斑点模様の羽をもつキンカチョウなど、どの鳥にも見とれてしまう。それぞれの個性がより際立って見えるのは、止まり木で静止する姿をシンプルな背景で写すなど、撮影条件を均一にしているからだ。写真の下に記載された鳥の種類を確認しながら、品種の違う鳥を見比べたり、同種の鳥の類似点や相違点を見つけるのもおもしろい。被写体とバック紙の色も鳥ごとに違い、絶妙な組み合わせが選ばれている。
巻頭には品評会の歴史にまつわるテキストが収録されている。品種改良によってさまざまな種類が誕生したカナリアやセキセイインコ、愛好家たちのためにつくられた希少性のある交配種、羽や色、大きさ、形で決まる美の基準など……。鳥たちの気品あふれる美しさと、それに魅了された人たちの熱狂が伝わる写真集だ。
text by Nahoko Ando
記事は雑誌ソトコト2024年2月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。