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花火大会を超えた一大エンターテイメント「STAR ISLAND」に込めた想い-イベントのキーマン、小橋賢児さんの語る現在と未来のつながり

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夜空を彩る花火は、日本の風物詩であると同時に、私たちの心を癒し、また盛り上げてくれる一大イベントです。5月に福岡で、そして6月に東京のお台場で、2019年以来、実に5年ぶりとなる花火エンターテイメント「STAR ISLAND」が開催されます。「FUTURE HANABI ENTERTAINMENT」と銘打たれた本イベントは、ただ打ちあがる花火を見るだけのものではありません。壮大な美しさの裏にはストーリーがあり、メッセージが込められています。ここでは「STAR ISLAND」で総合演出を手がけるクリエイティブディレクターの小橋賢児さんにお話をうかがい、「STAR ISLAND」の魅力や、開催にかけた想いを聞きました。

目次

ただの花火大会ではない、「STAR ISLAND」とは?

ソトコト 「STAR ISLAND」は普通の花火大会ではないと聞きます。いったい、どういう催しなのでしょうか。簡単にその特徴を説明していただけますか。

小橋賢児さん(以下、小橋) 花火大会というと、一般的には「伝統」や「歴史」といった言葉がついてまわるものだと思います。ですが、いま伝統的、歴史的と呼ばれるものも、その発端となったものは何らかの革新的な要素があり、そこでの新しい体験が当時の人々を驚かせ、大いに沸かせたのではないでしょうか。だからこそ長く愛され、今日まで続いているわけです。「STAR ISLAND」は、ただ花火大会という古くから続いている行事を季節の風物詩として残そうというものではなく、伝統行事をこの時代ならではの才能やテクノロジーと組み合わせ、過去と現在を紡いで未来に継承していこうというものです。

ソトコト 「STAR ISLAND」の革新的な部分とは、どういうものになりますか。

小橋 旧来の花火大会というと、花火の美しさのみを見せるものが大半でした。花火師さんの技術の結晶である花火、それが夜空に打ち上げられるのを見る、もちろんそこには壮大な美しさがありますが、言ってしまえば「それだけ」でもあったんです。

「STAR ISLAND」では、花火にストーリーを持たせることを意識しています。「ああ、キレイだな」で終わるのではなく、そこに物語性を持たせています。また、それを彩るためにたとえば音響であったり、付随するパフォーマンスであったり、そういうものを付加することで、没入感のある、いわゆるイマーシブな体験をつくり出しています。そこでは観客の方もLEDバンドをつけていただいて、会場を照らす光の一部として参加してもらいます。

過去に開催された「STAR ISLAND」の様子。

また、福岡公演ではすでに決まっていて、東京公演でもやりたいと計画しているのが、1,000機のドローンを使った空中でのパフォーマンスです。こうした陸から参加される観客の方々、開催地である海、そして演出が輝く空、さらにパフォーマーたちが操る火と水が一体となっての花火エンターテイメントであることが「STAR ISLAND」の革新的なところだと考えています。

あらゆるものがつながっている「愛」を体感するパラレルワールドに

ソトコト お話をうかがっていて、ただ伝統を守るだけでなく現代とつなげる、ただキレイと思わせるだけでなくそこに物語性を感じてもらうなど、花火大会をより立体的なエンターテイメントにするのがコンセプトなのかなと感じます。

小橋 そうですね。日本人は、古来より木や石にも魂が宿っているというアニミズム的な考えを持ち、自身の生なども含めた「循環」というものを自然に受け入れてきました。そのなかでは、たとえば過去と未来は離れているものではなく、ある意味で渾然一体となって溶けあっているとも言えます。「STAR ISLAND」を通じて、過去は過去、未来は未来というように切り離して考えるのではなく、物事はずっとつながっているし、私たちも変化しながらこの世界とつながり続けている、重なり合っている、そのことをあらためて感じてもらいたいと思っています。

私がこの「STAR ISLAND」のプロジェクトを立ち上げたとき、心のどこかでモチーフになっていた1冊の本があります。『アミ 小さな宇宙人』という本です。1980年代に出版されたもので、日本でも2000年にさくらももこさんの挿絵で新装版が出され、ベストセラーとなった作品なのでご存じの方もいらっしゃるかもしれません。

この本では、主人公のペドロが、宇宙人のアミとともに宇宙をめぐるなかで、宇宙の根底には「愛」があることを知り、まだお互いを信じられずにいがみあっている地球で、愛を実践していくという物語が描かれます。

「STAR ISLAND」では、非日常な空間、体験を通じて、一種のパラレルワールドを描ければいいなと思っています。『アミ 小さな宇宙人』のなかでは、宇宙には「愛」が満ちていますが、残念ながら地球に住む人々は、お互いを信じられず、いがみあうことも多い状態です。これは今の現実の地球にも通じるものがあるのではないでしょうか。そのなかで、「STAR ISLAND」に参加している間だけは今の地球を離れ、愛に触れ、そのことを感じられる時間にしたいという想いがあります。

ソトコト 「STAR ISLAND」は2019年以来、久しぶりの日本開催となりますが、その間は海外での公演をされてきました。世界を巡り、見てきたからこそのコンセプトだと感じます。

俳優をやめ、世界へ。小橋賢児さんの軌跡

ソトコト 続いて、小橋さん自身のお話もさらにうかがっていきたいと思います。小橋さんは「STAT ISLAND」はじめ、数多くのイベントを手がけられていますが、以前はドラマや映画に出演する俳優として活躍されていました。この転身にはどのような経緯があったのでしょうか。

小橋賢児さん(以下、小橋) 私は8歳から27歳まで俳優として活動していました。もしかしたらNHKの連続テレビ小説「ちゅらさん」や映画「スワロウテイル」などで私を知ってくださっている方もいらっしゃるかもしれません。ですが、俳優として活動していくなかで、自分がどんどん悪い意味でコンフォートゾーン(快適な場所、の意)にいることに気づいたんです。自分の居心地のいい場所を守るために、殻に閉じこもり、嘘をついているような。そのことが怖くなって、俳優業を手放して世界に飛び出してみることにしました。

そのなかで出会ったのは世界各地のフェスや、お祭りの文化でした。

フェスにはたくさんの人が来ます。その境遇もさまざまです。フェスを心待ちにして来た人もいますし、たとえばフェスの前にリストラにあったとか、失恋したとかで、すがるような気持ちでフェスに来た人もいます。いろいろな人たちの感情が混ざり合い、それが音楽やダンスと合わさることで、まだ見ぬ自分に出会えたり、絶望のなかに救いを見出すことができたり、フェスとはそういったセレンディピティな場なんだと気づかされました。

そんなフェス文化に感動して、その想いを胸に日本に戻ってきたのですが、その時点ではそれを活かすこともできず、仕事も何もうまくいきませんでした。体調も崩してしまい、知人を頼って茅ヶ崎で療養をする時期が続きました。そのなかで30歳の誕生日を迎えることになったのですが、そこで一つ思い立ちました。このバースデーを祝ってもらうのではなく、逆に私が人をもてなす場にしよう、と。

ソトコト バースデーパーティといえば誕生日の人が主役ですが、逆に自分がホストになろうと考えたのですね。

小橋 はい。それで、近くのホテルにあるプール付きの会場を借りたのですが、あとで料金の見積もりを見たらとんでもない金額で(笑)、当時の自分の経済状況などからはただのパーティに使えるような代物ではなかったんです。じゃあ、これはもうしっかり告知をしたり、会場のレイアウトなども洗練したりしなくてはならないと、イベントとしてきちんと運営することにしたんですね。これがうまくいって、心の状態も上向き、多くの人と新しい関係を結ぶことができました。

これをきっかけに、イベントの運営に携わるようになりました。少しずつ、企業からお声をかけていただけるようになり、ダンスミュージックのフェス「ULTRA JAPAN」や「東京モーターショー」などに関わらせていただいています。

ソトコト 2021年の東京パラリンピックの閉会式のステージや、2025年の大阪万博にも参画されていますが、始まりはご自身のバースデーパーティだったのですね。

小橋 世界で見たフェスの感動と、自分がどん底にいたときの30歳のバースデーパーティ。この2つが今の自分の根底にあり、非日常というイベントの持つ力、平場では得られない気づきの大切さ、そして魅力を伝えたいというのが原動力になっていますね。

「STAR ISLAND」が見せる未来は、すでに私たちの手の中に

ソトコト 日本では5年ぶりとなる「STAR ISLAND」ですが、この間シンガポールをはじめ世界で「STAR ISLAND」は公演されてきました。そのなかで「STAR ISLAND」が変わったこと、そして変わらないことについてお話しいただけますか。

小橋 「STAR ISLAND」はまずフェスとして、国や文化の垣根を越えて、その時代ごとのメッセージを伝えるものです。なので花火という日本文化を広めよう、後世に残そうといった独りよがりな視点ではいけないと考えています。この想いは世界を巡ってより強くなりました。世界の人たちに見せてきた「STAR ISLAND」の感動を、もう一度日本の方にも味わっていただければと考えています。

その一方で、5年という時間は私たちだけでなく、観客としていらっしゃる皆さんにも長い時間だったと思います。2019年の日本公演を見てくださった方も、今では大きく生活環境が変わったという方も多いのではないでしょうか。だから、もう一度初心に返ったつもりで今回の「STAR ISLAND」に立ち向かう必要があると思っています。2019年の続きではなくて、もう一度「STAR ISLAND」を初めから作り上げる気持ちでいます。



ソトコト 「STAR ISLAND」や、大阪万博にはともに「未来」というキーワードが定められています。最後に小橋さんの見せる未来についてお話をいただいて、読者の方へのメッセージとしていただけますでしょうか。

小橋 未来と言うと、一般的には時間的な未来を想像される方がほとんどだと思います。ただ、私は未来が必ずしも時間的に先にあるわけではなく、実は未来はもう私たちのすぐそばにあるものだと考えています。では、現在と未来を隔てているものは何かというと、それは創造の有無です。

つまり、未来とはいま想像(イマジネーション)でしかないものが、創造(クリエイション)された状態ではないかと。今「無い」ものが「有る」ようになる、それが未来に進むということだと思っています。それは、ただ技術的な話ではなく、「気づき」の話でもあります。これまで気づけていなかったことに気づけた、自分のなかに新しい感情が芽生えた。そういうことも「創造」であり、未来へと進んだ証明です。ないものねだりではなく、そこに何かがあることを知る、あるいは見つける。それが人生を創造することであり、未来に踏み出す一歩となるのではないかと。「STAR ISLAND」はそういった、すでにもう私たちの手の中にある未来に気づくきっかけとなるイベントでありたいと思います。

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「STAR ISLAND」は、未来は遠く離れているのではなく、すぐそばにあることに気づく場だと、小橋賢児さんは語ってくれた。

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