長野県在住のラーメンライター、たこにわです。ラーメン食べ歩きは40年以上、北は旭川、東は根室、西は長崎、南は石垣島まで訪麺しています。47都道府県制覇しました。僕は、ローカル色があり地味ながら頑張っているお店をみなさんにご紹介します。
長野ではどんな味でも楽しめる
もちろん、地域によっては子どもから大人まで愛されるソウルフード的なラーメンはたくさん存在する。
しかし、札幌だとか、喜多方、白河、佐野、横浜家系、富山ブラック、飛騨高山、和歌山、博多とんこつといった、「地名」がつくラーメンとしての地域ブランドになっているものは長野にはない。
逆に言えば、長野ではどんな味でも楽しめるということだ。
醤油、味噌、塩、豚骨、鶏白湯、さらにはつけ麺が多くのお店で楽しめる。
しかし、何かひとつふたつ足りないような気がする…………..。
そうだ!煮干し専門のラーメン店が少ないのではないか。
今回ご紹介するお店は、海なし県長野に本格的な濃厚煮干しラーメンを提供して5年になる
「麺屋 晴(はれ)」である。
なぜ煮干し?
実は、筆者はこのお店のファンで、2017年4月の開店以来、6,7回は食べに来ている。
改めて取材となると緊張してしまった。
店主は千葉県柏市のご出身。
以前は、首都圏を中心にチェーン展開する有名な味噌ラーメン専門店で10年ほどラーメン作りを経験。
奥様が長野市ということで長野に縁があり、長野で独立してラーメン店を開きたいと思ったそうだ。
長野に来て感じたのは、「あらゆるジャンルの味がある中で煮干しだけが足りない」。
「それなら本格的な煮干し専門店にしよう」と店主。
今回、厨房の中を見せていただき、さらに煮干しについてもご教示いただいた。
スープづくりには大量の煮干しを使っているのだ。
煮干しは2種類の「かたくちイワシ」を使用。左が千葉県九十九里産だ。
いわゆる背黒と呼ばれるもので、スープにパンチ力、煮干し独特の苦味やえぐみをを与えるという。
右が瀬戸内海産のもの。
こちらは、白口で甘みや脂を乗せる効果がある。
この2つをうまく使い分けながら極上かつ濃厚な煮干しスープを作るのだ。
ジャズのかかるスタイリッシュなお店
注文したのは、おススメの「らーめん」。煮干しの濃さを選択できるので、
煮干し濃いめでお願いした。
スタイリッシュなカウンターやテーブル、椅子、そして清潔な空間。
ジャズサウンドも流れている。
ラーメン店とは思えないおしゃれな雰囲気で、心が落ち着く。
苦味と甘さが調和した濃厚スープ
どんぶりを見渡す限り、煮干しの濃厚さがわかる。
ごくりと生唾が出てきた。
苦味とえぐみが同時に来る。そして、なぜだか不思議な甘みもやってきた。
どろっとした感じであるのに、繊細な味に味覚が大いに刺激される。
その刺激は一気に脳にまで届いた。
レモンと桜海老の酢と、煮干しの酢。
どちらもお好みで味変ができる。
ちょっと加えるだけで、さわやかな味も楽しめる。
同製麺所から仕入れているのは「長野市ではうちだけなんですよ」と胸を張る店主。
パツパツした食感が特徴で煮干しスープとの相性もいい。
不思議なものだが、何だか麺が生きているように見える。
この麺が筆者の胃袋に流れ込んで行ったのか。
煮干しの苦手な人がリピート
「煮干しという長野にはないジャンルに挑戦してよかった」という。
それは、煮干しが苦手だったという方がリピートしてくれたからだそうだ。
ダシの主を煮干しとするラーメンと言えば、青森や秋田など東北が有名だ。
長野ではもともと煮干しスープの文化はなかった。
ある意味、「麺屋 晴」が、長野に煮干しの伊吹を与えたのではないだろうか。
店名の「晴」(はれ)は、「気分がいつも良くなればと考えた」。
まさに、お話されているときの笑顔は、5年間の充実感を表しているようだった。
そして、「もっと煮干しを極めたい」と抱負を語った。
*店舗情報・メニュー内容は取材時点の内容でございます。