「えっ、牛なのに角がないの?」そんな驚きから始まる、あまりにも贅沢で希少なストーリー。山口県・阿武町に、全国でわずか200頭ほどしか残っていない「幻の和牛」が存在することをご存知でしょうか。私たちが普段口にする和牛のわずか0.01%。消滅の危機を乗り越え、今、ミシュラン星付きシェフをも虜にしているその肉質と、人口3000人の町が仕掛ける“逆襲の地域づくり”の最前線を追いました。
全和牛の0.01%!山口県にしかいない「無角和種」の正体
日本に存在する和牛4品種のうち、最も希少とされるのが「無角和種(むかくわしゅ)」です。かつては1万頭近く飼育されていましたが、時代の波に押され、現在は全国で約200頭にまで減少。

その約8割にあたる160頭を、山口県阿武町の「無角和種振興公社」が大切に育てています。名前の通り角がないこの牛は、母乳をたっぷり飲み、地元の草を食べて健康的に育ちます。その肉質は、霜降り至上主義とは一線を画す、ピュアな旨味が凝縮された“究極の赤身”です。
ミシュラン一つ星が認めた!銀座で味わう“産地の情景”
この希少な味に惚れ込んだのが、東京・銀座のミシュラン一つ星レストラン『TROIS VISAGES(トワヴィサージュ)』。山口県出身の國長亮平シェフが手がける同店では、無角和種をメインに据えた特別コースを展開しています。

都内でこの味に出会える場所は、指で数えるほど。國長シェフは、単に「美味しい肉」として出すのではなく、阿武町の風土や生産者の想いまでを一皿に翻訳します。「土地が牛を育て、牛が土地を育てる」という循環の物語を、食を通じて体験できるのです。

人口3000人の挑戦!「名産地化プロジェクト」の野望
なぜ、阿武町はこれほどまでに無角和種にこだわるのでしょうか。そこには、地域プロジェクトマネージャー・渡邊雅之氏を中心とした、町を挙げたブランディング戦略があります。

2026年1月には、銀座でメディア向けの「食べる会」を開催予定。肉と向き合い続けてきた渡邊氏や國長シェフが、無角和種の持つ可能性を熱く語ります。「新しいものさしをつくる」というモットーのもと、消えかけていた地域の宝を世界に誇る名産品へと昇華させる挑戦は、いま始まったばかりです。


















