子どもの保育園で出されている給食の献立表を見ていると、「テンペ入りから揚げ」というメニューが気になった。「テンペ」とは一体何だろう?岡山に住んで2年半、これはまだ未体験の食材である。調べてみると、テンペはインドネシア生まれの発酵食品で、日本では岡山で多く作られているようだ。今回はテンペを使った簡単レシピを紹介するとともに、岡山産テンペを紐解く。
通称“畑のお肉”。大豆を使った無塩発酵食品
テンペはインドネシア発祥の伝統食品で、大豆を煮たあとハイビスカスなどの葉に付着した“テンペ菌”(クモノスカビ)で発酵させたもの。大豆の発酵食品というと納豆を思い浮かべるが、糸を引いたりあの独特のにおいはなく、形もケーキのように固まっている。生の発酵食品なので常温保存はNG、冷凍庫で保存して調理の前に解凍して使う。
植物性たんぱく質やリノール酸、ビタミンB群、食物繊維、レシチンやサポニン、イソフラボンなど豊富な栄養素を含み、なんとも頼もしい食材なのだ。
ヴィーガン食がトレンドの昨今はさまざまな代替食品が登場しているが、肉の代わりになるものとしてテンペも注目されており、これからますます需要が高まっていくかもしれない。
テンペで作る、簡単ドライカレーのレシピ
岡山でテンペを作っている生産グループのひとつ、「JA岡山女性部 今っ娘会(いまっこかい)」では、テンペの調理法やさまざまな応用料理も提案している。今回はその中から「テンペ入りトロピカルドライカレー」のレシピを参考に、実際に作ってみた。
テンペ入りトロピカルドライカレー
●材料と分量(4人分)
テンペ 400g
玉葱(みじん切り)120g
ニンニク、生姜(みじん切り)各10g
トマトの水煮 100g
ピーマン(みじん切り) 30g
赤、黄パプリカ(みじん切り) 各1/2個
ご飯 茶碗4杯分(A)
カレー粉 大さじ2
塩 小さじ2
水 2カップ
サラダ油 大さじ2
バター 大さじ1
(JA岡山ホームページより)
●作り方
①フライパンにサラダ油とバターを熱し、ニンニク、生姜、ピーマン、玉葱を弱火で、透き通るまで炒める。更にカレー粉を加え炒めてゆく。
②①に細かく刻んだテンペを2〜3回に分けて炒める。
③刻んだトマトの水煮を汁ごと②の中に入れ、(A)の調味料を加えて混ぜながら弱火で約20分煮る。
④③の上にサットボイルしておいた赤、黄パプリカを加え、ひと混ぜする。
⑤器にご飯を盛り、④をかける。
(JA岡山ホームページより)
【実食】
テンペの食感がホクホクしていて、肉はなくともかなり食べ応えがあり、しっかり満足感が得られる。スパイシーさもあるが、たっぷり使ったテンペの甘みでまろやかになっていて食べやすい。今回はレシピ通りに作ったが、カレーの味をもっとスパイシーにしたり、まろやかにしたりと、いろいろな調味料を使って調整しても良さそう。
ちなみに筆者の子どもはまだ小さいので豆乳と無糖ヨーグルト、ケチャップを混ぜて味をさらにまろやかにしたら、どんどんスプーンが進んだ。
岡山のテンペ作りはいつまったのか
岡山のテンペ作りはいつ始まったのか
今回は「JA岡山女性部 今っ娘会(いまっこかい)」のテンペを使用したが、岡山では各地にテンペの生産グループが点在する。そもそもいつ岡山でテンペ作りが始まったのか。
県内の中小企業とともにテンペを使った加工食品を開発してきた、「岡山県工業技術センター」のホームページ掲載資料によると、
岡山県では、1980年代から活発に研究開発 ・商品化が行われ、岡山県のテンペ生産量は全国の約八割を占めるまでになりました。2000年代に入ると、健康ブームでテンペの大豆イソフラボンやγ-アミノ酪酸(GABA)等の健康機能性が注目され、現在では全国的にテンペが量産されています。
(岡山県工業技術センター技術情報・No.485 より)
とある。なんと30年以上も前からテンペに注目して生産・開発してきた岡山県。しかもシェア8割とは驚きだ。現在のヴィーガン・ブームを予見していたかのようで、先見の明があるといえる。
岡山ではスーパーにも並ぶテンペ
岡山ではJAの直売所のほかスーパーなどでも手に入り、給食にも出されるほど身近なテンペ。味噌やコロッケ、クッキーなどテンペを使った加工品も各地で作られ販売されている。
またテンペを使った料理は、今回紹介したドライカレー以外にもいろいろあり、普段の食生活に気軽に取り入れられる。
ちょっとハードルが高そうなイメージがあったヴィーガンフード。今は完全菜食主義の人だけでなく、環境問題を考えたり、ダイエットがきっかけで始める人も多いそうだ。時々テンペを使ったメニューを食卓に加えてみることから、トライしてみても良いかもしれない。