コンクリート会社がつくる濃厚トマトジュース「スパルタ生まれの笑ちゃんのジュース」

コンクリート会社がつくる濃厚トマトジュース「スパルタ生まれの笑ちゃんのジュース」

外出や遠出が難しい今だからこそ、ソトコトオンラインでは「go toキャンペーン」ではなく「come toキャンペーン」を推進している。遠出をしなくても気になる地域・好きな地域との関係を繋ぐ手段の一つとして、全国各地のローカルライターがその地域のもの・ことを取り寄せ、魅力を紹介している。今回は島根県から、コンクリート会社が作っている濃厚トマトジュースを紹介したい。鮮やかな赤色から強い生命力を感じるこのジュースは、私自身が初めておいしいと思ったトマトジュースだ。

島根にある「東京から一番遠いまち」


トマトジュース
(c)Naoko Yamakawa

幼い頃にトマトジュースを飲んだ時、トマト自体は好きだったが、「うーん…」と微妙な感想を持ったことを覚えている。そんなこともあって初めて出会った時は少し迷ったが、インパクトの強いその名前に興味をひかれ、試しに購入してみたのが今回紹介する「スパルタ生まれの笑ちゃんのジュース」だ。


江津市
(写真提供:しまね観光ナビ)

このトマトジュースが作られているのは、島根県江津市。高校の教科書で「東京から一番遠いまち」として取り上げられたこともある、島根県西部(石見地方)のまちだ。中国地方最大の大河・江の川の河口に位置し、日本三大瓦の一つ「石州瓦」の産地としても知られている。赤茶色の石州瓦は石見地方の家屋にはよく使われており、屋根の色と日本海の青色のコントラストを目にすると「帰ってきたなぁ」と感じさせてくれる風景の一つだ。


トマトが苦手な生産者も食べられる


トマトジュース
(c)Naoko Yamakawa

このトマトジュースは、飲んでみるとまずその濃さに驚く。トマトのみを使用した100%ジュースで、食塩も不使用。そのためジュース自体はとろみがあり、瓶越しでもその濃厚さが伝わる。それなのに後味はスッキリしているという、初めての体験だった。
ジュースの味は酸味が強い中にも甘みがあり、例えるならブラッドオレンジジュースにも似ているなと感じた。暑い夏の日のお風呂上がりに、しっかり冷やして飲むのもいいなぁ…と妄想が膨らむ。


スパルタ生まれの笑ちゃん
ジュースにも使われている「スパルタ生まれの笑ちゃんトマト」は島根県内だけでなく広島や大阪でも販売されている。今後は関東方面での販売も計画中(写真提供:江津コンクリート工業株式会社)

このジュースで使われているトマトは、通常糖度は4~5度と言われる中で、平均で糖度8度以上、時には15度にも達すると言う。
生産者である江津コンクリート株式会社 アグリプラント甲斐の木 サービス管理責任者の茅島辰一さんも「私もトマトの独特な酸味が苦手だったけど、うちのトマトなら食べられるんです」と言っていた。実際にお客様からも「今まで食べたことがないトマト」「とても甘いし、旨味を感じる」などの声が届いているそうだ。



コンクリート会社がトマト栽培を始めた理由とスパルタ栽培の秘密

コンクリート会社がトマト栽培を始めたきっかけは?


写真提供:江津コンクリート工業株式会社
(写真提供:江津コンクリート工業株式会社)

トマトジュースを作っている江津コンクリート工業株式会社は、もともとはコンクリート製品を製造している会社だ。約7年前に新たに始めたのがトマト栽培事業で、そのきっかけを聞いてみた。


茅島辰一さん(以下茅島さん) 当社では創業時から障害者の方が働いていましたが、本格的に就労支援として取り組み始めたのは平成23年からです。当社で働く障害者の中には身寄りがない方も多くいたので、会社で寮を用意し、生活支援も当時から行っていました。
ただいくつか課題もあり、その一つが障害者の高齢化です。コンクリート製品は重量物なので、仕事はしたいが体力的に続かないという課題がありました。また公共事業も減少していたこともあり、安定した売り上げを上げられる新しい仕事を社長は探していたようです。


特殊フィルム
医療現場でも使われている特殊なフィルムを使ったトマト栽培の様子 (写真提供:江津コンクリート工業株式会社)

その課題を解決する新しい仕事は、なぜ製造業ではなく農業だったのだろうか?


茅島さん 新規事業を探す中で、食べ物に関する仕事なら需要はなくならないだろうという考えが社長にはあったようです。しかし普通に農産物を売っても安定した売り上げにはなりづらいし、ましてや人を雇用してまで収益を上げるのは並大抵のことではありません。そんな時にさまざまなセミナーに参加する中で、偶然医療現場でも使われている特殊なフィルムを使ったトマト栽培に出会いました。そのトマトを食べてみると、普通とは違って味に特徴のある甘いトマトで、これなら農業に新規参入する当社でも利益が上がるのではと思い、トマト栽培が始まりました。


「スパルタ栽培」とは?


トマトジュース
(c)Naoko Yamakawa

実際に始めてみると、栽培の手間や管理が意外と難しかったと茅島さんは言う。それでも初年度からその反響は大きく、近隣のスーパーでは「すごくおいしい」と全て買取になり、また栽培ハウスも毎年増加。その結果、今では15棟(面積にすると約5000平米)、年間約30トンも収穫される人気商品へと成長していった。


茅島さん トマトにはあまり水をあげないことで甘みや旨味が増していく特性があると聞いていたので、水や養分をあまりあげない、厳しい環境で育て上げたトマトという意味で「スパルタ栽培」と名付けました。ただ栽培システムとして特殊なフィルムを導入しただけではおいしいトマトはできず、生育環境をかなり細かく、神経質に管理した結果があの甘さや旨味だと思っています。


「極限の状態で管理をする」と一言で言っても、実際には1日の中でも天候は変わる。その時々に合わせて機械で水分、温度、光量などを調整する一方で、一株ごとの状態の違いは人の目で確認しながら肥料の量を調整しているのだそう。厳しくしすぎると枯れてしまうし、甘やかすと良いトマトができないという、絶妙なバランスを丁寧に管理しているのだ。


消費者も労働者も「笑ちゃん」に


栽培風景
(写真提供:江津コンクリート工業株式会社)

この「スパルタ栽培」は障害者の方々によって成り立っているが、彼らも一生懸命作った分「おいしい」という評価が励みになっている。また茅島さんは「ある程度の年齢になっても働き続けられる安心感を持っている方もいらっしゃる」と言う。そんな障害者の方々への思いは、実はトマトやジュースの商品名にも込められている。


スパルタ生まれの笑ちゃんのジュース
スパルタ生まれの笑ちゃんのジュース・500ml瓶 一本1620円(税込) (c)Naoko Yamakawa

茅島さん うちは障害を持っている方がメインの事業所です。そういう方々が一生懸命作り上げたトマトやジュースには「笑ちゃん」という名前がついていますが、これは消費者の方も笑顔になってほしいし、障害を持っている方にも笑顔になってほしいと思って名付けています。トマトを通じて、皆さんが笑顔になってくれたらうれしいですね。


栽培手法こそ「スパルタ」ではあるが、手間暇かけて愛情たっぷりに育てられたトマトを使ったトマトジュース。その“愛の鞭”をぜひ味わってみてほしい。


 


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アグリプラント甲斐の木 オンラインショップ


●取材協力
江津コンクリート工業株式会社
アグリプラント甲斐の木
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