【ソトコト×日本ワーケーション協会連載】ソトコトと日本ワーケーション協会がコラボして、各分野、各地域で活躍するワーケーション推進者をゲストに迎えて、毎回対談。ワーケーションにおける現在地や未来の展望を語ります。
第1回目(最終まとめ)。前回の第1回目(後編)に続いて、今回は第1回目のゲスト、親子ワーケーションを推進するソトエ代表の児玉真悠子さんの最終まとめ。最終まとめは、親子ワーケーションの未来と、各自治体が取り組み始めている「ラーケーション」について児玉さんが語ります。
親子ワーケーションの未来を作るには、ラーケーションの普及が必要
ソトコト ここまで親子ワーケーションをやるようになったきっかけ、サイト立ち上げから、企画作り、事例までお話をお聞きしてきました。今回は親子ワーケーションが目指す未来や広がりについてお聞きしたいと思います。
児玉 まずは広がりから話をしますと、地方自治体の一部が親子ワーケーションを推進し始めています。子どもの「ラーケーション」も推進され始めています。
ソトコト 「ラーケーション」の言葉は最近、よく耳にします。ワーケーションがワーク(仕事)×バケーション(休み)に対して、ラーケーションはラーニング(学習)を組み合わせたもの…これは、親のワーケーションに対して、子どもも平日にいつもの学校に通うのでなく、地域での学びや体験活動…つまり学校外の地域自主学習のススメですよね!
児玉 はい! 一部自治体では、このラーケーションを自主学習として、学校に登校しなくても欠席扱いにしないケースも出てきています。
ソトコト ネットで検索すると、愛知県では、名古屋市を除く公立の小・中・高校、特別支援学校で「ラーケーションの日」が導入されているようで、年間3日まで取得可能とのこと。大分県別府市や栃木県日光市、沖縄県座間味村など、いろいろな地域でラーケーションの取り組みが始まっているようです。
児玉 子どもの頃は、どうしても世界が狭くなりがちです。自分が生まれ育った場所や、親の職業に影響され、生活環境が決まってしまう。でも、世の中にはいろんな職業があるし、自分が住む場所も自分で選んでもいいと思うんです。ラーケーションの普及は、子どもの世界を広げるきっかけにもなると思います。
ソトコト ラーケーションの普及には、親子ワーケーションの連携が必要ですか?
児玉 ラーケーションの普及のカギは、親の休みやワーケーションの取り方にかかっています。世間的には有給休暇の消化率アップを促されている一方で、会社ではまだまだ休みづらい風習も残っています。親子ワーケーションを推進する中でいろいろとリサーチや取材をしていると、「ワーケーションの制度があっても取りづらい…」といった声もよく聞きます。しかし、育児休暇と同様に、親子ワーケーションとなると、「子どものために」という大義名分があるから申請しやすくなるそうです。

例えば、秋に山に行けば、栗拾いに行かずとも
栗の実がどうなっているか知ることができる。
自然は、生きた学びの宝庫です。
ソトコト 子どもの運動会や参観日があると休みは取りやすくなるのと、似ているのかもしれませんね。
児玉 休むのに大義名分が必要って、いかにも日本らしいですが、この休みづらい風潮は一朝一夕では変わりません。だからこそ、旅先に仕事を持っていくこと…つまりワーケーションが大切で、さらに大人が子どもを外に連れ出しやすくなる親子ワーケーションが必要だと思います。
共働きが多数な世の中だからこそ、子連れ出張がしやすくなればいいのに…
ソトコト ラーケーションを推進することは、親子ワーケーションの推進に繋がりますね! 日本全体がもっと休みを取りやすくなればいいのに…。
児玉 あと親子ワーケーションの普及と共に、子連れ出張がしやすくなる社会になって欲しいと思います。共働きが多数を占めるようになっても、未だに母親が育児の主担当を担うことが多いのも現実です。母になる前までは日本中を飛び回っていたほど、旅好き、移動好きな私自身も上の子が7歳になるまで、宿泊が伴う仕事は断っていました。北海道にも日帰りで行ったりしていました…。

児玉さんのワーケーションによく同行していたそう。
中学になってからは親と行動することが減っていくので、
子供が小さいうちは少しでも
親子で過ごす時間を取りたいのは、どの親も共通。
ソトコト 確かに! 子連れ出張がしやすくなれば、必然的に親子ワーケーションの裾野は広がりますね!
児玉 例えば、他の地域に住んでいる子どもでも預かってくれるような仕組みが日本の各地域にできたら、出張先に子どもを連れていけます。そうすれば、お留守番側の負担も減らせます。地域の出張に同行する子どもは、地域の新たな学びや刺激的な体験もできます。
ソトコト どこに出張しても、出張しながら子育てできたら素晴らしいですね!
関係人口と親子ワーケーションの密接な関係
児玉 今回の対談でも長崎県五島市での親子ワーケーションの話をしましたが、五島市に子どもと1週間滞在した時に驚いたのは、子ども同士の仲良くなるスピードの速さ! 大人が仲良くなるには背景や事情を知って、ある程度の時間がかかります。しかし、子どもはそんなの一瞬で飛び越え、秒で仲良くなります。地方創生に不可欠な関係人口作りは、子どもの頃の親子ワーケーション体験、ラーケーション体験が必要かと思います。私の子どもも長崎県五島市の「1週間の転校生体験」で、五島市が第2の故郷のようになっています。

徳島県の吉野川でカヌー体験した子どもたち。
この風景が忘れられなくてその後、
家族で来訪した人もいるのだそう。
児玉 小さい頃に過ごした場所には、大きな愛着がありますよね。将来の住処や二拠点先、ワーケーション先として選んでもらえるには、子どもの頃の原体験が大きなファクターになると思います。つまり関係人口作りは、子どもの頃の体験が重要。
ソトコト そうですよね! 今の関係人口の論理が大人の論理なんですよね。関係人口で大切なのは、これからの未来ある若者たちにどれだけ地域に興味を持ってもらえるか。子どもの頃の体験は、大人になっても大きく影響してきますよね…。だから親子ワーケーションやラーケーションは、関係人口の未来に必要かと思います。
前編
仕事×バケーションだけでない、親子ワーケーションという概念がステキすぎる!【ローカル×ワーケーション①】
中編
もっと親子ワーケーションを推進するために、情報サイトを立ち上げるまでの苦労とは⁉【ローカル×ワーケーション②】
後編
親子ワーケーションの企画をどんどん増やして輪を広げていく…そのために大切なこと【ローカル×ワーケーション③】
【児玉真悠子プロフィール】
株式会社ソトエ代表取締役。2004年に慶應義塾大学を卒業後、ダイヤモンド社等での編集経験を経て2014年に独立。以降、子どもの長期休暇中に自身の仕事を旅先に持っていく生活へ。現在、編集の仕事の他「親子deワーケーション」の運営を通じて、仕事と子育てをどちらも大切にできる暮らし方を普及中。
【一般社団法人日本ワーケーション協会プロフィール】
ワーケーションを通した「多様性が許容される社会実現」を目指し、2020年7月に発足。300を超える会員(自治体・企業・個人)とともに、様々な取り組みを行っています。