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移住・定住

家族3人で瀬戸内へ移住。40代でクラフトビール事業を始める南雲さんの挑戦

斉藤恵美利

斉藤恵美利

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穏やかで美しい海がすぐそばにあり、移住先として人気の瀬戸内の島々。その中でもまだあまり知られていない、愛媛県松山市の沖合にある興居島(ごごしま)へ移住した南雲信希さん。その島を選んだ理由や、新規事業への挑戦についてお話を伺った。

目次

瀬戸内の興居島(ごごしま)へ移住した南雲さん家族

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南雲さん夫妻と娘さん
2022年1月、神奈川県横浜市から愛媛県松山市の興居島(ごごしま)へ家族と移住した南雲信希さん。
現在は島暮らしを楽しみながら、クラフトビールの醸造所と、できたてのビールと軽食を楽しめるお店を作るための準備を進めている。
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事業予定地である古民家
移住前は神奈川県横浜市にある飲食店「七草」で多くの人に愛されるお店を経営していた南雲さんだが、なぜ経営していたお店を手放して興居島へ移住しようと思ったのか。なぜクラフトビールの醸造所を始めようと思ったのか。
伺ったお話は、何かにチャレンジしたいと思っている人にとって、新しい一歩を踏み出すきっかけをくれるものだった。

コロナ渦で考えた、“家族の時間”と“ビジネスの転換”

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移住を考える大きなきっかけは、新型コロナウイルスだったという。
南雲さん「コロナでお店を必然的に閉めなければいけない時期もあり、コロナのリスクを避けたビジネスをやる必要があると考えました。飲食店を構えてお客さんが来るのを待っているだけでは、リスクが高いと感じたんです」
そこで販売場所を限定しないクラフトビール醸造の開業を決意した。
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さらに休業中に家族と過ごす時間が増えたことで、その時間の大切さを改めて感じたのだそう。飲食店をやっていた時は朝から晩まで忙しく、家族との時間も限られていたため、ライフスタイルを変えたいと思うようになっていった。
そして以前から憧れていた、田舎での穏やかな暮らしを考えるように。
幼少期時代から瀬戸内にある親戚の家によく遊びに行っており、「瀬戸内は第二の故郷」だと話す南雲さん。島暮らしの心地よさ、瀬戸内の風景が原体験として残っていたことで、瀬戸内での島暮らしを決めた。

興居島(ごごしま)を選んだのは「余白と可能性を感じたから」

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瀬戸内の穏やかな海
移住先を選ぶポイントといえば、ほどよい暮らしやすさや移住者が多いかどうか(受け入れ体制や相談できる相手がいるか)などを思い浮かべるが、南雲さんが興居島を選んだ理由は意外なものだった。
南雲さん「自分のできることを求められる場所に行きたいと思ったんです。すでにお店がたくさんあって、盛り上がっている場所に行っても、結局お客さんを取ることになってしまうし、面白みもないと思って。それなら、地域のために自分ができること、その余白や必要性がまだ残っているところに行きたいなと」
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自宅菜園で採れた野菜のサラダ
その他にも、醸造所兼お店となる物件を問い合わせた際にネットには載っていない物件を紹介してもらい、その物件に惚れ込んだことも興居島への移住を決めるきっかけの一つになったそうだ。
その物件は築150年と歴史を感じる建物で、庭も広くイメージにぴったりだった。現地に行く前に簡単な間取り図を見た時点で、すぐに改装のイメージが湧いたのだそう。
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広い庭があり歴史を感じる古民家
実際に現地を見て、隣に神社があり神聖な空気感があったこと、海や港までのアクセスが良かったこと、持ち主の方がきちんと手入れをされていたことで、事業予定地を決めたという。行動に移さず、ネットだけの情報を見ていただけでは出会えなかった物件かもしれない。
興居島は今は人口も少なくお店も少ないが、「いろいろな可能性を持っている」と南雲さんは話す。
南雲さん「興居島は松山市内から船で10~15分くらいで来られて、アクセスが良いんです。でも意外と知られていないのがもったいないなと感じていて。ちょうど僕が移住先を探している時に、興居島でもいろんなプロジェクトが動き出していて、これから民泊施設やワーケーション施設、飲食店などがオープンするようです」
これからどんどん盛り上がってくるであろう興居島で、南雲さんのクラフトビール事業も始まっていく。

島を盛り上げるクラフトビールを目指して

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古民家を改修して事業を開始予定
南雲さんが新しい事業にクラフトビールを選んだ理由は2つ。一つは昔からビールが好きだったこと。もう一つは島にビールを飲める場所があることが、地域にとってプラスになると考えたからだ。
南雲さん「自分がただ儲かりたいのではなく、地域のためになるのではないかと思って選びました」
島の外に流通させるビールの他に、島でしか飲めないビールを造ることも考えており、たくさんの人に島へ来てもらいたいと話す。
さらにビールには、柑橘栽培が盛んな興居島の青ミカンをメインに使う予定だ。
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島ではたくさんの柑橘が栽培されている
南雲さん「青ミカンはミカンがオレンジ色になる前に、まだ青くて小さい状態のみかんを間引いたもの。甘みはありませんが、すだちみたいなイメージで美味しく使えるんです」
島で間引いた青ミカンが地面に落ちているのを見た南雲さん。それらを有効活用する術がないか考え、ビールに使うことを決めた。たくさんの柑橘が実る興居島で青ミカンを使ったクラフトビールを造り、島の活性化を目指す。

一歩踏み出すことで、憧れを現実に

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移住によって、憧れの島暮らしを現実にした南雲さん。今は家族との時間も増え、瀬戸内海を眺めながら穏やかな暮らしを送っている。
今後は8月を目途に先に飲食店をオープンし、11月頃にクラフトビールの醸造をスタートする予定だ。ゆくゆくは民泊も始め、一日一組限定で泊まれる醸造所にしたいという。
なぜ不安がらず、新しいことに次々とチャレンジできるのだろうか。南雲さんは「不安は全然ない」と笑顔を見せた後、こう話した。
南雲さんチャレンジすることで拓けていった経験を今までずっとしてきたからかもしれません。失敗したこともあるけれど後悔したことはないですし、チャレンジすると絶対新しい世界が見えて視野が広がって、付き合う人も変わって、成長できるんですよね」
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それは、これまでチャレンジを続けてきた人だからこそ放てる言葉のように思えた。そして「自分達の活動が誰かのチャレンジするきっかけになれば」と話す。
南雲さん「今の時代、ネットで検索ばかりしてしまいがちですが、ネットで調べただけでは分からないことだらけ。小さな一歩でも、踏み出すことはすごく大事だと思います」
大事なことは、一歩踏み出すこと。ネットで調べても出てこないことが、一歩踏み出すことできっと見えてくる。
南雲さんの挑戦はまだ始まったばかりだが、瀬戸内の海を眺めながら、青ミカンが香るクラフトビールを味わえる日が待ち遠しい。
取材・文:さいとうえみり
写真:南雲信希

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