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場づくり・コミュニティ

連載 | NEXTSTAGE まちのプロデューサーズ2.0

民間企業で得た力を使ってイノベーションを起こす。澤田 伸さん

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目次

行政にも多様性を。将来の渋谷の形を考えた、まちづくりを実践されています!

お話を聞いた人

澤田 伸さん 渋谷区副区長

横尾 民間企業の出身者が、それまでの経験を活かして地方自治体に転職したり、任期付き職員として採用されたり、「地域おこし協力隊」のような形でまちの盛り上げに尽力したりするケースが増えてきました。澤田伸さんは、東京都渋谷区の副区長として官民学連携によるオープンイノベーションに積極的に取り組まれており、マーケティング畑で働いていたキャリアを活かした改革を進めていらっしゃいます。なぜ、副区長になろうと思ったのでしょうか?

澤田 以前、広告会社の博報堂で働いていた際、直属の上司として今の区長と3年間、共に仕事をしていました。その時の縁で、オファーをもらったんです。当時は別の企業の役員として働いていたので、「すぐには行けない」と断りました。そんな折、妻が突然、病気で帰らぬ人となってしまいました。葬儀で、多くの人に助けられて生きていると感じた私は、「人の役に立つ仕事をしたい」と、次のキャリアを考えるようになりました。

横尾 副区長に就任され、民間の知識やノウハウが役に立っていると感じることはありますか?

澤田 マーケッターとして、KPI(Key Performance Indicator)の達成や顧客満足度の向上のための施策を実践していましたが、行政でも同様に、顧客(区民)のニーズをていねいに分析することで、行政サービスにイノベーションを起こすことができていると思います。そして目の前にある課題を解決するだけではなく、20年後のまちのあるべき姿を考え、行政サービスを開発する必要があると思います。そのためには、民間企業のように将来のニーズを分析する必要があるのと同時に、未来の主流になるであろう最新の技術をどんどん試してみることも大切です。また、行政サービスをより良くするには、まずは自分たちが変わるべきだと思いますので、マーケティングの方法論を取り入れた勉強会のほか、職員の価値観や多様性を共有し、自分たちは今後どうなりたいかを考えるワークショップなども行っています。

横尾 澤田さんのご活躍は、他の民間出身者の励みになると思います。今後さまざまな自治体でイノベーションが起きるようにするにはどうすればいいでしょうか?

澤田 民間から人材がたくさん供給されればそれで済むわけではないですが、行政の中にまず「ダイバーシティ」をつくることが重要だと思います。変化を起こすための3つの力として、昔から「よそ者、ばか者、若者」が大切だと言われています。組織に多様性がなかったら、イノベーションは生まれません。最近では公務員の兼業などの取り組みを行う自治体も出てきました。双方の人材が流動化するといいですよね。多くの課題は残されていますが、NPOや企業の出身者には、どんどん副知事とか副区長とかになってほしいと思っています。

横尾 ご自身はどのようなキャリア選択を考えていらっしゃいますか?

澤田 先のことはまったく考えていません。20年後の渋谷のためのインフラを整えること、それが今の僕の最大のミッションです。後は、次世代の人材を育てること。次のキャリアは、転機や出会いがあった時でよいかなあと思います。

取材後記

 実は僕も博報堂時代、澤田さんから新人研修を受けたことがあり、仕事にストイックな方だった印象があります。取材中、澤田さんは幾度となく、「住民に満足してもらうには、まず職員自身が楽しんで働くことができる環境をつくらなければ」とおっしゃっていました。実際にするかどうかはさておき、思わず遅くまで残りたくなってしまうような職場環境をつくるのが上司の役割だとも。「育成なしに成長なし」と語る澤田さんの、「個人の成長は組織の成長、そして社会の成長へとつながっていく」という発想は納得でした。「人からの文句の数が多ければ多いほど、変化の可能性が大きくて楽しいんだ」とおっしゃる澤田さん。区長と二人三脚で生み出す次なる仕掛けが楽しみです。(横尾)

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