今回より、連載を担当させていただくことになりましたクリプトヴィレッジです。初めて私たちの記事をご覧になる方もいらっしゃるかと思いますが、「クリプトヴィレッジって一体何なのか」と疑問に思われている方も多いと思います。そこで、今回の第一回では、2021年から始まった「Nishikigoi NFT」について、これまでの経緯や現在の状況、そしてこれからの展開についてご紹介します。この連載を通じて、私たちの活動の背景や、目指しているビジョンを少しでも感じ取っていただければ嬉しいです。
NFTで生まれた山古志の新たな価値
「Nishikigoi NFT」は、「デジタル住民票NFT」として2021年にスタートしました。錦鯉の発祥の地である新潟県山古志を舞台に、最初のNFTが発行され、このNFTを保有する方々を「デジタル村民」と呼んでいます。現在、Nishikigoi NFTの発行数はおよそ2,900点にのぼり、保有者は約1,700名に達しています。今では世界中に住むデジタル村民がリアルとデジタルを結びつけた新しいコミュニティを形成しています。
興味深いことに、この取り組みの中で実際に「帰省」したデジタル村民は、約700名を超えています(デジタル村民が山古志を訪問することを「帰省」と呼びます)。山古志出身ではないにもかかわらず、山古志に帰省し、まるで第二の故郷のような場所ができる──それは不思議な感覚かもしれません。このように、NFTを購入したデジタル村民が実際に地域を訪れることで、地域との新たな絆が生まれ、関わりがより一層深まっています。
そもそも、なぜこのプロジェクトが山古志で誕生したのでしょうか。新潟県山古志は、現在、平成の大合併によって長岡市の一部となっていますが、美しい棚田に囲まれ、錦鯉や牛の角突きなど、豊かな伝統文化が息づく地域です。しかし、2004年の中越地震により、山古志は壊滅的な被害を受け、全村避難を余儀なくされました。村の伝統文化は消滅の危機にさらされ、当時約2,200人だった人口は現在およそ720人台にまで減少しています。
このままでは村が消えてしまう可能性もありました。そこで2007年、住民主体の「山古志住民会議」が設立され、住民と共に村の復興や地域課題の解決に尽力してきました。山古志の暮らしを紹介する動画や冊子の制作、特産品の魅力を伝えるイベント開催など、移住者を増やすための取り組みを続けてきましたが、それでも人口は減り続けています。
こうした課題に向き合い、山古志地域内での数々のトライアンドエラーを経て生まれた「Nishikigoi NFT」は、地域活性化の枠を超え、新たな「関係人口の可能性」を探る取り組みとして展開しています。地域に深い興味を抱きながらも実際には居住していない方々をデジタル村民として迎え入れ、新たな形で地域を支える関係性を築くことが、このプロジェクトの核心です。
歴史的背景を基にスタートしたNishikigoi NFTは、地域の文化や価値をNFTを通じて共有し支え合うことで、地域の未来を共に創造する挑戦を続けています。
Local DAOで描く未来の地域づくり
この山古志の取り組みを通じて、NFTとローカルが融合した新しい共同体を「Local DAO(※)」と定義しました。Local DAOは、地域住民とデジタル村民が互いに協力し、地域特有の課題に取り組むことで、新たな価値を共に創造する場として機能します。従来のコミュニティづくりや地域支援の枠を超え、地域とテクノロジーを組み合わせたこの取り組みは、デジタルとリアルの橋渡しを可能にし、地域の持続可能な発展に向けた新たな道を切り開いています。
この「Local DAO」の取り組みは、山古志にとどまらず、2024年6月には天龍峡(長野県)と椎葉(宮崎県)の2つの地域が新たに加わりました。この新規参加の意思決定は、山古志のデジタル村民の総選挙によって行われ、各地域では地域住民とデジタル村民が協力しながら、新たな地域コミュニティの形を模索する動きが進んでいます。
地域固有の魅力や文化がテクノロジーの力で広がり、関わる人々が増えることで、新しい価値を創出する「Local DAO」の取り組みは、今後もさらにその波及を広げ、より多くの人々が地域の未来に積極的かつ自律的に参加できるようにしたいと考えています。
新Local DAOで観光のあり方を問い直す天龍峡
新たなLocal DAOとなった天龍峡は、長野県飯田市の南端に位置し、東に南アルプス、西に中央アルプスがそびえる谷地形の観光地です。日本一の峡谷美を誇り、天竜川が貫く豊かな自然と四季折々の景観が魅力です。古くから交通の要衝として栄えた歴史を持ち、遊歩道では草花を楽しめ、川では舟下りが五感を刺激します。迫力ある渓谷美と自然の美しさが、多くの訪問者を引き寄せる名所です。
天龍峡は、かつて多くの観光客を魅了する名勝として賑わっていました。当時の住民たちは、天龍峡を観光地として発展させるべく尽力し、今の温かみある街並みを築き上げました。しかし、交通網の発達や旅行スタイルの変化により、天龍峡を訪れる観光客は最盛期の年間70万人から20万人にまで減少しています。観光業の低迷により、グランドホテルの廃業や店舗の減少も進み、天龍峡は観光の在り方に再考を迫られる過渡期に立っています。まさに、天龍峡は今、「観光のあり方」を問い直す時を迎えているのです。
天龍峡の目指す未来は、「消費される観光地」ではなく、訪れる人や住む人が共に育む「新しい故郷としての観光地」です。観光客の来訪によって地域の自然や生活がさらに豊かになる、そんな持続可能な地域づくりを進めていきたいと考えています。100年前に築かれた天龍峡の魅力を尊重しつつ、時代に合わせて進化させることで、次の100年も多くの人が訪れたくなる豊かな場所へと成長していくことを目指しています。
天龍峡デジタル住民票
天龍峡デジタル住民カード&NFTは、「11月22日(金)」に販売日を迎えました。ご購入いただくことで、単に地域のNFTを購入するだけでなく、地域づくりに参加し、その未来を共に考え、共に創り上げていくことができます。単なる保有にとどまらず、地域への愛着や関与を深め、未来の天龍峡を共に築くための第一歩です。まさに、地域貢献と未来への挑戦を象徴するものであり、持ち主が地域の成長を支える重要な役割を果たす手段ともなります。
天龍峡デジタル住民カード&NFTに関する情報は以下となります。
天龍峡で過ごす本物の田舎体験ツアー
天龍峡では、デジタル村民の企画以外にも様々な活動が行われています。例えば、長野県飯田市が提供するインバウンド向けの特別な天龍峡への旅、『THE INAKA -TENRYUKYO・IIDA CITY-』ツアーのご紹介をさせていただきます。
このツアーは二泊三日の行程で、南信州の美しい自然と伝統文化、そして天龍峡エリアでの「本物の日本の田舎体験」を存分に楽しむことができる内容となっています。
自然の雄大さを満喫できる「天竜ライン下り」や、農家での宿泊を通じて日本の田舎の暮らしを味わう「農家民泊」をご用意。また、「天龍峡黒豚」や「名産りんご」など、地元の食材を使った農業・畜産体験も組み込まれています。ツアーの運営には、地元の有志団体「ねやねや天龍峡実行委員会」も参画しています。2025年1月に開催予定のこのツアーで、天龍峡ならではの魅力を通じ、旅以上の価値を体験してみてください。詳細は以下のページをご覧ください。
今後について
山古志地域では「ネオ山古志村」が結成され、牛の角突きを支援するコミュニティが誕生したほか、マイナンバーカードを活用したショッピング体験「マイナウォレット」の実証実験など、多様な取り組みが進んでいます。また、宮崎県の椎葉でも、椎葉らしい関係人口創出の方法について日々議論が交わされています。
こうした試みを通して、各地域はそれぞれの文化や伝統を活かし、地域外の人々と「新たなつながり」を生み出そうとしています。地域独自の魅力が多くの人々に共有されることで、より多くの方々が地域に関わり、深い絆が育まれることを願っています。
本連載では、Local DAOの取り組みを中心に、「地域×テクノロジー」を通じた関係人口創出の取り組みを毎月お届けしていきます。ぜひお楽しみに。
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