福島県の中通り、郡山市の真下にある須賀川市。この街のシンボリックな火祭りが「松明あかし」をご存知ですか。初めて目撃した人は「山火事か!?」とびっくりしてしまうのではないでしょうか。巨大な松明が燃え盛る奇祭についてご紹介します。
「松明あかし」とはどんな祭り?
「松明あかし」は毎年11月中旬に開催され、ご当地の季語にも選ばれています。
どんなお祭りかというと、全長10m、直径2mほどもある大松明を、翠ケ丘公園にある五老山の山頂にたて火をつけ、燃え尽きるまでを眺める一風変わったお祭りです。
400年以上前、伊達政宗の軍が攻めてきた際に、当時須賀川を治めていた二階堂氏が戦で亡くなった兵の鎮魂が由来とされています。今では松明の火の粉を浴びると、無病息災のご利益があるとも言われています。地域の結束や伝統文化の継承の雰囲気も濃く、地元の企業や中学校、町内会あげて竹で組んだ骨組みに藁を詰めてござで包んだ松明が作られます。
当日、だれでも参加できる小松明行列
コロナ禍の影響で長らく中止や縮小開催が続いていた松明あかし。2023年に4年ぶりの通常開催されました。当日の夕方に、息子と初めて小松明を作って行列に参加してみました。
古布を竹からワイヤーで吊り下げるだけなので、5分ほどで完成します。小松明と言うけれど、世の中の松明が普通はこのサイズ。そう思うと松明あかしのある、須賀川らしい言い回しかもしれません。
炎を携えて、夜道を進むと荘厳な気持ち。いつもはおちゃらけている我が子も神妙な面持ち。火を扱う責務を全うしようと列を歩きます。
松明あかしは、炎を浴びるように見る
山頂では大きな松明に点火する小松明を掲げ、ハシゴに登っていく人々。
最初はじわじわと燃え、最後は夜空が赤々と染まる。ただただ見上げる。
こんなに巨大な炎のかたまりを見ることってあるだろうか。花火のように技巧に凝っている火でもなく、キャンプファイヤーや薪ストーブの穏やかで管理されている火とも違う。とにかく原始的で別次元のスケールなのです。
舞う火の粉と照らし出される群衆のシルエットに何とも言えない感動がある。映像化できない煙の香り、ぼうぼうとうなる音、一面に感じる熱、炎を浴びてこそ魅力にハマる祭り。晩秋の宵、須賀川の街を焦がす松明あかしを体感してみませんか?