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サスティナビリティ

特集 | 続・ウェルビーイング入門

影山知明さんが選ぶ「お金╳ウェルビーイングを感じるアイデア本5冊」

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メッセージつき地域通貨や応援・共感に基づく出資システムなど、さまざまなお金のあり方を模索する影山さん。よりよいお金との付き合い方を考えるためには、お金を原点から見直すことが大事だと話す影山さんが勧める、お金の歴史的背景や根本を知る5冊。

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(左から)1. 超訳 報徳記 / 2. エンデの遺言 ─根源からお金を問うこと
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(左から)3. 貨幣システムの世界史 / 4. 貨幣の思想史 ─お金について考えた人びと / 5. ナニワ金融道
お金という視点からウェルビーイングを考える前に、まずお金は中立的な道具であり、使う人次第なのだという認識が重要です。『ナニワ金融道』は、お金に翻弄されて困難な境遇に陥る話が描かれていますが、こういう厳しさがあることも現実の一面です。

では、中立的な道具のはずなのに、われわれはなぜ、気が付くとお金に追われるように働かなければならなくなっているのでしょうか。その歴史的な経緯を説明してくれるのが『貨幣の思想史』。お金が、社会の価値をはかる一元的な尺度として力を持つようになったのは、17世紀のイギリス。周辺国との戦争に直面し、国力増強を必要とする事情が背景にありました。

『貨幣システムの世界史』を読むと、逆に、お金が統一されていなかった時代や場所のことがわかります。特に興味深いのは、あえて流通しにくい形にすることで、圏外にお金を流出しにくくさせる工夫の話。

お金は、1種類ではなくてもいいとわかっていただいたところで紹介したいのが、『エンデの遺言』です。本書ではドイツ人実業家のシルビオ・ゲゼルが考案し、世界恐慌の時代に一部の地域で導入された「自由貨幣」を取り上げています。利子がつかず、それどころか定期的に価値が目減りするという仕組みで、だからこそ流通し、地域の経済を活性化させました。このほかにも、世界各地で流通した「地域通貨」が数多く紹介されます。このように、お金も自由に発想し、デザインしていいと勇気づけられます。

私が運営に関わっている東京都国分寺の地域通貨「ぶんじ」の場合は、「払うことで感謝も伝えられるお金があったらいい」という思いから、メッセージを通貨に書いて託すことができるようにしました。感謝されることが「贈り手」を育て、その思いが地域を循環する。新しい形のお金があることで、新しい社会が育まれるのではないでしょうか。

一方で、お金を扱う際に心に留めておきたいのが、『超訳 報徳記』の内容です。これは江戸時代の経世家・二宮尊徳の教えをまとめたもので、健全な経済のためには「至誠」「勤勉」「分度」「推譲」の4つが必要と説いています。私は特に、分度=必要以上に贅沢しないこと、推譲=利潤は人のため、世の中づくりのために共有するということが、結局、自分にも豊かさが戻ってくるウェルビーイングなお金とのつき合い方だと思っています。

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かげやま・ともあき●東京都西国分寺生まれ。経営コンサルティング会社、投資ファンドを経て、国分寺で2つのカフェを経営。まちの仲間と共に、クルミド出版、クルミド大学、国分寺赤米プロジェクト、地域通貨「ぶんじ」、ぶんじ寮などを事業化。著書に『ゆっくり、いそげ』。
photographs by Yuichi Maruya text by Sumika Hayakawa

記事は雑誌ソトコト2022年7月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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