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サスティナビリティ

特集 | 第2回ソトコトSDGsアワード2022

家も、人も、いつまでも健やかに。日本ボレイトの「ながいき住宅のレシピ」が叶えるSDGsな暮らしづくり

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衣食住の「住」であり、暮らしと切り離せない「家/住宅」。今回は「ひとの暮らしと寄り添う住宅は健やかに、丈夫に長寿命であって当然」という信念のもとに、サスティナブルな住宅の劣化対策を行なっている企業「日本ボレイト」を取材。同社が掲げる“ホウ酸”を使った木材保存と、日本で現在主流となっている合成殺虫剤の抱える問題について、同社の代表取締役社長の浅葉健介さんにお話をうかがいました。

目次

合成殺虫剤による暮らしへのリスク。ただお金がかかるというだけではなく健康被害も。この現状をホウ酸で変えたい

ソトコト 日本ボレイトは“ホウ素系木材保存剤の研究開発・製造・販売”を手がけている企業だとうかがっています。住宅と、そこに住む人を「ながいき」させるために、どういった取り組みをされているのでしょうか。

浅葉 健介さん(以下、浅葉) 最初に、私たちの事業について説明します。“ホウ素系木材保存剤の研究開発・製造・販売”というのは、ホウ酸を使った木材保存、もっとわかりやすく言えばホウ酸でシロアリ対策をすることによって、住宅と住まい手さんの双方が健康で、長く暮らしていただくための事業となります。

ソトコト ホウ酸というと、子どものころにホウ酸団子でゴキブリ退治をしていた記憶があります。なぜ、いまホウ酸に着目されているのでしょうか。

浅葉 現在、日本の木造住宅におけるシロアリ対策として認定されている薬剤としてはおもに「合成殺虫剤」と「ホウ酸」の二つがあります。平成23年にホウ酸を使ってもいいと認定が下りたのですが、現在も合成殺虫剤による処理をしているところが大半です。しかし、この合成殺虫剤による対策には大きく二つの問題点があるんです。

一つ目が「効果が長持ちせず、長期的にコストがかかる」という点です。合成殺虫剤による処理では5年程度しか効果が持続せず、定期的・継続的に再処理をしなくてはなりません。住まい手さんが50年、60年と長く暮らしていくうえで大きなコストがかかってしまうんですね。また建築時、外壁の柱などを合成殺虫剤で処理したあとは、その上からたとえば断熱材などで覆ってしまうのが一般的です。そうなると、5年後に再処理をするときにその断熱材をはがして、合成殺虫剤で処理をして、再度断熱材で覆って…と大工事になってしまいます。それを嫌って、断熱材などで保護されている柱には再処理をしないケースがほとんどで、そうなると防虫効果がない状態になっていってしまいます。

二つ目が「健康リスク」です。これは近年の木造住宅の気密性が向上したことにも関係していると思われますが、シロアリ対策をしたことによって目の腫れや吐き気、臭いが取れないといった住まい手さんの声が多く挙げられています。

参考:消費者庁 事故情報データバンク(https://www.jikojoho.caa.go.jp/ai-national/)

また、合成殺虫剤の一種であるネオニコチノイド系殺虫剤は、子どもの脳発達へ悪影響を与えるリスクが報告されていますし、ミツバチやトンボ、果てはウナギなどの生態系に悪影響を与えているとの報告もあります。EUでは2018年より、EU全域においてネオニコチノイド系殺虫剤は屋外での使用が禁じられているのですが、日本のシロアリ対策にはネオニコチノイド系の薬剤がおもに使われています。

人体に安全で効果が長期間継続するホウ酸のすごさ。足りないのは“認知”

ソトコト では次に、ホウ酸を使った処理の特長、合成殺虫剤による処理との差異をお話しいただけますか。

浅葉 ホウ酸処理のメリットは、まず「効果が長期間長持ちする」という点です。なぜかというと、ホウ酸は合成殺虫剤と違って空気中に揮発したり、分解されていくということがありません。水溶性なので雨ざらしになるような場所では使えませんが、住宅の柱のように建ててから壁の中に組み込んでしまうようなものであれば、効果が長く続きます。また、空気を汚さないので健康面でも被害を及ぼすことがありません

ソトコト そうなんですね。ホウ酸自体もいわゆる毒性のあるものなのだと思っていました。

浅葉 ホウ酸は、目薬にも使われているようなものなんですよ。お住まいの方が空気中からホウ酸を摂取する可能性はありませんけれども。ホウ酸で処理をしたことによる健康被害のリスクがない点も合成殺虫剤による処理と差別化できるポイントです。

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▲ホウ酸塩鉱物。

日本の住宅建築をめぐる構造の問題と“住まい手”ファーストの取り組みとしてのホウ酸

ソトコト お話をうかがっていると、ホウ酸による処理の方がいいことばかりだと思います。

浅葉 そうなんですよ(笑)。でも、日本の木造住宅におけるホウ酸処理のシェアは恐らく3%ほどにとどまっていると思います。

ソトコト なぜ合成殺虫剤が今も使われ続けているのでしょうか?

浅葉 これは、確たる証拠があるわけではありませんが、恐らく新築時のコストに関係しているのだと考えています。確かに、新築するときだけのコストに限って言えばホウ酸による処理よりも、合成殺虫剤による処理の方が安上がりではあるんです。なので、見た目の価格を安く提示できるんですね。住宅を購入する側も安い方がいいのは間違いありませんが、そこでは長期的な再処理の必要性などについてはぼかされていることがほとんどなのではないでしょうか。

また、業者にとっては5年後、10年後に継続して再処理を受注できるほうが利益の出る話ですし、「初期コストを抑えて、継続的な再処理で稼ぐ」といったビジネスモデルが確立してしまっているという、業界特有の問題もあると考えています。このあたりはワイドショーなどでも取り上げられることがありますよね。

ソトコト なるほど。売り手と買い手の情報格差や、業界の構造の問題もあるわけですね。

浅葉 長い鎖国状態から、ホウ酸による処理が認定されて11年がたちます。最近はネットでの情報発信なども増えて、住まい手さん側のリテラシーが高まってきていることもあり、合成殺虫剤よりもホウ酸による処理を、という住まい手さんが増えているのは事実です。この流れに乗って、日本でもほかの先進諸国のようにホウ酸による処理をもっとスタンダードなものにしていきたいですね。

ソトコト 次回の記事ではホウ酸処理についてより深く、また日本の住宅を取り巻く環境や日本ボレイトが提供しているサービスなどについてもおうかがいできればと思います。ありがとうございました。

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浅葉 健介(あさば けんすけ)
1971年東京生まれ。産能短期大学卒業。
営業会社、会計事務所、経営コンサルタント会社を経て、建材メーカーにて企画開発・営業・経理に携わる。
2005年10月、米国大使館「ホウ酸セミナー」で理学博士・荒川民雄と出逢い、弟子入り。2011年10月、荒川民雄を会長に迎え、日本ボレイト株式会社を東京・錦糸町でスタートする(現在の本社は東京・秋葉原)。

ホウ酸処理「ボロンdeガード®」を開発し、施工代理店を通じて全国に展開。防腐防蟻処理では初となるグッドデザイン賞、ウッドデザイン賞、キッズデザイン賞、エコプロアワード奨励賞を受賞。日本の木造住宅を、家族の健康とマイホームの健康が両立する「ながいき住宅®」とするべく、奔走している。
著書に「ながいき住宅のレシピ」(セルバ出版)がある。

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