「子育て環境のアップデート」をテーマに、『株式会社 明治』(以下、明治)が千葉県の流山市とともに進めている「こそだてMINNAdeプロジェクト」は、2023年に始まって以来さまざまなイベントを開催しています。今回は2024年11月24日(日)に開催された子育てイベントをとおして、明治と流山市の取り組みをレポートします。
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流山市と子育てにおける栄養課題解決に取り組む明治
明治は子育てしやすい社会の実現を目指す一環として、子どもの栄養課題の解決や、そのための情報提供に取り組んでいます。今回のイベントでとくに力を入れたのは、子どもの鉄不足についての情報発信や対策について。昔から幼児の鉄不足は問題視されていましたが、広く認知はされていませんでした。そこで管理栄養士による栄養セミナーや、明治の商品を使って親子で手軽に楽しくつくりながら鉄も摂れるパンづくり体験の場を提供することにしたのです。
開催場所となったのは流山市中央公民館。午前の部と午後の部の二回行われ、午前の部には二十組弱のファミリーが集まりました。
イベントは、『親子サロン BLOOM』(以下、BLOOM)主宰のMIKIさんから参加者に向けた挨拶で始まりました。BLOOMは0~5歳児とママ、パパが集まる親子サロンを開き、3歳以上からいろいろな遊びに参加できたり、親たちが情報交換をできる場をつくったりしています。
MIKIさんは今回のイベントについて、「企業、行政、民間市民団体で力を合わせて子育てをやりやすくしようということで開催されました」と説明しました。
楽しくておいしいパンづくりで「栄養」を意識
最初に行われたのはパンづくり体験です。講師は、流山市やその近隣で子どもたちにパンをつくってもらう活動をしている「日々のパン」の松下ゆきこ先生。子どもでもチャレンジしやすい、ビニール袋を使ったパンづくりを指導してくれました。
松下先生が取り出したのは、強力粉、砂糖、塩を混ぜて調整してある粉。それに水、イースト菌、さらに鉄が摂れる明治のフォローアップミルク「明治ステップ らくらくキューブ」1個を入れ、ビニール袋の中でひたすら練ります。粘土遊びのような楽しさに、子どもたちはさっそく夢中になりました。練ったパン生地はプレートの上に出し、細く切ってマルの形にします。
このパンは冷蔵発酵できるタイプで、普段であれば夜につくり、一晩冷蔵庫に寝かせて朝に焼くこともできます。この日はパンを練って形をつくるところまでをやり、実際に焼くのはすでに発酵させていた別の生地になりました。ここで練ったものはお土産に持ち帰り、家で焼いてもらいます。
ちなみに、今回のイベントにパンづくり体験を入れようと発案したのはMIKIさん。「栄養セミナーだけでは子どもが退屈してしまうだろうし、親も貴重な土日につまらなく感じるのでは」という理由のほか、流山で活躍するパン講師にぜひお願いしたいという思いもあったそう。
栄養セミナーで詳しく解説。楽しいクイズの時間も
パンが焼き上がるのを待つ間には、明治の管理栄養士がスライドを使った栄養セミナーを行いました。内容は、成長期における栄養の大切さについて。「幼児期に必要な栄養は?」「それはどのぐらい必要?」「どんな頻度で摂るのがいい?」「年齢によって摂取量はどう変わる?」「どんな食べ物にどんな栄養素が入っている?」「年齢ごとに骨はどんなふうに形成される?」などの解説をしました。
さらにクイズとして、「どの野菜にどんな栄養素が入っている?」「どんなメニューの食事にすれば栄養を効率よく摂れる?」などの出題も。ゲーム形式になると子どもたちも前のめりになって、大きな声での元気のいい回答が続きました。最後は、「食事だけで栄養を摂りきれない場合は、『ステップ』や、牛乳に混ぜてストロベリーやバニラの味にできる『ミラフル』を上手に使って」と締めくくりました。
栄養セミナーを担当した管理栄養士は今回のイベントを通し、「子どもの栄養についていろんなことに気を付けたくても、忙しくてきちんとできないと悩む方もいるとわかりました。負担なくやれるやり方について、これからもいろいろ提案していければ」と考えるようになったそうです。
ママ、パパも安心の鉄チェックの時間
栄養セミナーの次は鉄チェックです。これは採血なしで、指先を専用の器具で軽く挟むだけで簡単にヘモグロビン値が計測できます。対象となるのは1~6歳の子どもで、参加するとスタンプカードにスタンプがひとつ押されます。スタンプは「こそだてMINNA deプロジェクト」が開催するほかの鉄チェックの際にも押してもらうことができ、たまるとおやつなどの景品がもらえます。
参加した子どもたちのママ、パパからは、「初めてチェックしたけれど、基準値に足りていてよかったです」、「食べるものが偏っているので数値的に足りないかと思っていたけれど、意外とそうでもなかったので安心できました」などの感想が。明治によると、「今のところ基準値に達していたとしても数字は変動するものなので、これからもおいしく食事をしながら継続して気にしてほしい」とのことでした。
鉄チェックの後、待ちに待ったパンが焼き上がってきました。焼きたてのパンに、子どもたちはココアパウダーを少量の水で溶いたもので思い思いの模様を描いていきます。
そして試食をすると……どの子もみんなモリモリと食べています! あっという間にまるまる1個を食べきってしまい、パパに驚かれていた小さな子も。ママが「偏食に困っている」と言っていた子も止まりません。ママ、パパたちからは「味がシンプルなので、何につけてもおいしそう」「こんなに簡単にできるなら、これからは家でもつくりたい」といった意見を聞くことができました。
ほかにも子どもの食事を気にするママから、「塩分や砂糖が控えめで、これなら安心して食べさせられる。家でつくれると自分で調節できますね」といった声もありました。
みんなが「楽しい」と感じることが子育て環境のアップデートに
イベントが終わった後、MIKIさんはこんなふうに語ってくれました。「私自身も流山市で子育てをしていますが、なかなか栄養について相談できるようなところはありません。そんな中、貴重な情報を吸収や交換できる場をつくれたと思います」
また、ファミリーで来てくれた人たちが多かったこと、みんな笑顔になってくれたこともうれしかったそう。「家族のみんなが『楽しいね』と感じてくれることが、子育て環境のアップデートにもつながると思います。今回は企業、行政、市民団体という背景が異なる三者で協力したからこそ、柔軟で身近な企画にできたのかなと。需要があるとわかったので、またこういう機会をつくりたいです」と話していました。
市民の意見から、必要とされる情報を探っていく
明治の担当者である福本聡さんも、今回のイベントで強い手応えを感じたそう。「栄養は大事だと言葉で伝えるだけでなく、実際に栄養を入れたパンをつくってもらうことで、実感しやすく、家庭でも再現しやすい情報を提供できたと思います」
また、栄養の大切さについて伝える活動は今後も続けていきつつ、さらに深く、広くさまざまな分野にも挑戦していきたいそう。「明治としては栄養課題の解決を軸に、市民の皆さんに育児に関する情報全般を提供していきたいと思っています。栄養について知ることは、あくまでも育児に必要なことのひとつ。それ以外にも遊ぶ場所はどこがいいのか、どんなベビー用品を使えばいいのかなど、育児に向き合うといろいろなことを知らなくてはいけなくなります。そういった点をひとつにまとめて提供できれば、受け取る側にとっても効率がよくなるでしょう」
そのためにママ、パパたちはどんなことを求めているのか、イベントのアンケートなどから丁寧に拾っていきたいと言います。「企業サイドからの『こういうことをしていきたい』という一方通行の発信では、それが本当に役に立っているのかわかりません。こういうことをして欲しい、こんなことがもっと知りたいと、どんどん意見をもらえるとありがたいです」
福本さんは今の「こそだてMINNA deプロジェクト」を、「市民の皆さんが必要なことを探り、つくっていこうとしている段階」だと考えています。そして、「今後も頼れる場所としてアップデートしていきたいですね」と力強く話してくれました。
text by Sumika Hayakawa photo by Yusuke Abe