地方で働く女性、都心で働く女性、子育てをしながら働く女性、さまざまなライフスタイルを送る女性たちを取り上げ、女性の健康課題や社会課題について考える対談コンテンツ『フェムコト』。
RULE1.人生はアドベンチャーとして捉える
RULE2.何事にも好奇心を持ち続ける
RULE3.愛を持って生きる
桑原真理子(くわはら・まりこ)さん
●桑原姉妹の姉。高校卒業後、19歳の時に渡蘭。2011年、アムステルダムの美術大学、ヘリット・リートフェルト・アカデミー グラフィックデザイン科卒業。過疎地域で出会った人々との対話を元に、ドキュメンタリー形式の出版物、映像作品を制作する。
RULE1.家族を大事にする
RULE2.ゆとりを持つ
RULE3.人に囲まれて生きる
桑原果林(くわはら・かりん)さん
●桑原姉妹の妹。東京都出身。姉の真理子に続き、2010年に渡蘭。レインワードアカデミー美術大学文化遺産学科でミュゼオロジーを学び、在学中に姉・真理子と共に通訳・翻訳事務所So Communicationsをアムステルダムにて設立。メディア・教育・介護・農業・デザイン&アートなど多岐にわたる翻訳・通訳・コーディネート業務を行う。
https://www.socommunications.nl
オランダ男性は生理の知識もあるし理解もある
真理子:日本では結婚の話になった時、「収入がこれから不安だから、収入の高い男性と一緒になりたい」とか「安定」するために結婚したいという話をよく耳にしますが、オランダでは安定するために結婚したいという人は私の周りにはあまりいないように思います。それはオランダが社会保障の充実している福祉国家であるということが背景にあるのだと思いますが、オランダの人の求めるパートナーシップは、精神的に満たされることが前提で、相手の収入はあまり重要視されていないような気がします。
果林:私は結婚して子供もいますが、パートナーと話す時間は多いです。日本で日本人の彼と同棲してたこともあるけど、なんだかあんまり話せなかったなっていうのが無性に残ってますね。彼も仕事が忙しく帰りも遅くて、自分の殻に閉じこもっちゃってたから。別にオランダ人だからよく話すというわけではないかもしれませんが、日本のように言わないで察する文化はない。言いたいことを遠慮していたり言わないでいたりすると「もっと考えてること言ってよ!」ってことになる。なんでも言葉にしないと、相手に伝わらないんです。察してあげるのが前提じゃないという感じ(笑)。
フェムテックtv:セクシャルな話もオープンにされますか?
真理子:私はしますね。友達とはセックストイの話もします。周りでは女性専用のセックストイ『サティスファイヤー』が爆発的に浸透してて。「絶対、買ったらいいよ」って言われてるので、試したみたいと思っています。先日長距離バスでたまたま隣り合わせだったゲイの男性とも道中ずっとセックスの話をしていましたよ(笑)。パートナーとのセックスの話は、オランダ人は多分たくさんしてるんじゃないかな。#MeTooも浸透したことで、セックスをしたいかしたくないか、どういうセックスをしたいかっていうのをちゃんと話すっていうのは、特に若者たちの間では傾向としてあるように思います。
果林:学校でも、今は#MeTooの授業があるみたいです。それはすごくいいことだと思います。日本の女性は、自分の身の守り方をちゃんと教わる機会が少ないと思うので、それって本当に危険なことですから。
真理子:私も含めて日本人の女性は、自分のセクシャリティやセックスでどういうことをしてほしいとか、何を求めてるとか、あまりに受け身の人が多いのかなって印象。オランダだと、自分の体をもっと知ってるし、それをちゃんと相手に伝えられるツールやスキルを持っていると思います。
果林:オランダ人男性は、恥ずかしげもなく生理の話もしますよ。理解もあります。私のパートナーは、彼の母親に対してもセックスジョークを言うんですよ。異性の親とそんな話って、日本ではまずしないですよね。うちは母がオランダ人だからか、軽いセックスジョークも言い合えるけど、日本人の父は言いません。
真理子:言わないね。セックスとかエロスって、日本の中ではもっと神秘的なものになってる気がします。オランダはそういうことがない、全てのことがフラット。日本人男性にとって生理は、よくわからないものなんじゃないかな。
果林:日本も性教育はあるけど、なんかすごく回りくどい言い方をしがちな気がします。オランダで子供を持つお母さんから聞いたのは、性教育のビデオがすごく生々しいって。お姉さんがバナナの皮を剥いて、ベロベロ舐めるっていう(笑)。
真理子:コンドームを付ける速さを競う小学校もあるみたいですよ。
果林:でもそういうことを子どもにオープンに話すことって大事。セックスの危険性とか妊娠のリスクとかわからないまま実践に移ってしまったら、本当に危険だらけじゃないですか。やっぱ怖いなと思いますね。結局、女性のほうがリスクは大きいですから。
真理子:私は16年間、同じ男性と付き合っていたので、彼と別れた後、出会い系アプリを通じて色々な男性とデートした時に、色々な場面でなかなか「No」と言えず、すごく苦労しました。自分の求めるセックスの形とか関係性もわからなかったし、口に出すことにもすごく抵抗があった。もうちょっと教育の中で、嫌なものは嫌とか、こうして欲しいとか、コミュニケーションの取り方をセックスに限らず学んでおけばよかったなと感じました。ただ、経験して学べるものもありますからね。ちなみにオランダの女性は、コンドームをちゃんと自分で常備しています。男性に委ねるわけじゃない。今はオンラインでも買えるので、女性でも抵抗なく準備できると思いますよ。
ゆとりを持ちつつチャレンジングに生きる人生を!
真理子:私はいろんなことにチャレンジしたり、興味を持ったり、知らない場所に行ったり、知らない人に出会ったりして、一人の時間もそうじゃない時間も素敵なものにして大切にしていきたい。年相応って何?って感じ。まだまだ若いと言うか、何でも出来ると思っています。私は子どもや家族をもたなくても良いかなと思っていますが、私のそんな価値観も出会いによってトンカチでカチンってやられるくらいグラグラ揺さぶられるような時がくるのかなと思うと、それはそれで楽しみですね。
果林:私は家族とゆとりと人に囲まれる人生を大事に生きたい。時間的にも金銭的にも心のゆとりがないと、他者にも優しく出来ないし、誰も幸せになれないなって思うから。
フェムテックtv:では最後に、お二人が思うウェルビーイングな世界とは?
果林:環境も人々の自由も豊かさも大事だしってなると、何かしら選択を迫られると思うんですよね。それぞれが“私はこういう意見だからこういう風にやってる”ってことを意識して生活すると、少しでもウェルビーイングな世界に近付けるんじゃないかなと思ってます。
真理子:人生に起こるサプライズを楽しむ。コロナもあって、人生でコントロール出来ると思ってたことが、突然出来なくなったことも踏まえて、人生をコントロールしすぎなくてもいいのかなって。もちろん努力もしなきゃいけないと思うんですけどね。日々に追われるんじゃなくて、時々立ち止まって、身の回りにある幸せを感じられたらいいんじゃないかな。さっきお話しした長距離バスで出会ったゲイの男性は、今ではかけがえのない友人の一人です。そんな彼が言ったんです。「こういう出会いがあるから、人生って楽しい。これが人生の醍醐味で、生きてて一番うれしいと思う瞬間だね」って。そんな風に私も生きていきたいですね。
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