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うま味調味料が加速させる、発展途上国の食|森田隼人

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「うま味調味料」は日本人であれば、必ず一度は口にしている。「UMAMI」として世界中に広まっているが、その歴史は1908年に池田菊苗博士が昆布からグルタミン酸を抽出することに成功し、これを「うま味」と名づけたことに始まる。

化学調味料として家庭に広まったのは1950年代頃、その発展を担ったのが、ラーメンである。ラーメンがここまで我が国で国民食として広まったのは、「うま味調味料」があったからにほかならない。戦後、食糧難の時代に昆布や鰹節などから手間をかけて出汁をとることは困難だった。そこで、「うま味調味料」を使うことで骨やガラなどの乏しい材料でとった出汁でもうま味を増強し、麺とスープを合わせて肉や野菜なども一気に摂取できて、完全食に近い栄養がとれる食事としてラーメンは発展したのである。

そして今、「うま味調味料」を必要としているのが発展途上国である。ここでは、食中毒の危険を回避するために、食材にしっかり火を入れただけの質素な食事が一般的で、味ではなく香辛料で臭みを消す、それこそ生きるための食事こそが生活の基盤となっている。世界の歴史を繙いてみると地域ごとにうま味を得るためのさまざまな知恵があり、人はうま味を求めている。「うま味調味料」があれば食べる喜びを知ることができ、発展途上国においては、「ただ食べる」を根底から変えて「食事の楽しさ」を伝播できる可能性が広がるのだ。

約110年前、我が国で生まれた「うま味調味料」は、発展途上国の食文化を改善するために、今まさに未来に向かって急速に成長する調味料の一つに変わりつつある!

森田隼人|もりた・はやと●1978年生まれ。プロボクサーや公務員を経て、現在、『六花界グループ』オーナーシェフ。農林水産省「料理マスターズ」叙任料理人。
記事は雑誌ソトコト2023年8月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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