「ライク・ア・バードokitama」第4弾

特集 | ソトコトが手がける講座・講演プロジェクト | 「ライク・ア・バードokitama」第4弾 メディアアーティスト市原えつこさんと訪ねる、紅葉舞う南陽市

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2022.05.27

―イザベラ・バードのように、軽やかな一羽の鳥のように。自分らしい価値観に出会う映像の旅。

19世紀末、明治初期の日本にひとりの英国人女性探検家が訪れました。彼女の名前はイザベラ・バード。海外旅行が一般的ではなく、女性の自由が今よりはるかに制限された時代にもかかわらず、軽やかにしなやかに世界中を飛び回った女性でした。その道中を記録した『日本奥地紀行』の中で「東洋のアルカディア(理想郷)」と称賛された山形県・置賜(おきたま)地方を舞台に、「現代のイザベラ・バード」と呼びたくなるような、新しいライフスタイルを歩む女性たちが旅をします。

「美と勤勉さと快適さの魅惑的な地」とバードが評した南陽市

イザベラ・バードは明治11年の夏に南陽市を訪れました。「赤湯」の地名は当時の紀行文にも記されています。最初に出てくる記述は“湯治客の多い温泉の町“。バードは世界中を旅行して旅行記を残していますが、自分が目にした光景や出会う人々の印象をあるがままに表現することで、当時の貴重な記録であると現代でも重宝されています。訪れた地を称賛するばかりではないことは著書を読めば知ることができますが、赤湯のことは「申し分のないエデンの園」と記述しており、バードの目にいかに素晴らしく映ったのかがうかがい知れます。
絵画のように整然とした田畑に植えられた作物を事細かにメモし、そこに暮らす人々も含め「美と勤勉さと快適さの魅惑的な地」と言わしめたのだろうと想像できます。
(イザベラ・バードの日本紀行 時岡敬子訳より一部抜粋)

―「ライク・ア・バードokitama」では山形県外からやってくる女性が、とまり木を渡る鳥のような旅をします

今回は、日本的な文化・習慣・信仰を独自の観点で読み解くメディアアーティストの市原えつこさんが南陽市を訪れます。

センセーショナルでありながら、日本人古来の価値観に深くアクセスするような作品をつくり続ける市原さん。
温泉、農業、信仰、人々の繋がり。バードの時代と変わらない形を維持しながら、現代的な進化を続ける南陽市は、彼女の目にどのように映るのでしょうか。

市原さんが南陽市を訪れたのは2021年11月上旬。紅葉する山々、落ち葉舞う町並みに、しとしとと雨の降る、東北でいえば晩秋です。

フラワー長井線の宮内駅から熊野大社までの道のりは、古くから多くの参拝客が訪れました。東北の伊勢と呼ばれ、縁結びの神様として知られる熊野大社では、11月は、鳥居から本殿に向かう参道にある大銀杏が見頃を迎えます。

この旅で出会った女性たちをご紹介します。

金井泉さん (ソアリングシステム)
石川愛さん (宮城興業株式会社)
渡部彩友里さん (レストラン 味処四季彩)
平良子さん (平農園)
島津希美子さん (gelato En. ジェラート・エン)
岩谷恵美さん (Yellow Magic Winery イエローマジックワイナリー)
もっちぃ駅長 (山形鉄道株式会社)

金井泉さん(ソアリングシステム)

金井さんは東京都生まれ。1996年に南陽市に移住し、夫婦でソアリングシステムパラグライダースクールを開校します。

赤湯の街を一望できる十分一(じゅうぶいち)山。夏には緑が一面に広がり、10月から11月にかけて麓が雲海で覆われることもあり、幻想的な景色を見ることができます。写真中央部に見えるのが赤湯の町並み。遠くに吾妻連峰と飯豊連峰をのぞむことができ、イザベラ・バードも、この平野を実際に見て記録に残しています。

「空を飛びたいとやって来る人は、お客さんというよりみんな仲間」と話す金井さんは、足の不自由な人でもフライトできるように、車椅子で体験できるシステムもつくっています。

近年では、パラグライダーの生地を活用し、バッグやポーチなどを作り販売しています。
金井さんにとって、大空に連れていってくれるパラグライダーは、とても思い入れのある相棒のようなもの。安全性のため耐用年数を過ぎたら廃棄しなければならない生地を蘇らせて作った小物を使ってもらいたいという気持ちには、やはり原点の「スカイスポーツを身近に感じてもらいたい」という思いがあります。

石川愛さん(宮城興業株式会社)

オーダーメイドからメーカー品まで靴の生産を手掛ける宮城興業は、日本有数の老舗革靴メーカー。「一点ずつ丁寧につくる」という会社の精神は、そこで働く人たちにも深く浸透しています。履けば履くほど味が出る靴たちは、すべての生産工程を一貫して工場内で行っており、県外から靴職人を目指して修行にくる人たちもいるとのことで、若者も集まりパワーに満ち溢れていました。

渡部彩友里さん(レストラン 味処四季彩)

生家が老舗「渡部鯉店」という渡部さんは、鯉店が運営する「四季彩」で、他県には珍しい鯉料理を提供しています。学生時代に地域史を学び、南陽市の歴史にも興味を持ち始めたという渡部さん。山形県の鯉食文化を伝えるチラシを制作したり、レストラン内には当時を伝える写真をさりげなく展示してあったりと、「自分にできることから」と、肩の力を抜いたゆるやかな活動をしています。

市原さんと渡部さんは、かつて参道としてにぎわった宮内駅から熊野大社までの通りを歩き、この地域の歴史文化の話に花を咲かせます。

熊野大社では、実際に神社のスタッフから手ほどきを受け、巫女の舞を学びます。巫女の姿がトレードマークの市原さんは、意外にも本格的な巫女の舞を学ぶのは初めてだといいます。

平良子さん(平農園)

平さんは東京都出身。大好きだったバイクが縁で出会った夫と結婚、そして出産します。夫の両親から送られてくる農産物を食べる娘の「おいしいね」という言葉と笑顔をきっかけに、夫の出身地である南陽市に移住を決意しました。
第二子を出産してから1年後に就農。「子どもからおじいちゃんおばあちゃんまで、食べたらみんなが笑顔になれるように」と、想いを込めて農作物を育てています。

「農業を手伝っているうちに作物がかわいくなってきて」という平さんに、「農家だけどアーティストみたい」と市原さんは意気投合。ふたりは「えっちゃん」「よっちゃん」と呼び合うほどに。

平さんは、親世代の農業を受け継ぐだけではなく、そこからさらに加工品の販売にも力を入れ始めています。特に人気なのはりんごジュース。大好きな山の動物たちをモチーフに使ったラベルを作って販売したところ、そのかわいらしさに惹かれて購入してくれる人が増えたといいます。「よっちゃんワールド」はこれからも広がり続けます。

島津希美子さん(gelato En. ジェラート・エン)

島津さんは石川県加賀市に生まれ、2008年の結婚を機に南陽市に移住しました。
店舗は熊野大社のすぐそばにあります。

南陽市の果物をはじめとする農産物の美味しさに感動し、贈答用と味は同じでも規格に合わないものを何かに活かしたいと思っていたそう。デザイナーの夫と複数の店舗が入れるスペースを作り、自らはジェラート店をその中に持つ構想を立てました。

「ジェラートの味の6割は素材で決まるといわれています」と島津さん。
島津さんは2020年4月に店長としてgelato En.をオープンさせましたが、それ以前の1年、自ら農家に出向きアルバイトをしていました。
素材となる農産物は、農家がひとつひとつ大切に作ったもの。実際に農業を手伝うと、農家への尊敬は深まり、大切に扱おうと思う気持ちが増したそうです。

素材を提供している地域の農家さんと歩く島津さん。
この時期はちょうど、ラ・フランスの収穫時期が終わり、ラズベリーが収穫期の終盤に入った頃。
農家とともに、日本の四季を感じる「ジャパニーズ・ジェラート」を探求しています。

窓の外には、熊野大社の大銀杏が見えます。

岩谷恵美さん(Yellow Magic Winery イエローマジックワイナリー)

柔らかい関西弁が印象的な岩谷さんは滋賀県の出身。夫婦で、ワイナリーをつくるために大好きな猫たちと共に南陽市に移住してきました。
赤湯には多くのワイナリーがあり、2019年創業といちばん後発ながら、夫婦でぶどう栽培からワイン醸造、さらにはラベルづくりも自分たちで行います。
ワイナリーで勤めた経験のある夫と違い、岩谷さん自身は、南陽市に来てから初めての経験。それでも彼女に「大変」という雰囲気はありません。オリジナリティに溢れたラベルを見ただけでも、「楽しい」という空気が伝わってきます。

食も環境も違う場所から赤湯にきて、その違いに驚きながらもそれを面白がり、ぶどう栽培に適しているという南陽市の魅力を語ります。

「ワインの味やラベルには、"うちらしさ“を大事にしている」との言葉通り、醸造したワインの味からフィーリングを感じ取り、ネーミングやラベルのデザインを考えます。
「誰かのためというより自分たちが飲みたいワインを作る。そうすれば身近な人、そしてほかの人もおいしく飲んでもらえると思って」と岩谷さんは言います。

瓶詰めやラベル貼りのときには、夫婦で大好きな音楽をかけて気分をノリノリにして作業するのだそう。

赤湯のメインストリートにある地元の酒専門店の「結城酒店」。
ガラス扉で出入りできるワイン専用スペースがあるのが、なんとも赤湯らしいと感じさせてくれます。岩谷さん夫婦が丁寧に仕込んだワインはもちろん、地元のワイナリーのラインナップも豊富、酒類全般はもちろん、置賜各地の農家がつくるジュースなども取り揃えされ、生産者に対するリスペクトに溢れた店内に圧倒されます。

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