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連載 | 瀬戸内の古民家で子育てはじめました

古民家あるあるの“3K”を解消!間取りビフォーアフター【瀬戸内の古民家で子育てはじめましたvol.5】

小林友紀

小林友紀

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2020年9月。当時1歳と0歳の子を連れ、東京から愛媛県の今治市へ移住した。今治は妻である私の生まれ故郷。つまりUターンである。昨年、築70年を超す古民家を自宅として購入、再生し、家族4人で暮らしている。そんなわが家の日常を通して、住むほどに味わい深く、子育て世代におすすめしたい古民家の魅力をお届けしたい。

目次

暮らしやすさを追い求めて…

前回書いた通り、めでたく「これだ」と思う古民家との出会いを経て、いよいよリノベーションがスタート。いよいよ理想のわが家へ……!

家の購入を検討し始めた当初、新築のプランニングも経験していた私たち。その過程の楽しさを知っているからこそ、期待感を胸いっぱいに膨らませ、いざ工務店さんとのやり取りが始まった。

しかし同じ「プランニング」とはいえ、新築と古民家では全く違うもの。新築は土地の制約はあれど、ある程度は自由に間取りを考えることができるが、当然古民家だとそうはいかない。動かせない柱の位置、解体してみないとわからないコンディション、増築部分との兼ね合い…。

かくして、悩みに悩んだプランニングが幕を開けた。まずは購入当時の平面図をご覧ください。

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広い。床面積は驚きの80坪である。

ただ、広すぎ&部屋多すぎて持て余す事態である。母屋は良くある、昔ながらの田の字作りの設計で2階建ての7LDK。右側部分には将来二世帯化も可能な納屋が増築された結果、玄関が2か所出現。

これまた昔ながらの設計あるあるで、水回りが遠い遠い。トイレや浴室は遠く彼方にポツンと存在しており、寒くて暗い……。同じく水回りの一角を成すキッチンは、かつての土間からは改築されているものの、それゆえにつじつまの合わなかった段差が出現。

ほかにも平面図だとわからないが、実はレベル(高さ)もあちこちで差があり、お察しの通り2階へと続く階段は恐ろしく急。まさにバリアフリーとは無縁!

もちろん、その佇まいや雰囲気を気に入って購入した古民家ではあるが、このままではおそらく、いや確実に暮らしにくい。だが一体どこまで変えられるのか。

古民家を明るく、安全で、快適な家にしたい

主に私たちが望んだ点は三つ。

①「明るさ」
・主に北側(図面上)居室の暗さを解消したい

②「安全」

・幼い子どもたちが、のびのび広々、安全に暮らせる居室空間にしたい

③「快適」

・広さを有効に生かして、平屋のように暮らしたい
・水回り動線など、暮らしやすくアップデートしたい

古民家は(誤解を恐れず言えば)、「暗くて」「危険で」「暮らしにくい」の3Kを兼ね備えてしまっている。

古民家は建物が広く天井が低い分、窓から離れた居室はどうしても暗がりが気になってしまう。実際、わが家においても床の間のある座敷(客間)は一番陽の当たる南に位置している一方、主に居住スペースとされてきたであろう北側の和室はとても暗く感じた。暗い北側部分の屋根には傷みも見られ、雨による湿気被害もあった。まずはその北側エリアに漂う陰鬱とした雰囲気を解消したかった。

また、先も触れたように室内の段差や敷居、急な階段など、幼い子たちには危険がいっぱい。(それが楽しいんだけど。)また安全性だけではなく掃除のしやすさなどからも、レベル差は解消したかった。

そして、動線である。とにかく古民家のそのままの動線では、夜のトイレは拷問でしかない。キッチンと脱衣所はもはや対角線上にあり、「家事動線とは……?」状態である。ここをどれだけ楽にできるかが暮らしやすさを左右するといっても過言ではないだろう。

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暗がりの気になる北側居室。
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室内でのレベル差。
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最果ての洗面スペース。
というわけで、最終的にどうなったか。完成図面がこちらである。
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結論、古民家の間取りはかなりフレキシブル!

いかがだろうか。時を刻んできた縁側の床材はそのままに、その他の部分は畳からフローリングに一新。間仕切りは取り払って広いLDKとして活用しつつ、北側には少々暗くても落ち着く寝室を配置。

また、水回りはガラッと位置を変え集約。キッチンと脱衣室も近づき、家事動線としてもグッと便利に。
土間を広げ、吹き抜けにしたことで北側にあっても明るいキッチンを実現した。

図面からも、以前と比べて現代的な生活がイメージしやすくなったのではないだろうか。

もちろんここに来るまでに膨大な図面を供養し、つまりそこには工務店さんの多大なる苦労があった。最終図面の完成までに要した時間は半年間。

つまり、古民家であってもそれだけのバリエーションが作れるのである。言ってしまえば、古民家の材料は「木」「石」「土」。柱は動かせなくても(抜ける柱もある)、多くの場合壁は取り払えるし(耐震など検討は必要)、床もはがして張り替えられる。水回りも、大規模なリノベーションであれば配管工事をやり直すことも多く、そうなれば大幅な位置変更も可能なのだ。

私たちが当初想定したよりも、はるかに自由でフレキシブル。「明るさ」「安全」「快適」はどれも解決され、最終的にとてもしっくりする間取りに仕上がった。
完成した部屋はこちらである。

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採光のとれる南側を一体のリビング・ダイニングに。
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薄暗かった北側は天井を漆喰にして反射光を採り入れつつ、間仕切りを取り払って明るい空間に。
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室内の段差は一カ所で吸収し、危険スポットを解消。
ただ、図面が完成してからこんなに美しく生まれ変わるまでも、もちろん様々なアクシデントに見舞われた。
なぜなら、古民家だからである。

解体工事中に想定外の事が起きたり、予定通りに進まないこともしばしば。

次回、工事編につづく。

文・写真:小林 友紀(こばやし・ゆき)
大学卒業後、大手総合PR会社にて日用品メーカー・製薬会社・商業施設など幅広い広報業務の支援に従事。5年のPRキャリアを積み、2020年に愛媛県今治市にUターン。現在はフリーランスとして活動中。2児の母。大学在学中には、島根県美郷町の「地域おこし協力隊」を務めた。

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