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【福島県浪江町】避難指示解除後、町を上げて取り組んだ花卉生産と「浪江町フラワープロジェクト」

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『Social Good in TOHOKU』は、 2011年3月11日に東日本大震災があった東北の“いま”を伝えるコーナーです。東北で生まれているソーシャルグッドなプロジェクトや地域で活動する人々を紹介します。

目次

花で町の農業を盛り上げる。 「浪江町フラワープロジェクト」。

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トルコギキョウは、東日本大震災以降、浪江町など被災地域で栽培が拡大している。
福島県沿岸部に位置し、海、山、川に囲まれた自然豊かな浪江町。東日本大震災時の原発事故によって全町避難を経験し、居住人口ゼロという状況が約6年間続いたが、2017年3月に一部地域の避難指示が解除され、町の営みが少しずつ戻ってきている。その浪江町では近年、「花のまち・浪江」を合言葉に、トルコギキョウをはじめとした切り花の生産に力を入れている。
浪江町ではもともと稲作が盛んだったが、原子力災害の影響もあり、食料となる作物の栽培は難しい状況であった。2013年、町内への立ち入りが制限される中で、いち早く農業の再開に取り組んだNPO法人『Jin』の代表(当時)・川村博さんは、風評被害を受けにくい花卉生産に着目。川村さんは、長野県の花卉農家のもとに通ったり、福島県の指導員に教わったりしながら、栽培技術を習得していった。
そして2017年、川村さんが丹精込めて育てたトルコギキョウが「フラワーオークションジャパン オブザイヤー」の優秀賞を受賞。浪江町のトルコギキョウに対する評価がぐっと高まり、多くのメディアでも紹介された。『Jin』の功績は浪江町の農業にも大きな影響を与え、町内の花卉農家の数は徐々に増えていった。
翌2018年の「世界らん展」への出品を機に、「浪江町としても町内の花卉農家の活動や取り組みを応援し、町外に発信しよう」と、「浪江町フラワープロジェクト」がスタート。浪江町役場では、町内の花卉農家と密にやり取りをしながら、PRに力を入れている。

「浪江町は福島県内でも日照時間が長く、花の栽培には適した環境です。それに加え、『Jin』さんをはじめとする花農家のみなさんの努力もあって、東京の市場などでも浪江町の花卉のクオリティに対する評価は高くなってきており、ブランド力がついてきたことを実感しています」と、フラワープロジェクトを担当する浪江町役場農林水産課の鈴木俊哉さんは話す。

浪江町の花卉農家は現在9軒。定期的に勉強会を行うなど、花卉農家同士の連携もある。花卉生産だけでなく浪江町の農業を盛り上げていこうという機運も高まっており、町外からの就農・移住に関する問い合わせも増えているという。浪江町フラワープロジェクトでも、前年度から就農・移住を考えている人に向けたコンテンツを拡張させてきた。今では、花に限らず町の農業全体をPRするため、就農支援制度の周知や、就農イベントへの出展などを行っている。
「花卉生産は、震災後の浪江町の新たな産業として成長してきました。今後は、花農家さんに限らず、町外からの移住就農者を増やしていくための情報発信に力を入れていきます」と鈴木さん。浪江町の農業が、再び花開こうとしている。
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色とりどりの浪江産トルコギキョウは、『道の駅なみえ』でも販売されている。
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出荷作業の様子。トルコギキョウは彼岸やお盆、母の日などに需要が高まる。
text by Makiko Kojima photographs by Namie Town
記事は雑誌ソトコト2023年5月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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