MENU

Contents

日本のローカルを楽しむ、つなげる、守る。

Follow US

【アウトドア】命を守る最終手段。クマ撃退スプレーの「正しい選び方」と「使い方」

  • URLをコピーしました!

「クマ撃退スプレーを買ったけれど、使い方がわからない…」。そんな声が増えています。2025年はクマ被害が過去最悪のペースで推移しており、死亡者数は11月5日現在で13人に達するなど、深刻な状況が続いています。登山やキャンプを楽しむ人にとって、クマ撃退スプレーは「命を守る最終手段」。しかし、正しい知識がなければ、いざという時に役に立ちません。

目次

「ニセモノ」のクマスプレーが出回っている

まず知っておくべきは、市場には「ニセモノ」のクマスプレーが出回っているという事実です。本来の用途は「対人用の催涙スプレー」にもかかわらず、クマ被害拡大に便乗して「クマスプレー」と銘打って販売する事例が急増しています。

クマ撃退用に作られていないスプレーを間違えて購入してしまうと、万が一クマに遭遇してスプレーを噴射しても、クマを撃退する効果はありません。人命を危険にさらしかねない状況を、専門家も強く危惧しています。

本物を見分けるポイントは「EPA登録」

本物のクマ撃退スプレーを見分けるポイントは、アメリカの環境保護庁(EPA)に「クマスプレー」として登録されているかどうかです。製品にEPA登録番号が記載されているものを選びましょう。

選ぶべきスプレーの条件

  • EPA登録番号がある
  • カプサイシン含有量が1.0〜2.0%程度
  • 噴射距離が7〜10m以上
  • 噴射時間が6〜10秒程度
  • 専用ホルスター付き

主要な信頼できるブランドとしては、カウンターアソールト、フロンティアーズマン ベアスプレー(SABRE社)などがあります。日本製では、酪農学園大学の佐藤喜和教授が監修した国産スプレーも信頼性が高いとされています。

「5mまで引きつけて噴射」が鉄則

実は、クマ撃退スプレーの使い方には重要なコツがあります。それは「5mまで引きつけてから噴射する」ということです。

メーカーが公表している噴射距離は、室内で計測された最大値です。実際の使用では、風の影響を受けるため、メーカー公表値の半分程度、場合によってはそれ以下と考えるのが妥当です。10mの距離で噴射しても、風で飛ばされて効果がありません。

専門家が推奨する噴射距離は「5m前後」。怖いですが、5m程度まで引きつけてから噴射しないと、効き目が薄いのです。理想的には、5m、3m、2mと段階的に噴射します。ほとんどのクマは、最初の5mの距離での噴射で逃げるとされています。

実践で役立つ使い方のポイント

携帯する場所が命運を分ける すぐ使えるようにしておくのが一番大事です。ザックの中に入れていては意味がありません。専用ホルスターを利き手と逆側の腰に装着し、いつでも取り出せる状態にしておきましょう。

安全装置の解除を練習しておく 購入時にセーフティークリップを固定している黄色や白のテープは、登山前に切っておきます。そして、安全装置(セーフティクリップ)を外す動作を繰り返し練習しておくことが重要です。訓練用スプレーでの練習も有効です。

噴射の姿勢とタイミング

  1. ホルスターからスプレーを取り出す
  2. セーフティクリップを後ろに引いて外す
  3. 腕をまっすぐ前に伸ばし、スプレー本体をやや下方向(60〜45度)に傾けて持つ
  4. クマの顔と目を狙い、3秒間噴射する
  5. 成分が霧状に広がりクマとの間にバリアを作る

できるだけ風上に移動してから噴射しましょう。風向きの確認が難しい場合でも、多少自分にかかることを覚悟の上で使うしかありません。

実際に命を救った事例も

クマ撃退スプレーの効果は、実際に証明されています。

2022年3月、札幌でクマの冬眠穴を調査していたNPO職員2人が母グマに襲われた際、スプレーを2本使い切ったところで母グマが逃げました。これは実際に人が襲われたケースにおいて、スプレーで撃退できた初めての例とされています。

2023年10月、道東の阿寒町で親子連れのクマと遭遇し、母グマに噛み付かれた男性も、右肩を噛まれたままスプレーを噴射し、なんとか逃げることに成功しました。

北米では、90%以上の確率でヒグマ攻撃を止めた効果があるというデータもあります。

クマに遭わないことが最優先。

ただし、クマ撃退スプレーはあくまで「最終手段」です。何よりもクマに遭わないことが一番重要です。

クマに遭わないための基本対策

  • 熊鈴やラジオで人間の存在を知らせる
  • できる限り複数人で行動する
  • 明るい時間帯に行動し、薄暗い時間を避ける
  • 見通しの悪い場所では声を出す
  • 最新の出没情報をチェックする

クマは臆病な性格で、基本的には人を見つけると逃げます。クマに遭わないための努力をどれくらいできるかが大事なのです。

保管と廃棄の注意点。

保管方法 公式使用期限は製造後4年ですが、温度変化の少ない日陰で保管すれば8〜10年機能した事例もあります。ただし、高温になる車内や直射日光の当たる場所には置かないでください。

廃棄方法 使い切った缶は穴を開けず、透明袋で家庭ゴミへ。残量がある缶は、清掃事務所や消防署で無料回収してくれる場合があります。自治体のルールを確認してください。

知識と準備が命を守る。

2025年はクマ被害が史上最悪レベルで推移しています。登山やキャンプを安全に楽しむためには、正しい知識と適切な装備が不可欠です。

クマ撃退スプレーは、正しく選び、正しく使えば、命を守る強力な武器になります。しかし、間違った製品を選んだり、使い方を知らなければ、いざという時に役に立ちません。

「備え・習熟・処分」の3段階を徹底することで、クマ撃退スプレーは命を守る最終防衛線として確かな効果を発揮します。

アウトドア活動前に、ぜひもう一度、スプレーの選び方と使い方を確認してください。


参考情報

  • 環境省「クマ類の出没情報」
  • 知床自然センター「ヒグマ対処法」
  • 酪農学園大学 佐藤喜和教授監修
  • SABRE社公式使用手順

※クマ撃退スプレーは劇物です。取り扱いには十分注意してください。 ※喘息気味・皮膚の過敏症の方、コンタクトレンズをつけている方、アレルギー体質の方は使用を避けてください。

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

よかったらシェアしてね
  • URLをコピーしました!

関連記事