「摂食障害」から月経が止まってしまう女性も……「無月経で女性ホルモンが減ると骨が弱ってボロボロに。生理がこないことを放置しないで」

「摂食障害」から月経が止まってしまう女性も……「無月経で女性ホルモンが減ると骨が弱ってボロボロに。生理がこないことを放置しないで」

2022.11.09

『フェムテックtv』で人気の産婦人科医・池田裕美枝先生こと“ゆみえ先生”が、女性の悩みや性の疑問などに答える本連載。今回のテーマは「摂食障害」です。摂食障害が原因で無月経になり産婦人科を訪れる女性も少なくないというこの疾患に関して伺っていきます。

なぜ摂食障害から無月経に?

「摂食障害とは、食べるという行為を自分でコントロールできなくなる病です。極端な食事制限、過食、自発的な嘔吐などの行為や、どれだけ体重が落ちても“自分は太っている”と思い込むなどの身体に対するイメージの歪み、また体重が増えることに対する強い恐怖心や痩せることへの異常な執着などの症状を伴います。とても男女差が大きな疾患で、女性の方が男性よりも圧倒的に多いのも特徴です」(ゆみえ先生・以下同)

―最近、摂食障害が原因の無月経で婦人科を受診される女性も多いと聞きました。

「そうですね。体重が極端に減ってくると、人間の脳は排卵を止めるよう身体に指示を出します。それによって月経が止まってしまい、『最近、生理が来ないんです』と相談にやってくる患者さんも少なくありません」

―なぜ体重が減ると排卵を止めようと働くのでしょう?

「私たち女性の身体は、体重減少の場合だけではないのですが、極度のストレス状態に陥っている時には妊娠を避けるため、排卵を抑制するようにできています。それは、私たちの祖先がまだ森に住んでいる頃からの生きる知恵でもあります。

たとえば、食べ物がない極度の飢餓状態のときに女性が妊娠してしまったら、母体もお腹の赤ちゃんも共倒れになってしまいます。食べ物がなく、痩せてしまうような極度のストレスがかかっているときには、自分自身の命を守るためにも排卵が止まるのです」

―極端に痩せてしまうと、身体が「今は飢餓状態だから排卵ストップ」と信号を出すのですね。

災害が無月経の要因になることも

「月経が止まってしまう要因の1つは、今、お話しした極端に痩せてしまうなどの飢餓状態のときですが、それ以外にも、大怪我や環境の変化にさいなまれたときなどにも脳が大きなストレスを感じ、排卵を止めてしまうことが分かっています。たとえば東日本大震災が起こったとき、被災者の女性たちのなかには無月経になってしまった方も少なくはなかったと聞きます」

―たしかに、日々のちょっとした環境の変化でも生理周期が乱れたりしますよね。

「それだけでなく、大きなストレスがなくても、単に体重が急激に減ってしまった際に月経が止まってしまうこともありえます。これらは単純性体重減少性無月経と呼ばれ、中学生や高校生にも多い病態です」

―摂食障害の患者さんが産婦人科を受診した場合、どんな治療がなされるのでしょう?

「患者さんのその時点での体重によって、治療方針は変わってきます。BMI(※)の数値が16以上の患者さんの場合には、飲み薬や塗り薬、張り薬などを処方して、女性ホルモンの補充を行うのが一般的です」

無月経と骨折の関係性

「そもそも私たち産婦人科医はみんなが摂食障害の専門ではないので、摂食障害の根本治療を産婦人科だけで行うことはあまりありません。摂食障害は、心の専門家と身体の専門家、それとご本人や周囲の方で協力しあって治療することが多いのです。そんなチーム医療の中で、私たち産婦人科医の役割は、無月経になってしまった患者さんの骨をしっかり維持することだと考えています」

―月経と骨ですか! すぐには結びつきませんが、どのように関係しているのでしょう?

「月経が止まってしまうと、閉経したのと同じ状態になり、女性ホルモンが十分に分泌されなくなります。実は女性ホルモンは、骨を維持する働きも担っており、無月経を放置していると、どんどん骨密度が下がって骨がスカスカの状態になってしまいます。

骨がスカスカになると骨折しやすくなります。背骨が知らない間に折れると、腰や背中が曲がってしまう原因にもなります。しかも、骨は一度スカスカになると、元通りになるのが非常に困難なのです。

だから、できるだけ現状維持できるよう早めに治療するのが大切です。摂食障害などで女性ホルモンが減って無月経になってしまった患者さんには、骨を保つために女性ホルモンを補充する治療を行います」

低体重だとホルモン治療ができない?

―逆にBMIが 16以下の患者さんにはどんな治療がされるのですか?

「16以下の低体重の患者さんには、女性ホルモン治療は行えません。ホルモン治療で月経が再開してしまうことで体力が消耗し、そのことが体重増加を阻んでしまう悪循環が起こってしまうからです」

―低体重の患者さんは、まずは体力を温存し、体重をBMI16以上まで戻すことに専念してもらうのですね。

「その通りです。また、そもそも人間の骨はある程度の負荷がないと強くはなりません。骨の細胞は、一度壊れることをトリガーに新たな骨細胞が生まれます。運動をしたり、日常生活のなかで体重を支える動きのなかで骨に負荷がかかり、骨細胞が分裂して骨は強くなります。

あまりに体重が少ないと、骨に対する負荷も少なくなってしまい、骨がどんどんもろくなってしまうのです。それを防ぐためにも、BMI16以下の患者さんには体重の増加を先決していただきます」

―摂食障害が骨に及ぼす影響や、女性ホルモンとの関係など、初めて知ることも多かったです。次回は「摂食障害とPMS」などに関して伺っていきます。

※BMIとは

「ボディマス指数」と呼ばれ、「BMI = 体重kg ÷ (身長m)2」で算出される体格指数のこと。これが18.5〜25の間が標準指数だと言われています。これより少ないと低体重、多いと肥満にカテゴリーされます。

池田裕美枝(いけだ・ゆみえ)先生 
●京都大学医学部卒業。「市立舞鶴市民病院」「洛和会音羽病院」にて総合内科研修後、産婦人科に転向。現在は「二宮レディースクリニック」での産婦人科外来、「神戸市立医療センター中央市民病院」の女性外来、「京都大学医学部附属病院」の女性ヘルスケア外来を担当。また、SRHR(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツ)の勉強会や啓もう活動を行う研究会「SRHR Initiative」の代表も務める。

フェムテックtv
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木川誠子(きがわ・せいこ)●ライフオーガナイザー1級、アロマ心理の資格を保持。出版社勤務を経て2009年に独立。編集者・ライターとしての経験を活かし、ライフスタイルを仕立てる(tailor)を意味するライフスタイラーとして、美容や食など様々な角度からライフスタイルの情報を発信。ライフスタイルは感性や感覚、体験などで構築されて、ひとりひとり異なるもの。自分自身で感じた感覚を大切に、独自の体感や実感を取り入れながら、雑誌やWEBメディア、カタログなどでの執筆活動をはじめ、メーカーブランディングなども行う。また、姉妹で、完全予約制のプライベートショップ「KIRA CLOSET」を主宰し、ワークショップや食事会を企画、開催。食事会でのメニューはお手軽でありながら、さり気ないおもてなし感が特徴で、レシピは定期的にメディア掲載中。