日光街道沿いにある歴史ある町、栃木県鹿沼市でいちばんおもしろい人たちが集まる「カヌマ大学」。まちのあちこちを「教室」に、誰でも「学生」、まちの人たちが「先生」というスタイルで2013年から活動を継続してきた。この日訪れた住民と栃木県知事との対話集会でも地元のユニークな活動として取り上げられたカヌマ大学の、学長・藤田亀吉さんとスタッフ・名塚久貴さんにお話をうかがった。
好きなことを分かち合いながら、事を起こす人を生み出す。
カヌマ大学は毎月1回、地域に根付いた当たり前の生活文化と学校では教えてくれないサブカルチャーをテーマに、ひとくせあるプログラムを提供している。この日も知事や市長をはじめ、地元の有力者たちが集まる会合で、藤田学長は臆することなくカヌマ大学のプログラムを披露。「東武電車に手を振ろう♪」、「給食を食べよう インド煮の伝説に迫る」など、固い頭には理解しづらい授業が並ぶ。
「東武電車に手を振ろう♪」は、田園風景の続く線路脇の小径から通り過ぎる東武電車に手を振ったら、いったい何人の人が手を振り返してくれるのかという授業である。「一種の社会実験ですね」と藤田学長。「給食を食べよう」を始めるきっかけは、鹿沼では誰もが知る給食メニュー「インド煮」がほかの町では知られていないとわかり、調べてみると、地元の栄養士・大西和子さんが開発したオリジナルメニューと判明したことだった。大西さんに教わりながらワークショップを重ねるうちに、農産直売所『あぜみち鹿沼店』のお総菜に採用されることが決まり、お披露目会には市長が訪れるほどのイベントとなった。
ほかにも、あまり詳しくないけれど知りたいことがある女子の質問にマニアが全力で答える「スターウォーズ・ジェダイの復習」、孤立しがちなカープファンに呼びかける「それ行けカープ!」には3人が集まり大いに盛り上がった。「東京スリバチ学会」とともに鹿沼で「スリバチ」をめぐる授業もあった。グラハム・カーの「世界の料理ショー」を気鋭のシェフ・上村真巳さんが忠実に再現する特別授業「カミムラ・カーの世界の料理ショー」はすぐに満席となり、翌日まで胃もたれする溶かしバターたっぷりの料理をみんなで堪能したという。
カヌマ大学の授業に参加することは、人を知り、町の情報を知ること。3代前から鹿沼で暮らす名塚さんも、新しいおもしろさと楽しみ方を知り世界が広がったと話す。
6代前から鹿沼に暮らす藤田学長のアイデアは尽きることなく、実現されるべき授業プランのリストには100以上のテーマが並んでいる。カヌマ大学が目指しているのは、好きなことを分かち合いながら、事を起こす人を生み出すこと。鹿沼には生活文化とサブカルチャーをテーマに、ひねりを利かせたプログラムを勝手に作り、楽しむ、大人たちが集まってきている。
カヌマ大学
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