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サスティナビリティ

高解像度化が進むのは映像だけではない! 音の世界も「ハイレゾ(高解像度)」に! クリプトンが送り出すハイレゾスピーカーで、私たちの暮らしは大きく変化する!

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2021年は、Apple Musicで配信される音源が「ロスレス」や「ハイレゾロスレス」になったり、Amazon Music Unlimitedの利用者は追加料金無しで「Amazon Music HD」を利用できるようになったりと、音楽配信サービスの「ハイレゾ化」が進み、「音」の環境が大きく変化する年になりそうです。 「ハイレゾは体全体で聴いてほしい。いい音は暮らしを楽しく豊かなものにしてくれる」と語るのは、高音質にこだわったモノづくりを行っているクリプトンの浜田会長。日本で初めて「ハイレゾ音源のDRMフリー音楽配信、及びハイレゾ対応スピーカーシステム」を手がけた浜田会長に、ハイレゾが私たちの暮らしにどのような影響を与えるのかを伺いました。

目次

そもそも、「ハイレゾ」って何?

筆者 AppleやAmazonという大手が、本格的に「ハイレゾ」配信事業をスタートさせました。音の世界はハイレゾが標準になる流れになりつつありますが、そもそも「ハイレゾ」とは何かを教えてください。

浜田正久(以下、浜田) ハイレゾは「ハイ・レゾリューション」の略で、「ハイ(高い)・レゾリューション(解像度)」、つまり「解像度の高い音」という意味になります。ようは「いい音」のことですね(笑)。
「いい音」の定義ですが、私が思うには原音が最もいい音であり、ハイレゾはその原音そのもの、あるいは限りなく原音に近い音としていいのではないでしょうか。

筆者 映像は技術的な進歩によって「高解像度」になっています。2Kから4K、そして8Kへと、年々高解像度化が進んできましたが、音の場合は、最高のものが原音としてすでにある、ということなのでしょうか?

浜田 そうです。「マスター音源」と呼ばれる「原音」がレコードの時代から存在しています。音の世界は不思議なもので、「原音のファイルサイズを小さく」して、CDやMP3のような音楽ファイルに収録してきました。そしてよりいい音で聴くために高額なステレオセットを使用し、「原音に近づけて再生」してきたわけです。原音をそのまま再生するのが一番いい音で聴けるのに、技術的にそれができなかったんですね。

筆者 ハイレゾが「いい音」であることはわかりました。少し専門的な話になるかもしれませんが、ハイレゾの定義をわかりやすく教えて頂けますか?

浜田 音質を判断する単位として、「bit(ビット)」と「Hz(ヘルツ)」というものがあり、この2つは情報量を示しています(「○○bit/○○Hz(または○○Hz/○○bit)」と表示される)。
bitは、記録できる音の大きさの段階の数を示していて、数値が高くなるほど原音に忠実な音になります。Hzは記録できる音の高低を示していて、数値が高くなるほど、低い音から高い音まで記録されています。この2つの数値が高いほうが、原音に忠実でいい音になるということです。24bit/96kHz以上のものをハイレゾと定義するのが一般的です。

筆者 CDと比べるとどのくらい違うのでしょうか?

浜田 16bit/44.1kHzがCDの規格なので、この数値をきちんと計算して比較すると、ハイレゾはCDの500~1,000倍の情報量を持っていることになります。聴き比べると、ハイレゾのほうが圧倒的にいい音に聴こえますので、明確に違いがわかりますよ。

クリプトン

筆者 このハイレゾを事業として日本で最初に着手したのはクリプトンだと伺いました。

浜田 その通りです。ハイレゾといえばS社さんの名前を思い描く人が多いのですが、ハイレゾをハード・ソフトの事業として最初に手がけたのは、実はクリプトンなんですよ。
私が初めてハイレゾを聴いたのは、2009年。リン・プロダクツ(LINN Products)というイギリスの高級総合オーディオ・メーカーの社長に聴かせてもらったんですが、そのときはパソコンで再生してもらったんです。ステレオではなくパソコンなわけですから、心の中では「パソコンから流れる音が、いい音なわけがない」と高をくくっていました(笑)。
ところが、パソコンから再生されるハイレゾの音楽があまりにもいい音だったので、驚愕したのを覚えています。
ちょうど、私たちもDRM(Digital Rights Management system/著作権管理システム)フリーの音楽配信ビジネスを考えていたので、「配信する音源はハイレゾでなければ、新しくやる意味がない」と、考え方をあらためました。
それまでの音楽配信サービスはDRMフリーでは無いため、限定されたパソコンでしかハイレゾ音源を聴くことができなかったのですが、「HQM」という配信サイトを立ち上げ、日本で初めてハイレゾ音源のDRMフリー配信をはじめたんです。最初はクラシックの名盤を数多く録音してきたカメラータ・トウキョウ様と組んで、1,000タイトルくらいのウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のメンバーを中心としたクラシック音源をDRMフリーで配信したんです。これはまだ音源にDRMをかけるのが一般的な当時としては大変に画期的なことでした。

筆者 S社よりも先に着手していたのですね。ハイレゾにこだわって来たのは、高音質の驚き以外に特別な理由があったのですか?

浜田 当社の企業理念は、「唯一無二のおもしろいことを、それがクリプトン」です。ですから、日本では誰もやっていないことをやりたいというのがまずありました。
そしてやはり私がハイレゾを聴いたときの「感動」を、日本の皆さんにも体験してほしい
という思いが強かったです。
ハイレゾのDRMフリーを始める前に、ウィーン・フィルのヴィオラ奏者でウィーン“モーツァルティステン”の指揮者でもあるハンス・ペーター・オクセンホファーさんとチェリストのローベルト・ノージュさんに当社のスタジオへ来ていただき、音源の違いを体験してもらったんです。すると「CDの音源は、実は私たちの演奏の50点程度。でも、この音源(ハイレゾのDRMフリー)は80点! これなら配信してほしい」と、超一流の人に合格点をもらえたことも、思いを強めた理由のひとつです。

筆者 ところでハイレゾはデジタルの音声ファイルデータだと思うのですが、私たちが聴く音はアナログですよね? 音は空気を振動して伝わってくるわけですから。すると音源がハイレゾであったとしても、最終的にはアナログに変換する必要がありますよね。そのためにはステレオ・セットやプレーヤーのような機器が必要なのではないでしょうか?

浜田 はい、その通りです。最終的にはアナログに変換しなければいけませんし、ハイレゾを再生させる機器も必要です。クリプトンにはオーディオ部門があり、その主力商品は「スピーカー」です。このスピーカーは音を再現する最後のアイテムのひとつです。より多くの日本の皆さんに、「とてつもなくいい音」だと驚きと共にハイレゾを体験していただくために、別売のアンプなどを必要としない、ハイレゾ音源をそのまま再現するオールインワンスピーカーを作ったのです。それがKSシリーズです。

クリプトン

コロナ禍によって自宅で過ごす時間が増えた今だからこそ、いい音はカラダ全体で聴いてほしい

筆者 「ハイレゾはスピーカーで」とスピーカーにこだわるのは、やはりスピーカーメーカーだからなのでしょうか?

浜田 スピーカーメーカーとして、高音質にこだわったモノづくりをしてきた経験とノウハウがありますから、イヤホンやヘッドホンではなくスピーカーをつくるのは自然な流れです。音を最後に表現するのはスピーカーです。映像におけるテレビのようなものです。ただ、それまでのスピーカーはハイレゾ再生に対応しきれていなかったので、すべてのスピーカーをハイレゾ対応に設計変更しました。
スピーカーにこだわる理由は、ハイレゾのいい音はカラダ全体で聴いてほしいという思いがあるからです。耳だけで聴くのではなく、体全体で聴いてほしいのです。
先ほど「bit」と「Hz」の話をしましたが、実は人間の耳が聴き取れるのは20kHzまでと言われています。それを超える音は、個人差はありますが「耳では聴き取れない」わけです。それなのに、ハイレゾに収められている48kHz、96kHz、192kHzという音を聴いてみると、明らかに違いがわかる。耳では聴き取れていないはずなのに明らかに違う。このことは、人間が音を耳だけで聴いているわけではなく、体全体で空間を伝わってくるその振動を聴いているからなのではないでしょうか。

筆者 大橋力さんという方が、超高周波が脳深部を劇的に活性化させることを通じて、心身全体の働きを高める現象のことを「ハイパーソニック・エフェクト」と定義されています。

浜田 たとえ耳には聴こえない帯域の音でも、体全体で聴くからこそ、感動するのではないでしょうか。
たとえば同じ音楽を聴くにしても、コンサートホールで生演奏を聴くのと、スマホからヘッドフォンで聴くのとでは、感動が全然違いますよね。これは臨場感の違いもありますが、それよりも耳だけで聴いているか、それともカラダ全体で聴いているかの差があると、私は思っています。耳では聴き取れない音はカラダ全体で聴く。だからハイレゾはカラダ全体で聴いてほしいのです。そのためにはヘッドホンではなく、やはりスピーカーという答えになります。

筆者 ハイレゾをスピーカーで聴くことによって、聴覚だけではなく、触覚などの他の五感にもいい影響を与えるということですね。得られる感動も大きく変わりそうですね。

浜田会長

浜田 実は「自宅ではスピーカーで楽しむ」と言い続けているのにはもうひとつ理由があって、イヤホンやヘッドホンを使用しすぎている、あるいは大きすぎる音量で聴いていると、難聴になるリスクが高くなるという研究結果がWHO(世界保健機構)からも出ているからです。「ヘッドホン難聴」や「イヤホン難聴」と呼ばれるもので、音を伝える役割をしている有毛細胞が徐々に壊れてしまうことで難聴になってしまうのです。一度難聴になってしまうと二度と治りません。そうならないためには、ヘッドホンやイヤホンでは大きすぎる音量で聴かない、長時間の使用を避けることなどがポイントになるのですが、外出時はスマホや携帯音楽プレーヤーを使ってヘッドホンやイヤホンで聴くことになると思いますので、せめて家ではスピーカーで聴いてほしいのです。
特に若い人たちは、「スマホで音楽を聴く=ヘッドホン・イヤホンで聴く」という固定観念があると思いますので、スマホとスピーカーをBluetoothでつないで、手軽にスピーカーから聴いてほしいです。もちろん、カラダ全体で聴いてほしいですね。好きな音楽がもっと好きになると思いますよ。

WHO
1.1-billion-people-at-risk-of-hearing-loss
https://www.who.int/vietnam/news/detail/10-03-2015-

筆者 日本の住環境を考えると、隣近所と距離のある一軒家であればスピーカーを使えますが、都心のマンションやアパートでは「大音量」では使いにくいと思うのですが

浜田 スピーカーでいい音を鳴らす、というと、どうしても「大音量」をイメージしますよね。確かにハイレゾを大音量で鳴らすのも楽しみ方のひとつではありますが、私がお勧めしたい楽しみ方は、「小さな音量で楽しむ」ことなのです。

筆者 大きな音でなく、小さな音でもハイレゾを体験できるということですか?

浜田 私がハイレゾの楽しみ方として提案したいのが、「ニアフィールド(Near Field)」という聴き方です。2つのスピーカーを自分の近くに配置し、スピーカーと自分との3点を結んでフィールドを作ります。そしてハイレゾの音楽をスピーカーから小さな音量で聴いてみてください。音の解像度が高いので驚くほどいい音で聴くことができますし、音の奥行きも感じられますよ。
お勧めは、寝る前に自分の好きな音楽(できれば落ち着ける、リズムが激しくないもの)をニアフィールドで聴いてみてください。とてもリラックスできますよ。

筆者 ハイレゾは、日本の住環境で音楽を楽しむのに最適とも言えますね。Bluetooth接続以外にも、テレビとは光デジタルケーブルで接続できるそうですが、テレビに接続して使用すると、何か変わりますか?

浜田 もちろん、楽しみが100倍変わりますよ(笑)。これまた不思議なもので、「音がよくなると映像もきれいに見える」のです。もしかしたら気のせいなのかもしれませんし、私だけなのかもしれませんので、あくまでも個人の意見ですが(笑)、脳の中で画と音の神経がつながって相乗効果があるような気がします。
「音なしの映画は泣けない」という意見もあるように、映画は音質が変わると得られる楽しみが変わります。映画館では大きなスクリーンだけでなく、素晴らしい音響設備によっていい音を体験できます。自宅でも同様に、音にこだわって映画を見てほしい。最近のテレビは画質が素晴らしくきれいですし、4K放送やブルーレイなどもあるので、映像だけでなく音質も一昔前とは違います。ですからたとえ放送波自体がハイレゾ音源でなくてもテレビにハイレゾ対応スピーカーを接続するだけで音が変わりますから、映画館に負けないレベルで映画を楽しむことができます。もちろん、ニアフィールドで小さな音量で見ることもお勧めですよ。

筆者 映画はアクションものからラブロマンスものまで楽しめそうですね。それ以外でも変化はありますか?

浜田 スポーツ番組や音楽番組もガラッと変わりますよ。大げさに聞こえるかもしれませんが、「臨場感」が変化します。
スポーツは無観客や入場制限のために、「観客がいなくて声援がないから盛り上がらない」という意見もありますが、ハイレゾ対応スピーカーを使えばきめ細やかな音が聞こえるので、普段は聞こえない選手の声や打撃音などが聞こえます。いつもとは違った「臨場感」のようなものが体験できます。
ちなみにサッカーの「ユーロ2020」では、6万人以上の観客を入れて開催した試合もありましたが、これはこれで大迫力。スタンドから観ているような臨場感だったという感想をもらっています。

筆者 音楽番組はどうですか?

浜田 ブルーレイのライブディスクはぜひ体験してほしいですね。これはもう言うまでもありません(笑)

筆者 コロナ禍によって、自宅で過ごす時間が増えました。ハイレゾ対応スピーカーによって「おうち時間」が楽しくなりそうですね

浜田 映画でもスポーツでも音楽でも、本来であれば「ライブ」が一番いいものです。映画であれば映画館、スポーツは試合会場、音楽はライブ会場と、現場で観るのが一番盛り上がりますし、感動します。また、気心の知れた人と一緒に行くことで、楽しみや感動は増しますし、いい思い出にもなります。
しかし、新型コロナ感染症によって、それが自由にできなくなってしまいました。だったら、できるだけ「ライブ」に近い状態を自宅でも体験できないかと考えたときに、その重要なポイントが「音」にあるのではないでしょうか。ハイレゾ対応スピーカーをテレビに接続し、映画やスポーツを楽しむ。手軽に音楽が聴きたいときにはBluetoothで接続すれば、スマホやパソコンに入っている音楽を再生できる。そして「いい音」をカラダ全体で体験することで、このような世の中であったとしても、生活を楽しくできるのではないでしょうか。

クリプトン

「唯一無二のおもしろいことを、それがクリプトン」のモノづくり

筆者 アンプに接続して使用する通常のスピーカーではなく、かといってパソコン用やテレビ用のスピーカーとも言えない。KS-11をはじめとするKSシリーズはどの枠にも当てはまらない、新たなカテゴリーのスピーカーのように感じるのですが

浜田 先日、ある賞を頂いたのですが、カテゴリーが「デスクトップオーディオ大賞」でした。審査する側もどのカテゴリーにすればいいのか悩んだのではないでしょうか(笑)。
もし、会社として新しくはじめることが、すでに他の企業や誰かがやっていることであるならば、人のものを奪うことだということができます。「限られたパイの奪い合い」ということですね。私は、新しく事業をはじめることは社会的に意義のある新しい市場を創造することとイコールであるべきだと考えています。新たな市場を創造して、そこでシェアを獲得して経営していく。

筆者 まさに「唯一無二のおもしろいことを、それがクリプトン」そのものですね。

浜田 クリプトンはオーディオ以外にも医療の手術画像の高解像度化に加え、教育改革におけるe-learning事業を手がけ、単位取得が認められる遠隔授業システムとして大学へも提案し、ご採用いただく案件も増えてきています。「最初に手がけた企業のシェアは数%、次に手がける企業がシェアの80%を占有する」とも言われますが、私にとって重要なのはシェア率ではなく、最初に手がけたかどうかです。最初に手がけた企業は歴史に名を刻むことができますよね。そして仕事の本当のおもしろさ、やりがいなどは、たとえ数%のシェアしかなくても、最初に手がけるからこそ得られるのではないでしょうか。クリプトンは企業規模からいって数%のシェアを取れればなんとか経営が成り立ちますから、まあ、負け惜しみですかね(笑)。やはり「一番手かどうか」「新しい市場を作り出せているか」が大事なのです。

筆者 KS-11の特徴についても教えてください。クリプトンのスピーカーとしてこだわったことはありますか?

浜田 クリプトンのKXシリーズというパッシブ型のスピーカー群は密閉型にこだわっています。通常のスピーカーは背面などに丸い穴を空けることで低音をつくり出しています。密閉型だとこの手法が使えませんので、低音をきちんと鳴らすためには高い技術が必要です。一方で密閉型には本当の意味での広帯域再生ができるというメリットがあります。現在密閉型のスピーカーを作っているのは国内メーカーではクリプトンだけですし、海外では数社あっても、全てが数千万(安くても数百万)台のもので、しかもサイズが大きいのです。
そしてもう一方、KS-11などKSシリーズのスピーカー群は、「できるだけ多くの人に手軽にハイレゾを体験してほしい」という思いでつくりました。アンプを内蔵しているので別売のアンプは不要ですし、USBやBluetooth、光デジタルケーブルで、パソコンやスマホ、テレビと簡単につないで使うことができます。

クリプトン

筆者 いわゆるステレオセットなどの機器は必要ない?

浜田 必要ありません。原音が「ハイレゾ」なんですから、原音をそのまま忠実に再現するのが一番いい音になりますよね? それと扱いやすいサイズには徹底的にこだわりました。とはいっても、やっていることは当社のいつものモノづくりと何も変わりません。
音はアナログです。スピーカーメーカーであるクリプトンは、そのアナログである音を徹底的に研究してきました。そういう企業だからこそ、デジタルのハイレゾ音源をアナログの音として最高の状態で再現できるのです。
どんなにデジタル化が進んだとしても、私たちの五感で感じることは、絶対にアナログにはかなわないですよね。映像の世界も、4Kから8Kへと進化していきますが、目の前の現物(アナログ)にはかないません。限りなくアナログに近づいているだけです。
あらゆる面でデジタル化が進んでいますが、アナログを卓越して制覇した人がデジタルに取り組まないと、これからのモノづくりでは人間にとっていいものがつくれないのではないでしょうか。

筆者 ハイレゾの音源をスピーカーに直結させて再現させることがポイントなんですね

浜田 アンプやDAコンバーターなどを介さずにスピーカーからダイレクトに鳴らすことがベストだと考え、「DDC デジタル・デジタル・コンバーター(変換回路)」といって、ハイレゾの音源を最後の最後まで、スピーカーからアナログの音として変換される直前まで、デジタルのデータで転送しています。この機能は、現時点ではクリプトンのKSシリーズだけです。
また、サイズも小さくし、13インチのノートパソコンを開いたときとほぼ同じ高さです。

クリプトン

筆者 小型にこだわった理由はなんですか?

浜田 やはり、「ハイレゾをできるだけ多くの日本の人たちに体験してほしい」と考えたときに、今の若い人たちはスマホが当たり前で、音楽もスマホで聴く人が多い。すると、若い人たちがスピーカーで聴くとしても、大きさは小さければ小さいほうがいいですよね。これが小型サイズにこだわった理由のひとつです。
そして実際に小さなスピーカーから出る「想像以上のいい音」を聴いたときに、私が初めてハイレゾを聴いたときと同じ驚愕の体験をしてほしいですね。

筆者 KS-11は、コーン(円錐形の振動板)がひとつだけです。普通は2つあると思うのですが、これも何か意味があるのでしょうか?

浜田 KS-11はシングルコーンにしています。これをフルレンジ・スピーカーといいますが、フルレンジ・スピーカーは、音の定義定位が一番いいと言われています。人間のボーカル帯域などは、フルレンジ・スピーカーが最高だと思います。

筆者 クリプトンのスピーカー作りの遺伝子が引き継がれているんですね?

浜田 原理原則に則ってモノづくりをしているだけです。普遍的な技術を重視し、修飾したり改変したりしない。修飾したり改変したりしたものは、人間の感性に合わなくなってしまうものです。自然界にあるものをよりよくしていくというコンセプトで開発しています。
クリプトンのスピーカーは、ありがたいことに高い評価をいただいているのですが、それらのスピーカーを優秀なスタッフが関わって作っていることが強みです。私のなかでは「人間国宝」の域に達していると思っている優秀なスタッフが、最も大事な「音決め」を行っていますので、データ解析やAIでは作ることのできない「いい音」を作れます。
その彼を中心に、デジタルアンプの神様やソフトウェア開発の天才などが加わって作っています。

筆者 最後に、浜田さんの考えるモノづくりについて、総括を兼ねて教えてください。

浜田 世の中に多少なりとも貢献できる、という前提で新たな市場を作る、という経営方針だと常に課題を発見し、解決していくという苦労と楽しみがあります。クリプトンはオーディオ部門ではスピーカーメーカーですので、最後に耳に届く「音作り」で勝負しているわけですが、いい音に固執するかどうか。似たような製品を作ることはできても、いい音を作ることにどこまで固執できるのか。音作りでは、最後の10%の部分が実はものすごく重要です。スピーカーであれば、感動していただける音かどうかが、この10%の部分にかかっています。この最後の部分で手を抜くか抜かないかです。
この思いを込めた新しい製品を、また近々発売する予定です。どうかクリプトンにご期待ください。

オールインワン・デジタルオーディオ・システムスピーカー『KS-11』について
https://ks11.jp/

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