目まぐるしく進化するAI技術。即座にプロダクトとして生み出せる理由
冨平 弊社は筑波大学初のベンチャーです。筑波大学で深層学習を最先端で研究しているメンバーで創業しました。元々は私自身高専出身ということもあり、昔からたくさんプロダクトを作ってきました。個人と、友人と一緒になど合わせて過去約20個プロダクトをリリースしてきましたが、その中の1つである「CommentScreen」というアプリケーションが、コロナ禍のオンラインムーブメントにピッタリはまり一気に成長しました。
その後、所属する研究室の深層学習を研究しているメンバーと共に起業したのが、株式会社AIdeaLabです。「AIdeaLab」というのはAIとIdeaを掛け合わせた社名で、AIの技術を使い、沢山のアイデアをかけあわせて実現していく、0から1を生み出すプロダクトを生み出したいという想いが込められています。
飯野 冨平さんは、プログラミングを小3から始められたと噂で聞きました。非常に早いですね。また先日、内閣総理大臣賞を受賞されたと伺いましたが、そのプロダクトについて教えてください。
冨平 内閣総理大臣賞をいただいたのはVRのスポーツ観戦システム、「シンクロアスリート」というものです。大会や試合に出ているスポーツ選手とリアルタイムにつながるスポーツ観戦システムを開発しました。リアルタイムで選手目線の360℃映像、VR(ヴァーチャルリアリティ)及びモーションチェア(映画のODXみたいな動く椅子)を利用して、スポーツ現場の臨場感あふれる体験を実現し、新たなスポーツ観戦システムを実現しました。
VRだけではなく動く椅子の機械工学的な工場に入って生産するというところまで踏み込んだり、VRのシステムや新しいアルゴリズムを開発したりして、実際にオリンピックに導入できそうというところまでいきました。今回コロナウイルスの影響下で、結局導入はできなかったのですが、オリンピックにも活かせるようなプロダクトを作ったというところで、内閣総理大臣賞をいただきました。
飯野 時代に合わせた開発を非常に早いスピードで展開されていて素晴らしいですね。AIの会社は受託が多く自分たちでマーケット切り開くのは難しいと感じていますが、冨平さんは元々モノづくりから入っているから自社プロダクト開発が成功していると感じていますか?
冨平 そうですね。多くの会社さんは受託をメインでやっていますが、私達がフォーカスするのは0→1のアイデアを、AIを使って形にすること。そして、それをプロダクトにしていくところです。高専のメンバーは思いついたらすぐプロダクトを作れてしまうので、そういうメンバーと一緒だからこそスピード感をもって、事業が軌道に乗り始めたのだと思います。
飯野 わずか1日で企画から開発まで形にするというのは、他の企業ではなかなかできないことです。テレビなどでも拝見しますが、高専の皆様のモノづくりは天下一品だと思います。
冨平 ありがとうございます。最近はAIの発展がすさまじく、1ヶ月単位でAIの最先端の技術が変わる世の中です。私達は研究室初のベンチャー立ち上げというところで、論文も他のAIベンチャーさんと比べてもかなり読んでいると思いますし、イノベーションが起きれば、すぐにプロダクトとして世に作り出していく、そういった0→1にフォーカスしています。
技術が発表されて、学術的に実現できることがわかればすぐにプロダクトを作る、そういうスピード感が弊社の大きな特徴だと捉えています。
起業して1年。リリースしたプロダクトの利用者が一気に増加した
飯野 御社の主力商品である「CommentScreen」、「AI議事録取れる君」が2020年に開発されていますが詳細について教えてください。
冨平 まず「CommentScreen」はオンラインイベントや授業を盛り上げることができるツールです。実はコロナウイルスが流行する前に作っておりまして、当初はオンラインのために作成したのではなく、私自身がリアルイベントで使うために作りました。
マーケットで広まり始めたのは、緊急事態宣言の直後からなので、オンライン授業が始まった4月頃からです。様々な学校の先生が「CommentScreen」を導入して授業を盛り上げるのに役立てていただき、そこから徐々に広がっていきました。参加者は、登壇者や他の参加者にコメントを共有することができたり、参加者がリアクション(絵文字)を投稿することで、登壇者はリアルタイムで反応を知ることができます。アンケート機能もあり、プレゼンのアンケートを集計する機能もついています。こんな特徴があることで、コロナ禍で一気に利用者が増えました。
一方の「AI議事録取れる君」は、AIによる自動文字起こしシステムです。マイクからの音声をAIが即座にテキスト化し、議事録作成の効率化を実現します。AIとの共同作業で議事録を圧倒的に効率化することが可能です。例えばオンラインミーティングでは複数名が話しますが、端末ごとに文字起こしをしてくれるので、話者ごとに記録することが可能です。ブラウザ上で使えるシステムで、使い方もとても簡単です。具体的にはミーティング名を入力して「記録を開始」のボタンを押すだけです。自動的にケバ取りもしてくれ、他のツールに比べてテキスト化の精度も高いです。単に文字起こしするだけではなく、「誰が・いつ・何を言ったか」を、AIが発話者毎に時系列でまとめてくれます。また共同編集の機能もあるので、複数名が参加する会議の議事録におすすめです。
飯野 文字起こしはとても時間がかかりますし、精度の高いテキスト化ができるツールが見つからないので、「AI議事録取れる君」に感銘を受けました。
アイデアとスピードで、世の中を驚かせるプロダクトを生み出し続けたい
冨平 先程もお話させていただいたとおり、0→1にフォーカスしていますので、「こんなアイデアがあるのか!」「もうこんなサービスがあるのか!」と世の中を驚かせるプロダクトを作っていきたいと思っています。想像してみてほしいのですが、Appleの新製品発表会では、多くのAppleファンが次どんなのが出るんだろう、どんなイノベーションが起きるんだろうとワクワクしていると思うんですよね。それが非常に面白いなと思っております。
我々が今後、日本の中で株式会社AIdeaLabが発表会をしますという未来が訪れたときに、次にどんなおもしろいイノベーションやプロダクトが出てくるんだろうとか、こんなAIのアイデアがあるんだ!と思っていただけるようなプロダクト作りを行っていきたいです。
AIの技術でみんながワクワクするような未来が理想です。
飯野 なるほど。国内の先端技術は世界に誇れるものもたくさんあるのに、PRが弱く認知されていないと感じています。こういった国内の技術も含めて、AIdeaLabさんのような企業が市場に大きなインパクトを与えるような先端技術の会社になっていただけると良いと感じています。
最後に冨平さんにとって企業と人との繋がりについて、「繋がる」という観点についてどのような思いで取り組まれているか教えていただけると嬉しいです。
冨平 私達のプロダクトは全てに共通することだと思うのですが、0→1を作り出して世の中をより便利にしていくという考え方をメインに、新しいプロダクトを作っています。そういった考え方から人との繋がりに関しましては、私達のサービスによって人々の生活基盤であるクオリティ・オブ・ライフを向上させたい。そんなプロダクトを今後も提供し続けていきたいですね。多くの方に私達のプロダクトを使って、より生活が便利になったと思っていただければ本望です。