今後の台日間の旅は微住がキーワード⁉︎
コロナでアジアへ行くことができなくなり、もう1年が経つ。
コロナ禍の中、微住に行くことも、そして海外から微住者を受け入れることもできない現状であるが、むしろ微住でこれまで考えてきたものが時代の潮流にフィットしてきているように思える。コロナが落ち着き海外への渡航が可能になったとしても、チケットは当分は高騰するだろうし、いろいろな条件(ワクチン接種など)も加わり、これまでのように気軽にLCCを使い、買い物やグルメを楽しんでサクッと帰ってくるというような旅は想像し難い。そんな一回一回が貴重になっていく海外旅行に対して我々は、これまで以上に特別な目的や場所を求めたり、滞在期間も変化するのではないか。以前から日本人の人気の旅行先であった台湾では、皆がこぞって行くような都市部や観光地が選択肢からなくなることはないかもしれないが、地方への旅も注目されていくだろう。
地方をより楽しむ方法として、地元のローカルな生活を体験したいと考える人は多くなるだろうし、また次いつ行けるか定かでない中、せっかく行けるんだからと、1週間、2週間と滞在日数も増え、『微住』そのものがいよいよ台湾などへの旅行の選択肢の一つになってくるかもしれない。
関係人口、二地居、繼業……、日本とパラレルな台湾の地方。
台湾では2019年が地方創生の元年と呼ばれており、さらに日本同様コロナ禍で海外旅行ができない中で、国内(地方への)旅行が増えている。また数年前からU・Iターンや、地方へ移住をする人たちも増え始め、さらには「二地居」(二拠点居住/多拠点生活)も日本同様に注目されている。今年に入り、台湾政府は日本における地域おこし協力隊にあたる「青年工作站」の制度の設置も発表した。
『二地居:地方創生未來式』の著者であり、台湾における地方創生のキーパーソンである林承毅(リン・チェンイ)さんも「国土の小さい台湾で、台湾人の習性の観点でも二拠点居住や多拠点生活は取り入れやすいライフスタイルです。さらに地方を中心とした高齢化の課題への解決にも有効的な方法です」と語る。
私も2011年からこれまで「台日系カルチャー」と題して、両国間での文化交流や発信をしてきたが、その舞台のメインは東京−台北間であった。2020年代のこれからの台日系カルチャーの舞台は「地方」だ。日本の地方各地で起きているムーブメントが隣の台湾でもパラレルに始まっている。その双方をつなぐアプローチとして、微住のカルチャーを両国で広げていきたい。
台湾でのローカルカルチャーの盛り上がりを感じる、2冊の本を紹介したい。1冊目はコロナ直前、最後の福井県での受け入れとなった「河和田微住」の参加者の一人で、現在千葉大学に留学中の蔡奕屏(サイ・イーピン)さん。彼女が2021年の1月に台湾で出版した『地方設計 LOCAL DESIGN 』が発売と同時に重版が決定する売れ行きだ。この本は台湾人目線で、日本各地でローカルデザインに携わる14組のデザインチームへのインタビューをまとめたもの。本人がこの本を出版した感想として「日本におけるデザインの領域は広く、今日本の各地方で活躍するデザイナーやその動きに台湾人も強い関心を持っている」と話す。
2冊目は、編集者の董淨瑋(ドン・チンウェイ)さんが立ち上げた一人出版社『裏路 make paths』が出版する『地味手帖』というムック本。現在Vol.04まで出版されており、最新号のテーマは『繼業』。なんと台湾でも継業に対する関心が増えているそうだ。彼女に、今後台日間の交流への期待について聞くと、「ぜひ日本の皆さんにも台湾の都会だけではなく、地方にも興味を持っていただきたいです。最新刊のテーマ『繼業』もそうですが、地方における課題や状況の似ている日本とお互いに学びや刺激のあるローカル同士の交流がこれまで以上に増えていくことを期待しています」と答えてくれた。
アフター・コロナの地方カルチャーは国境を超えていく。このスピード感はコロナで我々の旅や移動への考え方が変化したことによってさらに加速している。そして、日本人にとってそのアジアのゲートになるのがおそらく台湾だろう。
さあ、コロナが落ち着いたら、台湾微住はいかがだろうか?