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連載 | 瀬戸内の古民家で子育てはじめました

家の中から井戸出現!? 古民家リノベでのアクシデント【瀬戸内の古民家で子育てはじめましたvol.6】

小林友紀

小林友紀

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2020年9月。当時1歳と0歳の子を連れ、東京から愛媛県の今治市へ移住した。今治は妻である私の生まれ故郷。つまりUターンである。昨年、築70年を超す古民家を自宅として購入、再生し、家族4人で暮らしている。そんなわが家の日常を通して、住むほどに味わい深く、子育て世代におすすめしたい古民家の魅力をお届けしたい。

目次

2021年6月、いざ着工?

前回書いた通り、紆余曲折を経て理想の間取りが完成した。いざ、着工である!

工事の流れはこうだ。

1. ガレージを解体する
2. 納屋を解体する
3. 母屋を2階など一部解体しながらリノベーションする
4. 増築部分の納屋をリノベーションする(後工程)

え、着工…?

そう、本題のリノベーションに入る前に、庭の建物2棟(ガレージと納屋)の解体が立ちはだかっているのだ。

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元々みかんを育てる農家さんのお住まいだったわが家。ガレージには農機や軽トラ、納屋にはみかん用のキャリーケースや農機具がたくさんあった。

しかし残念ながらみかん農家を継承するわけでもなく、そのスペースを活用する術もなかったため、解体ということに。ガレージについては、車庫として利用できなくもなかった。しかし、ガレージがあることで道路から玄関が見えず、せっかくの古民家の景観が損なわれているのはもったいないと思い、結局合わせて解体することに。

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道路側からの見た目。ガレージがふさいでしまっていた。

古民家の契約は「土地」にご注意!地目、境界、大丈夫?

無事に解体業者さんによって解体いただき、次は母屋のリノベーション!

と思われたが、実はこの2棟の解体にまつわる様々な厄介ごとが発生した…。

ひとつは、ガレージ部分の地目。ガレージが建っていた土地は、実は「宅地」ではなく「農地」で、宅地部分と一体で活用するためには「農地転用」が必要だった。それについては契約時点でもちろん把握していたが、この農地転用はとても時間と費用がかかるうえ、ややこしいのだ。

そしてさらに、奥の納屋の解体が終わって発覚したのが、該当部分の土地が実はわが家の土地ではなかったというびっくり仰天な事実。わが家の売買契約は、登記簿上に記載されている公簿面積をもとにして導かれた価格で取引をしていたのだが、いざ実測をしてみたら大幅に境界が違っていたのだ。(実測については売主様による費用負担の上で、契約時に実施した)

土地や物件の売買取引なんて初めての私たち。そんなことがあるのか…! と当時は大変頭を悩ませ、もちろん議論にもなった。事前の下見ややり取りの際に、「ここまでが契約の土地です」と聞いていたことが、実際とは大きな誤差があったのだ。解体した部分の土地で畑でもやろうか~と思っていた私たちからすれば、「oh my god!!」である。

確かに売主さんからしても、昔から住んできたとて厳密な境界を把握しているとは限らない。なんとなくここまで、またはここまでと聞いていた伝聞内容が実際と違うということも大いにあるのだ。今は不動産屋さんとの間でも解決した話であり、トラブルについて詳細は触れないが、中古物件の売買においては相当気をつけるべきポイントだと思うので、別の機会に改めて紹介したいと思う。

わが家がみるみるうちに「土」に還る

なにはともあれ、母屋のリノベーションにこぎつけたわが家。

内装解体が始まった。そのスピードたるや・・・。あっけにとられているうちにどんどん丸裸になっていく。

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そして思った。

「わが家、土やん」と。

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まさに土。これは土。

そうなのだ。古民家は土の上に石を置き、石の上に柱を立て、床を一枚敷いただけのとっても簡潔明瞭な建築物なのだ。

構造物をばらしたことで、わが家は砂場状態。現状そのままで取り残されたカーテンと砂場のギャップで、脳がバグを起こしたのかと思うくらい不思議な写真になっている。そして順調に土に還っていくさなか、工務店さんから連絡をもらった。

「井戸が出ました」

まさかの井戸出現

なんということでしょう。
かつての台所横の納戸から、見事なまでに原型を保った井戸が出現したではありませんか。
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この井戸、増築された納戸部分に、丁寧に丁寧に隠されていたのだ。
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これ。中に井戸があるなんて全く思わなかった。
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かつての台所横。おそらく昔は屋外だったところ、増築する際に井戸も取り込まれたようだ。
「どうします?」と大工さん。

どうするもこうするも、この位置はちょうどランドリールームになる予定の場所。井戸があったら困る。幸い、水がなみなみ、ということはなかったがまだ完全に枯れているわけではなさそう。となると、やはり気になるのが湿気…ではなく、「水の神様」問題だ。

いや、もちろん湿気も気になる。ただ、やはり井戸というのは昔から信仰の対象でもあり、さすがにただ埋め戻すのは憚られた。決して信心深いわけではないが、やはりこれから住む新しい家。できるだけ気持ちよく暮らし始めたい。結果、お祓いをお願いすることに。

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こんなハプニングも、まさに壊してみないとわからない古民家ならでは。家に詰められた歴史を掘り返す作業だと改めて思わされた。

まさか井戸が出てくるとは思ってなかったけれど。。。

スケルトン古民家

そんなこんなで解体は進み、窓からは光が差し込み、一気に明るくなってきた。もはや単なる構造体となったわが家。

「こんなに取り払って大丈夫?」
「耐震は?」

そんな声が聞こえてきそうだが、それはまた次回。

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文・写真:小林 友紀(こばやし・ゆき)
大学卒業後、都内大手総合PR会社にて日用品メーカー・製薬会社・商業施設など幅広い広報業務の支援に従事。5年のPRキャリアを積み、2020年に愛媛県今治市にUターン。現在はフリーランスのPR・ライターとして活動中。2児の母。大学在学中には、島根県美郷町の「地域おこし協力隊」を務めた。

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